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オフィスの端にある二人きりの小部屋、地下広場の奥にある靴の修理屋、午後二時過ぎの学食、パソコンの中、スイスにある友達の友達の借り家。
それぞれの場所での出会いと別れ、人との関わりを描いた短編集。
なんでもない日常なのに、ちゃんと物語がある。
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「お別れ」と呼ぶには大げさで、でも「お別れ」としか呼べない六つの瞬間を、穏やかな「音」と共に掬い取った短編集。
短編集だけど表題作があるわけではなくて、収録されている六編全体のタイトルとしてこの名が冠されているところがすごく綺麗だと思う。
全ての人の日常の中に、こうした些細な「お別れ」が息を潜めていて、私たちをそこで待っているのだとして、
それなら今日、僕は、何とお別れしたのだろう?
その代りに、何かに出会ったのだろうか?
「お別れ」と「出会い」は等価ではない。
「お別れ」が次の「出会い」へと、私たちを導いてくれるのではない。
「お別れ」は、ただの「お別れ」。
ただそこにあるだけで、それ以上でもそれ以下でもない。
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透明感のない、どっしりとした感じな文章。文に色をつけるのであれば、グレーがはいった薄い水色といったところ。透明感はないけれど、丁寧に書かれている感じがした。
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ちゃんと「知り合って」もいない内に、「お別れ」の時が来てしまう事がある。
「お別れ」と言うよりも「出逢う事」を断ち切られた、若しくは断ち切った音がする、そんな話が多かった。
その人への興味を妄想の中だけに留めておけば、「お別れ」の音は聴こえない。
現実にその誰かに干渉した時に、その音が聴こえてしまうのだ。
そんな瞬間は、誰の人生にもあるだろう。
その時にフジクラさんみたいに(彼女が本心から言ったのかは分からないけれども)「もっと喋っておけばよかった」と、思ったり思わなかったりしながら、日々は続いていく。
しかし気になった人との、お互いを知らないままの別れは、いつまでも纏わりついて離れない。
どの話もさらりと読めるけれど、印象ほど読後はそんなに軽くはない。
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すくい取って文字に起こせるほどはっきりした感情ではなく、薄く淡く重なり合う捉えどころのない感覚を、あえて書こうとする試みを感じる一作だった。共感できるところがたくさんあって、作者の鋭さ、言葉を選ぶセンスの良さにしびれた。
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なんてことない日常も、丁寧に書けば物語になる、という印象の短篇集。
働く人たちの些細な出来事を、これでもかと詳細に書く。
言葉の選び方や緻密な文章は一定の評価を受けるんだろうけど、物語としてワクワクするのもを感じないから、たぶんこういうタイプの話は自分は好きではないんだな、と感じる。
最も起伏が無く、一番丁寧にオフィスの風景が描かれている『新しいビルディング』が裏に含むものが濃い気がした。
あまりやる気のないOLを主人公として、ふたりきり個室で働いている先輩が産休に入るまでの日々を描いている。くどいのだが、微妙に揺れ動く心の感覚が伝わってくる。
一文字ずつ物語を読む気力がないときに手を出すとまったく楽しめないんだろうな、と思った。
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本日読了。
僅かな感情の揺れ、例えば、ささやかな悪意、密やかな異心、小さな憂鬱が、丁寧に繊細に描かれている。
それらは、繰り返される日常のほんのひとかけら『音』に表象される。
ビル建設現場の金属、メールの着信音、靴修理の機械音…。
他作を読んで(自分にはさっぱり分からないという驚きを含め)女性の心理描写が秀逸だなーと感じていたけれど、この短編集では二人の男性主人公が登場する。
どちらも「うんうん」と思わず頷きたくなるほど、生々しくその内面が描かれている。
そういう意味では、ちょっと怖くもある。
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【芥川賞作家にして最年少川端賞作家が描く奇蹟】美しかったり、謎めいていたりする、隣の人びと。すれ違ってゆく、忘れられない人たち。日常を切り取って紡ぎだした、奇跡の六篇。
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短編6つ。
文庫の裏表紙を引用すると、
日常の中ですれ違っていく、忘れられない人たち。そのすれ違いの中で、かすかに揺らぐ感情を掬いあげる…とある。
掬いあげかたがこれまで自分が読んできた本と違ってきたのか、新鮮だった。
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何か不思議な味わいのある短編集だった。
読み終えたあと、「お別れの音」というこの小説全体のタイトルについて考えた。
別れと一口に言っても、関係性も長さも別れ方も理由もそれぞれで、本当に浅いところまで視野を広げてしまうと、知り合って親しくならないうちに別れてしまう(二度と会わなくなってしまう)関係もたくさんある。
何となく静かに別れの匂いが漂ってくることもあれば、自分の意思で別れを決めることもある。
この小説は劇的に愛し合った二人が劇的に別れた、みたいなお話はひとつもなくて、どちらかと言えば意識しなければただ通りすぎて終わってしまうような関係性のその別れがほとんどで、だからこそ味わい深いのだと思う。
はっきりと聞こえる何かの音、誰かの声、そして想像の中の音。様々なところに、「お別れの音」が潜んでいる。
「お上手」と「役立たず」がとくに印象に残った。
少しの情報だとか一方的な好意をもとに「あの人はきっとこういう人だろう」とか「きっとこんなことを思っているだろう」と勝手に思い込んでしまうことって実は日常にたくさんある。勝手に望んでしまうことがある。意識してないだけで。
それが違ったときはただひとつの現実が明るみになっただけの話。想像と違った相手が悪いわけじゃない。
自分の欲求を恨みに変えてはいけない。
そんなことを、改めて思った。
(そういう恐ろしいお話はないけどね!)
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「別れ」と聞いて真っ先に思い浮かぶような親しい人との悲しい別れではなく、人柄や名前すらも知らないような人との出会いとも言えないような出会いや別れを通して芽生えた心の引っ掛かりのようなものに光を当てた作品集。よく知らない人だからこそ、その人の性格や思い出などと結びつくことができずになまの感情が宙に浮いたままになり、時として後まで強く残ったりするのだろう。すぐ納得して消化できてしまうことほど印象にも残らないものだ。こういうちょっとした引っ掛かりのある出来事だって立派に人生を豊かにすることに繋がっているんだなと思った。2つ目の『お上手』が特によかった。
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全体的に、結末がはっきりしないお話ばかりで自分は苦手だった。日常で会うその人がどんな人なのかわからないがその人がどんな人か妄想する、みたいなお話ばかり。
唯一「役立たず」のお話がミステリーチックで結末もはっきりしていて面白かった。
〇新しいビルディング
よく分からなかった
〇お上手
地下街の靴の修理屋に出会うお話
これもあまり面白くなかった
〇うちの娘
大学の食堂でいつもわかめうどんばかり頼む女学生が気になるお話。この短編集は結局、登場人物がどうゆう人だったのか解決しない、ある意味人生ですれ違うちょっと気になる人達との日常のようなお話
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「その子のことよく知らなかったんでしょ」と言われるとどの主人公も言葉もないだろう。だけど、別れという以前にすれ違いなんだけど、同じようでいて昨日とは確かに違う今日が過ぎ去っていく、そんな小編たちだった。
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なんなん、このチクチクチクチクした小さい小さい棘みたいな違和感は。
嫌いなような好きなような嫌いなような?
☆新しいビルディング
☆お上手
☆ニカウさんの近況
☆役立たず
☆ファビアンの家の思い出
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なんとも掴みどころのないような別れの短編集。
別れとは言っても、親友、恋人、家族のような存在ではなく、
意識しなければ通り過ぎてしまうような相手。
偶然知り合った人。
劇的なことは起こらずに、出会い、気がつけば別れていく。
『お上手』と『ニカウさんの近況』が特に雰囲気が良くて好きだった。