紙の本
現在もっとも信頼できる経済ジャーナリストのひとり
2007/06/17 10:06
9人中、9人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:喜八 - この投稿者のレビュー一覧を見る
『世界金融経済の「支配者」—その七つの謎』著者の東谷暁さんは「現在もっとも信頼できる経済ジャーナリストのひとり」だとつねづね私(喜八)は思っています。
『エコノミストは信用できるか』(2003)では、日本の経済学者・エコノミストの多くが状況次第で自分の意見をコロコロ変える節操のない人たちであることを実証。『日本経済新聞は信用できるか』(2004)では、日本で唯一の経済専門全国紙が、やはり状況次第で意見を180度変える、信頼のおけないメディアであることを実証。『民営化という虚妄』(2005)では、いわゆる「郵政民営化」推進派の論拠が、いかにあやふやなものであるかを論破してきました。
と言うと、東谷暁さんは「左寄り」であると勘違いされる方もいらっしゃるかもしれませんね。けれども、違います。東谷暁さんはれっきとした「右派」論客です。西部邁氏が主催する雑誌『表現者』の編集委員をつとめ、小林よしのり氏の雑誌『わしズム』にたびたび登場し、産経新聞社発行の雑誌『正論』には連載コラムを書いています。
ただし、私の見るところでは、東谷暁さんは「いまどきの主流右派」とは一線を画しています。あえて言えば東谷さんは「正統右派」なのです。筋の通った保守の立場から、日和見エコノミスト・日和見経済新聞・日和見「民営化」論者を斬りまくってきた「サムライ(渡世人?)」が東谷暁さんなのです。
「いまどきの主流右派」と私が呼ぶのは、「とにかく日本はアメリカに従っていればいい」だけが唯一のドグマ(教義)である「対米隷従保守」の人たちです。本来なら彼ら彼女らを「主流」などとは呼びたくもないのですが、とにかく数だけは矢鱈《やたら》に多いので仮に「主流」としておきます。
この「対米隷従保守派」、小林よしのり氏の用語を借りていえば「ポチ保守」の方々は「とにかく日本はアメリカに従っていればいい」しか頭にありません。したがって、彼ら彼女らは日本の経済システムをアメリカ型に改変するのにも諸手を上げて賛成しています。いわゆる「新自由主義的」「市場原理主義的」なアメリカ式経済思想に基づく日本大改造に、つゆほどの疑いも抱きません。
「正統右派」である東谷暁さんは違います。アメリカ型「強きをたすけ弱きをくじく」弱肉強食経済システムを無批判・無節操に導入することは日本社会を根底から荒廃させるとして、真っ向から批判を繰り広げてきました。つまり東谷さんはアメリカに対して明確に「ノー」と言える保守論客なのです。このような「保守派」はいまの日本では、それほど多くはありません。
『世界金融経済の「支配者」—その七つの謎』には東谷暁さんの経済記事が「プロローグ」「エピローグ」をふくめて9本収録されています。ひとつひとつは独立した記事ですが、緩やかに結合された「連作集」と見なすことができるでしょう。
ここでは詳しい内容を解説する余裕がありません(と言うより、私にその能力がありません)。世界経済の動きと今後日本人が進むべき道について興味のある方は、ぜひとも『世界金融経済の「支配者」—その七つの謎』を手にとってみてください。さまざまな思考のためのヒントが「これでもか!」とばかりに盛り込まれた、素晴らしいコスト・パフォーマンスの1冊であることを保証します。
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よくまとまっている本。
第三章の中央銀行に関するくだりは良くまとまっていると思う。成立に関する歴史的経緯を織り込みつつ簡潔に分かりやすくまとめた点は評価できる。もちろん新書なのでけちをつければキリがないが、導入としてはいいのではないか?筆者が挙げている「証券化」という言葉が、現在の世界を覆う金融資本主義が実体経済とかけ離れたものであるということを象徴している。REITとか特にそうだろう。今また二酸化炭素の「排出権」までも取引されているが、環境すらも「証券化」の対象にしてしまって果たして温暖化対策として有効に機能するのかどうかはなはだ疑問である。
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[ 内容 ]
世界金融経済の「支配者」は誰か?
ユダヤ人、フリーメーソンなどの秘密結社、ロスチャイルド家からロックフェラー家まで、多くの説が「陰謀」と共に語られてきた。
しかし現実はそんなに単純ではなく、各国の政治と経済の利害が複雑に絡み合っている。謎を解く鍵は「証券化(セキュリタイゼーション)」にある。
あらゆる資産(債務や不動産、さらには事業そのもの)が証券化されて、リアルな世界から切り離され、取引されているのが、現在の世界経済だ。
その象徴がファンドマネーやM&Aの隆盛だ。
金融が経済を支配しているこの世界のカラクリを、歴史を踏まえて解いていくことで、アメリカ一極支配の行方、そして日本経済の未来が見えてくる。
[ 目次 ]
プロローグ いま、世界経済では何が起こっているのか
第1章 M&Aは、世界経済を効率的に改造するか
第2章 世界金融を支配しているのは、本当にユダヤ人か
第3章 中央銀行という「世にも不思議な物語」
第4章 グリーンスパン前FRB議長は、「神さま」だったのか
第5章 アングロ・サクソン型経済は無敵なのか
第6章 中国経済は、アングロ・サクソン経済を圧倒するか
第7章 基軸通貨ドルが下落するのは、いつか
エピローグ 「運命の日」以後の日本経済
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[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
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M&A
•企業=証券化された資産として捉えられるようになる
•産業再編?
•三角合併
•LBO(レバレッジドバイアウト)=買収対象としている企業の資産とキャッシュフローを担保に資金を調達する買収方法
•GE ジャックウェルチの革命?
•もの言う株主
•MBO(マネジメントバイアウト)=経営陣が株式を買い付けて非公開企業にすること
•MBI(マネジメントバイイン)=ファンド自身が企業をのっとってしまうこと
中央銀行
•中央銀行の多くが民間企業
•ほとんどの中央銀行は民間が始め、公的な役割が大きくなるにつれ国有化が進んだ
•「金融危機に直面したときに、いつもピアモント・モルガンがいるとは限らない」
•IMF=為替相場の安定を図ることを主な目的に設立された機関
•アジア危機の遠因はIMF
グリーンスパン前FRB議長
•FRB=アメリカ連邦準備制度理事会
•ニューエコノミー論(=ITの発達で経済の仕組みが効率的になり、労働性が高まった)はGDPが伸びて雇用が伸びなかっただけで誤り
•アメリカのバブルと日本のバブルの崩壊後の回復の違いは政府対応ではなく、イラク戦争と証券化による
中国経済
•繁栄論も崩壊論も政治的反映
•繁栄論=アメリカ国防省
•崩壊論=日本における保守系論壇
•中国は世界の工場地、自国の強み無し
•情報統制により共産党政権は2020年までは継続
•華人ネットワーク
•BRICsなどの標語は金融会社が投資を煽るために考えた
•インドは世界のソフトウェアハウス
•チンディアはインフラ整備が悪い
•ソフトウェア産業は効率が良いだけに雇用が伸びにくい
•資源の制約
フリードマン
•マネタリズム=経済政策を金融に絞る
•変動為替相場制は開発途上国に不適
•変動為替制度擁護論=為替レートの固定、資本の国家間移動、金融政策の独立性、このすべてを同時に満たすことは出来ない
•アメリカが推進する世界金融経済はアメリカの政治力によって支えられている。
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巷にあふれる陰謀論を否定し、世界金融経済の「支配者」と呼ばれるものの正体に対して丹念に考察を重ねた一冊。
血沸き肉躍る「軍記物」ではないけど、「実用書」としてなら楽しめる。
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現在の金融資本経済を考えた場合、様々な角度から、様々な方が語っていることを自分自身に吸収した上で、更には事実としての現状を把握し、自分なりに咀嚼し、日ごろの行動に生かしていく。これが大切なのですよね!! 本としてはうなずける部分とそうでない部分がかなり混ざっていましたね(笑)
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世界金融経済の支配者というタイトルだが、陰謀論ではありません。
ごくまっとうな金融経済の歴史やその力関係を書いた本です。
私は金融経済のことは全く分かりませんので!正しいことが書いてあるなどと言う気はありませんが、陰謀論よりは遙かに役に立つ本ですよ。
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陰謀論について、そんな単純な話ではないという内容が書かれていたけど、おれが求めていたのは、陰謀論についてもっと詳しく書かれている内容の本だった。
金融に関する知識はまるでないので、多少わからない内容や頭にすんなり入ってこない内容もあった。
あんま内容も頭に残っていないので、もう少し金融に関する本を読んでみようと思う。