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暫く邦訳が出ていなかったクリストファー・プリーストの新作は、『夢幻諸島』と呼ばれる架空世界のガイドブックという体裁の連作短篇集。
但し、ガイドブックらしいのは各短篇の末尾に記された通貨の一文ぐらいのもので(無いものもある)、本文中では個性ある島々とその文化に幻惑される。
各短篇は緩やかに繋がっていて、共通する登場人物が幾人かいるが、必ず登場するとも限らない。
冬のシーンもあるのに、作品全体に何となく漂う南国めいた雰囲気は何処から来るのだろう?
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連作短編に共通して登場する人物が出てくるたび前回の話とズレが出てきて、「あれ、そうだったかな」と読み直してしまうので、読了するまで時間がかかる。
でもそれが楽しい。
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ファンにはおなじみドリーム・アーキペラゴの連作短編集。「限りなき夏」(国書刊行会)に収録された同シリーズの強烈な4編もいっしょにおすすめ。パラレルワールドとも云い難い謎の群島を舞台に、謎設定と謎人物たちが、謎の時間軸で交錯する。「限りなき夏」の4編ではそんな印象なかったけど、こちらの短編集を通読すると、ドリーム・アーキペラゴのメイン・テーマってひょっとしてプリーストによるアート論な気がしてきた。キャラやストーリーだけじゃなくて、その世界観と謎設定も含めてぜんぶが。ドリーム・アーキペラゴって、もうその語感だけで、何杯でもおかわりできます。
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夢幻諸島の島々をめぐるガイドブックという体裁をとった連作短篇集。時に結びつき時に矛盾するエピソード、双生児やガラスといったモチーフ、信頼できない語り手に翻弄されるうちに浮かび上がる歪な騙し絵に幻惑される。いやー、面白かった !!
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最初は掴みどころが少なく読み進めるのに苦労。途中から何度か登場する人達の人物像や各々の相関関係が見えてきたり、諸島にまつわる謎や出来事が繋がり始めたりして、驚かされたり更なる謎が浮かんだりして、俄然猛烈に面白くなった。全ての謎が最後に収束するわけではないが、だからこそ読後にフワフワ&クラクラした心地良い余韻が残り、かつ何度も読み返したくなった。
例えば今度読む時は、繰り返し登場する人物がどの島の話の時に登場するのか対応表を作り、各人物毎に登場箇所だけを一気読みしてみると、最初読んだ時とは違ったその人物に関する何かが見えて面白いかもと妄想している。
または、不明な個所も多いけど、島ごとの気候や位置、産業、脱走兵や難民の扱い、通貨等を一覧表にまとめて、「何か発見できるかなあ」とニヤニヤしながら眺めたり、それをもとに地図をでっち上げる遊びなんかも出来そう。
まあ、表を作ったからといって謎が消えることは無いけど、自分なりに整理したくなる魅力がこの小説にはある。色んな読み方楽しみ方が出来る小説だと思う。
後、繰り返し登場する人物はみんな相当クセがある。その中でもトンネル堀りアーティストのヨーや画家のバーサーストは、人騒がせな芸術家だけどどこか憎めない魅力があり、名前が出てくる度に「今度は何をやらかしたのだろう」とニヤニヤしながら先を読んだ。
夢幻諸島物の『The Adjacent』も是非是非翻訳して欲しい!
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最初はちょっと取っつきにくい。
でも多分、噛めば噛むほど味が出る、スルメのような小説。
もう一回読むか。
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「毎日新聞」2013年10月27日付朝刊で、
若島正先生が紹介しています。
「解けない謎に満ちた夢の中の島をめぐる物語」
(2013年10月28日)
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超短編連作集
想像の諸島を舞台に紡がれるさまざまな物語。最初とても退屈であるが、殺人昆虫物語から少しばかりペースアップする。しかし、それでもそれぞれの短編は玉石混交。分厚い新書という形態もあって、なかなか進まない。
確かにストレンジ・ワールドなんだが、下手に諸島ガイドブック形式をとるからか、無駄にややこしい気がする。再読を期して、今回は中座することとした。最初の数話で終わったから。
作品は以下の通り
風の島
静謐の地
ジェイム・オーブラック
雨の影
沈黙の雨
鋭い岩
大きな家・澄んだ深海
暗い家・彼女の家・夕暮れの風
すべて無料
台無しになった砂
吊された首
歓迎せよ
芳しい春
凍える風・大提督劇場
手に入れた平和
曖昧な痛み
二頭の馬
忘れじの愛
完成途中・開始途中
伝言の運び手・足の速い放浪者・無人機
行方の定まらぬ水
赤いジャングル・愛の戸口・大きな島・骨の庭
遅い潮
険しい山腹
たどった道
たどられた道
唱えよ・歌え
臭跡・痕跡
静かな波音を立てる海
死せる塔・ガラス
高い・兄弟
口笛を鳴らすもの
古い廃墟・かきまぜ棒・谺のする洞窟
大聖堂
ダークグリーン・サー・ディスカント
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一章ごとに振り回され、読了した今でも入り乱れた時間軸の隙間から見落としを笑われているような気がしてならん
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例・ブラッドベリ風の不思議な味わいの連作短編集。小さな島々の観光案内風でいて、一応主人公の様々な足取りを紹介しながらたんたんと語られていく物語。
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異世界の島々〈夢幻諸島〉のガイドブックという形をとった物語。
最初は異世界の描写が少々退屈で延々と各島の説明をしていくだけかと思ったが、読み進んでいくと何人かの芸術家や文化人が繰り返し登場し、同じ人物やエピソードが異なる角度から語られていたりして面白い。幻想的な世界に思いを馳せながらゆったりと一、二編ずつ読んだ方がよかったかも。
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プリーストの「奇術師」を以前に読んだときには,その反則気味の種明かしに「そりゃないぜ」と思ったものだが,本書には参りました.負けました.
架空の「夢幻諸島」の島々のガイドブック,ということだが,島の紹介もあれば,単にその島にまつわる誰かの出来事を綴った完全な小説もあり,しかも謎解き風のものもあれば,幻想小説もあり.
また,本書にクラクラするのは,何人かの人物は超有名人という設定で,幾つかの島の物語に繰返し出てきたり.全短編を通して読めば,そういった人達の姿が徐々に浮かび上がってきたり.
もう一度読み返せば,また別の面が浮き上がってきそうだ.プリースト,他のも読んでみようかな.
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夢幻諸島-ドリーム・アーキペラゴ-何とまあ魅惑的な名前であることよ。その名の通り夢まぼろしのような島々をめぐるお話。
ガイドブックの形を借りて語られる章と、物語風の章とが混在して、独特の雰囲気をかもし出している。複数の人物が何度も登場するけれど、まとまったお話に行き着くわけではない。その意味で、翻訳の古沢さんが言うように、これは長編ではないだろう。でも、一つ一つの章はかなり断片的なので、連作短篇とも言いにくい。まったくユニークだ。
プリーストといえば、「語り」すなわち「騙り」。最初に読んだときより二度目三度目の方が格段に面白い。どこから読んでもいいつくりなので、気が向いたら適当にパラパラ読み返す楽しみがある。初読では、インパクトのあるスライム発見譚がお気に入り。
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南北の大陸に挟まれたアーキペラゴ地帯。磁気による歪みのために正確な地図はつくれず、いったいいくつの島があるかも不明だ。島々は平和不可侵条約を締結しているものの、北の大陸で戦争をくりひろげる南大陸国家の戦略的利害のために、多くの島々には軍事基地がおかれ、脱走兵がやってきては連れ戻され、条約は有名無実化している。
まずはこの世界像にぞくぞくとする。こんな島嶼国がどこかに実在しているのをたしかに知っているという気がする。
このアーキペラゴには幾人かの伝説的な人物たちがいる。無類の美男で女好きの画家バーサースト、社会改革の提唱者カウラー、トンネル堀りアーティストのジョーデン・ヨー、自ら伝説化した故郷の島から一生出なかった作家チェスター・カムストン、謎の死を遂げたパフォーマンスアーティストのコミス。
島々のトラベルガイドという体裁をとった物語を通して、これらの人物たちの姿は意外な線でつながり、より明確な像を結ぼうとするが、まるで正確な地図作成を困難にする磁気の歪みのように、さまざまな人々が語る彼らの像はところどころに矛盾や歪みをはらんでいる。
ひとつひとつはささやかな<短編未満>のような作品集だが、心の中に鮮やかなイメージが残るような印象的シーンがある。たとえば、目の前に見えているのに存在しない島に近づこうとする「ミークァ/トレム」の主人公が見つめる、永遠に囚われて飛び続ける無人機。不気味な塔の放つ恐怖におびえながら塔に自ら囚われる「シーヴル」の青年。「リーヴァー」で観測されるという、頭上に停止したまま横滑りしていく飛行機の姿。
「幻想小説」にしてはなんだかリアルな、奇妙に歪んだ魅力のある短篇集だ。
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なかなか訳者あとがき定番の内容紹介に入ろうとしないのは、
作者の意向を汲んで、
読者になるべく目かくしした状態で本書を発見してもらうために、
訳者もくわしい内容紹介をされないそうだ。
あとがき定番の内容紹介がくわしいあらすじ紹介ならば、
言わずもがなのことだと思う。
同じく訳者の方は、イアン・マクドナルドの「火星夜想曲」
みたいな感じとおっしゃっているが、
私にはコードウェイナー・スミスの「人類補完機構シリーズ」風味も少し感じられた。
2012 年 英国 SF 協会賞長編部門受賞作品。
2012 年 ジョン・W・キャンベル記念賞受賞作品。