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日本の国際政治京都学派の中西寛氏の2003年現在唯一の単行本。高坂の弟子で一般的には、リアリストと知られる彼だが、本書を読めば分かるように、それはモーゲンソーのような古典的リアリストでも、ウォルツのような守勢的ネオ・リアリストでも、ミアシャイマーのような攻勢的ネオ・リアリストでもない。言うなれば、リベラル・リアリストか、現実主義的リベラリストという印象である。その意味で言えば、国際政治におけるリアリストの退行が、高坂氏と中西氏の立場の違いから読取れる。個人的には、中西氏の立場は妥当だと思うが、それ以下でも以上でもない。入門の新書で多くを求める事は、確かに不可能だが・・・。
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当世的で実際的な国際政治ではなく、国際政治という概念の成立や変遷について述べた本。歴史を読み解くつもりで読めば面白かった。
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人類のおかれた状況が混迷の度を深め、希望と苦悩が錯綜している今日ほど、断片的な情報ではなく、深い考察が求められている時代はない。本書はまず、国際政治の起源を近代ヨーロッパにたずね、現代までの軌跡を追うことで、この基本的な性質を明らかにする。その上で安全保障、政治経済、価値意識という三つの角度から、差し迫る課題に人間が人間を統治する営みとしての政治がどう答えられるのか、的確な視座を提示する。
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内容はすごくよかった、
よすぎて、まとめきれないくらい。。
時間がじっくりある時にでも書こう。
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故・高坂正堯門下であり、現・京都大学大学院法学研究科教授(国際政治)の中西寛の著作である。
同じ中公新書に高坂の『国際政治』という古典的名作があるが、論理体系としての国際政治学を考えるにあたっては本書の方が断然優れているだろう。
・主権国家体制 system of sovereign states
・国際共同体 international community
・世界市民主義 cosmopolitanism
国際政治におけるトリレンマが冒頭に示され、その後17世紀のウェストファリア以来の国際政治の来歴が簡明に示されている。
そして、米ソの宇宙開発競争の結果、大気圏外に人間を送ることができるようになった時点で、現時点で人類が地球の地表に居住し続けなければならないという広い認識をもたらすことになった。これが仮想地球市民である。
コスモポリタニズムが広まり世界中に平和思想が行き渡れば問題が解決するなどという安直な考えは、本書においてはっきりと否定されている。
つまり現行の国際連合は、主権国家内の治安維持は各国の行政府に委任しており、それに介入することは明らかな人権侵害や治安の騒擾が行われている時ですら極めて慎重な手続きによって平和維持活動が行われることになる。
安全保障分野に限らず政治・経済分野の活動においても、各国政府がその領域内に住まう国民に果たす働きの重さは割合として減るどころか増えている。もちろん、環境問題などについてはNGO等の市民レベルでの活動が大規模化しそれが主権国家、国際社会に少なからぬ影響を与えるという点も重要ではあるが、やはり主権国家の意見・利害を調整する国連や国際会議の場においてその趨勢が決定されるということにはかわりがない。
グローバリゼーションが地球全体を覆っている現在だからこそ、地球大での普遍性の獲得を目指す価値観の創出よりは分裂性を伴う多文化主義や地域主義が主張され、自分の属する集団・地域の利益確保を目指す動きがある。
著者が末尾において「慎重な普遍主義」が豊饒な世界市民主義には欠くことができないという主張は、玉虫色で教科書的な表現ではあるが、真に重要な点なのである。現状を急進的に改革したり、他国の主権に積極的な介入をすることで画一的な価値観(それがたとえ「平和主義」であろうと)を強制するのではない。多様な価値観を受け止めながらも、様々なレベルでのディレンマを減らしつつ合意形成を目指す姿勢こそ現実主義的な人間の住む国際社会なのである。
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国際政治について、整理した本。財務官玉ちゃんお勧めの本。
政治理論というより、歴史的な側面が強いかな。
まぁ読みにくくは無いけど、響かなかった。でも、こういう文章をモノにして使いまわせるようにならないとなぁ。
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[ 内容 ]
人類のおかれた状況が混迷の度を深め、希望と苦悩が錯綜している今日ほど、断片的な情報ではなく、深い考察が求められている時代はない。
本書はまず、国際政治の起源を近代ヨーロッパにたずね、現代までの軌跡を追うことで、この基本的な性質を明らかにする。
その上で安全保障、政治経済、価値意識という三つの角度から、差し迫る課題に人間が人間を統治する営みとしての政治がどう答えられるのか、的確な視座を提示する。
[ 目次 ]
序章 国際政治への問い
第1章 国際政治の来歴
第2章 安全保障の位相
第3章 政治経済の位相
第4章 価値意識の位相
結章 二十一世紀の国際政治と人間
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
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かの、高坂正堯の弟子の中でも最も学者としては名を馳せているであろう中西寛による、国際政治観に関する一冊であるから、いったい、どれほど楽しませてくれるのだろうかと期待していたのだが、最後のオチで一気にガックリさせられた。
途中までは非常にコンパクトに、そして多くの文献を引用して、国際政治で話題になるトピックをまとめてある。
彼は安全保障の位相、政治経済の位相、価値意識の位相という三つの位相に集約してそれらを歴史的に語るということを為していて、ちょっとしたまとめにはこれ以上ないくらいの本である。
だがその一方で、それを発展させて「地球社会」について語る段になると途端に怪しくなってくる。
全ての位相において問題が世界規模にまで達している現状に対して、それを地球社会だとかと呼んでいるようであるが、いったいそれが何なのかも、本当に存在しているのかも、これからもずっとそうであるのかも、何もわからない。無根拠に、歴史を一直線に捉えているようで、これを彼の歴史観として受け容れることに別に文句はないが、価値意識のところのように「かもしれない」連発をされたりなどすると、説得性に厚いとは到底思えない。
彼はあとがきのところで、高坂の『国際政治』を役立てたように書いてあるが、僕にはそうは思えない。
高坂は現実主義者である。そして中西は、未来の地球社会として主権国家体制に基づく戦争の残った世界を夢想するところから、自身も同じスタンスであるように表現をするが、それは高坂のいうそれとは異なっているように思えるからだ。
高坂は自身を現実主義者と表現する時には、理想主義者に対してその手段や方策についてまで言及している点を重視してそう称していたように思う。別に自身が現状ある秩序を信じ続けていることが所以ではない。それは「リアリスト」という単語が、理論と共にきちんと定義づけられるようになった今の時代からすれば誤用なのかもしれないが、決して今でもそういう姿勢は重視されるべきだと思うし、中西の本書に最も欠けているのはこの視点であるように思う。
といろいろ書いたが、立派な一冊であることは事実。
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著者は故高坂正堯氏の弟子。
国際政治について考えるための枠組を提供してくれる良書。巻末の参考文献も併せて読めば、きっと自分なりの思考枠組ができるでしょう。高坂氏の「国際政治」(中公新書)と併せてお薦めします。
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【「埋め込まれた自由主義」by ジョン・ラギー】
ブレトンウッズ体制=この体制は国内における「組織された資本主義」を前提とし、各国政府が通貨の安定に責任を負った上で多角的な自由貿易を実現することを目指すものであった。それはまず、通貨価値を相互に安定させ、為替変動にともなうリスクを軽減し、次に国際貿易についても相互的な基本ルールを設定することで、国際分業を増進し、供給力に見合った需要を生み出すことを意図していた。固定相場制の維持のための国際通貨基金(IMF)、国際流動性の供給のための国際復興開発銀行(IBRD)、やや遅れて多角的自由貿易体制の実現のために関税と貿易に関する一般協定(GATT)が設立ないし合意された。p167
【開発について】
開発とは単に近代技術や資本、資源、教育ある労働力といった経済要素を移植すれば実現するというものではない。それは最終的には、ある社会が自らの伝統的構造と世界経済という与えられた条件をいかに主体的に釣合せ、融合させ、意志と能力をもつかにかかっている。言い換えれば、国民経済の一体性を保ちつつ世界市場へも統合し、さらには伝統的価値をある範囲で維持しながら近代的な変革にともなう過去の破壊を行うという矛盾した要請に応える必要がある。p175
【マルセル・モース- 開発について】
「与えるということはかれの優越性を示すことであり、また、かれがより偉大で、より高くあり、主人であるということを示すことである」p192
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読むのに凄く時間がかかった。今の自分にはかなり難しかったし、理解出来なかった部分もあった。高校の政経の知識は最低限必要だと思う。てか政経で習った事がかなり出てきてにやけながら読んだ。古代ギリシャから近代ヨーロッパまでを分析して現代の国際政治を紐解く。図書館で借りたけど手元に置いておきたい良書。
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国際政治とは誰が指導するのか?
大国?(米英仏)どれも略奪の歴史である。国際間で自国を守る。経済、国防、軍事力でアピールする。テロによる危険性あり。対象が、世界規模となると、自己確立、認識が必要、自分のアイデンテティは明確にすることが肝要。
安全保障とは? 軍事力&恐怖で外交。国防⇒人の戦いではなく、兵器による大量虐殺
シュペングラー(西洋の没落)vsトインビー(世界
ジュールベルヌ 80日間世界一周、メルカトル地図、メートル法、⇒パリ万博
子午線、グリニッジ、⇒イギリス
宇宙時代、国連マークと弾道ミサイル(似ている)
ソ連、ガガーリン、ボストーク1号
NASA、アポロ計画⇒宇宙船地球号
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主権国家体制、国際共同体、世界市民主義。
国際政治におけるトリレンマの中で世界平和の為に必要なものは“寛容”の精神。
うーん、神道の精神なんかは地球大の普遍性を持ちえると思えるが。。
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国際政治の考え方を学べる本である。とても密度が高い。構成は歴史・軍事・経済・価値の構成で、高坂正堯を踏襲している。だが、冷戦期にかかれ、核兵器廃絶の理論などにくわしい高坂の『国際政治』とはことなり、著者の記述は、スプートニクショックにはじまる宇宙時代、軍事的緊張から開発されたインターネットが生み出したバーチャル空間と政治の関係、9.11以後のテロの問題もふくんでいる。視点としては、主権国家・国際政治・世界市民の3つの要素の「せめぎあい」を論じていて、とても興味ぶかいものだ。国際政治で、NGOがいくら発言権をつよめても、国民から正当に委託された強制力をもつ主権国家の役割はきえない。むしろ、主権国家をうまく強めていくことが、問題の現実的な解決に近い。人権などの世界市民的「普遍」の押しつけは、結局、現実にには権力闘争になるから、「慎重な普遍主義」をとり、原理は放棄せずによく判断し、「愛する」より「がまんする」寛容により、努力を重ねるという「冴えない美徳」の価値をみとめている。内戦がいかに終息がむずかしいか、また、レーガンとゴルバチョフが互いが大嫌いだったのに、実務家どうしが長く話していくうちにお互いに「人間的理解」を深め、冷戦終結の端緒となった点などは、とても面白かった。全体に、政治を科学的に分析するのではなく、政治を人間の営みとする古典的政治学の観点から書かれている。人間的な「知恵」にであえる良書である。
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ゼミで扱う本の2冊目。
政治=「人間が行う営み」とした場合、国際政治はどのように分析できるのかと考えた一冊。
著者の師である高坂氏は国際政治=権力闘争の場と考えていた事をふまえると、「人間」を枠組みに使ったのは興味深い。
国際政治を三つの切り口ー安全保障、政治経済、価値意識
といった切り口で把握した。それらはそれぞれ、恐怖、自由、文化/文明という人間らしさに著者は還元した。
「人間」という視点から国際政治を考える事には疑問だけれど、読み応えがある一冊。
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「新書として出版するにはもったいない」と先生に言わせるほど、内容が豊富な一冊です。
やや難解な所もありますが、個人的には読めば読むほど味がでる一冊です。