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とうとう終わってしまった…物語の終焉がそのまま作者の逝去を連想させる気がしてならない。
ビアバー「香菜里屋」に集う客たちの謎を解き明かしてきたマスター工藤であるが、最終巻では彼の過去、秘密、謎などが明かされることとなる。最終話「香菜里屋を知っていますか」では北森氏の作品群に登場するキャラクター総出で工藤を想うような構成となっており、ファンには嬉しい展開なのだろう。
工藤と対を成す香月の存在を大きく感じた、結婚するとは思わなかったが…
工藤と香月、ものすご既視感を感じていたものがやっと思い出された。
「しろくまカフェ」における しろくま と グリズリー である。
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ビアバーシリーズ最終巻。登場人物たちの背負っているものが謎解きとともに明らかにされていく本シリーズの最後は謎解き役工藤の謎が明らかになる。
前作で終わりも良かったと思うのだが、著者のサービス精神だったのだろうと思う。それにしても、自らの死を予感させるような最後はとてっも悲しいものを感じる。急死だったとされているが、感じるものがあったのだろうか。
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ビアバー「香菜里屋」シリーズの完結編。これで終わってしまうのがもったいない作品です。しかも今回の作品を読んで著者である北森鴻が故人であることを知りさらにショック。お気に入りの作家になるかも思っていたのに新作がもう読めないなんて・・・。残念です。
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いろいろな意味でお別れが切ない短編集。
香菜里屋とは関係ない、飛鳥時代の歴史伝奇小説が収録されています。
これだけでは出版できる長さではないので、まとめて収録したのでしょうね。
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〇 概要
「香菜里屋」という名のビアバーは,客から持ち込まれる謎をマスターの工藤によって解き明かされる不思議な店。「香菜里屋を知っていますか」は,シリーズ4作目の短編集。この短編集の最後の作品では,「香菜里屋」が店を閉じてしまう。いったい,何があったのか…。未完となった「双獣記」も収録されている。
〇 総合評価
ビアバー「香菜里屋」を舞台としたシリーズの第4弾にして最後の短編集。香菜里屋の常連客との別れの作品が続き,香菜里屋が閉店する話があって,その後日談として,香菜里屋と工藤の行方を捜す男が登場する話が最後に描かれる。個々の作品のミステリとしてのデキはそこまで高くない。これまで登場した常連客達が,結婚や退職で引っ越しをし,香菜里屋に来れなくなるという話が続く。終幕の風景では,シリーズ最初の作品,「花の下にて花しなむ」に登場した片岡草魚の幽霊を登場させるなど,ミステリとしてではなく,世にも奇妙な物語系の作品として印象に残る終わり方をしている。後日談になる「香菜里屋を知っていますか」は,北森鴻作品のオールスターといった形になっており,雅蘭堂(孔雀狂想曲の舞台となる骨董店),冬孤堂の宇佐見陶子(狐罠などのヒロイン),蓮杖那智(蓮丈那智フィールドファイルの主人公)といった面々が登場する。さすが,サービス精神旺盛な北森鴻といった印象だ。ミステリの短編集としてはそこまで高い評価は付けられないが,このシリーズが好きなら満足できる仕上がり。ラストで,工藤は香菜という女性のもとに向かってしまうが,香菜という女性は一切登場しない。もし,北森鴻が生きていれば,香菜と一緒に新たな香菜里屋を開く工藤の姿がどこかの作品で見れたかもしれないと思うと残念でならない。おまけの双獣記は未完だし,ミステリでもなく,ファンタジー的な作品。まぁ,おまけだし,この程度か。途中で終わってしまうので続きが気になってしまわないではないが…。トータルでは★3かな。
〇 ラストマティーニ
BAR谷川というBARの老バーテンダー,谷川真介。プロフェッショナルバー香月のバーテンダー香月圭吾は,BAR谷川の古き良き時代のマティーニを愛し,この店の常連となっていた。しかし,ある日,谷川老人は常温のジンを使った水っぽいマティーニを出してしまう。その後,ほどなくしてBAR谷川は店をたたんでしまう。いったいなぜ,谷川老人は,このようなマティーニを香月に飲ませたのか。真相は,たった一杯の失敗作を作ったために,己のプライドのために店を閉めるという伝説を残しておきたかったから,わざと香月に水っぽいマティーニを飲ませたというものだった。なおこの作品で香月圭吾と笹口ひずるが結婚する。
〇 プレジール
香菜里屋の常連,飯島七緒は結婚して山口県に引っ越す。飲み仲間で,介護をしていた祖母が亡くなったばかりの友人峰岸明美を誘って香菜里屋で楽しい夜を過ごしていた。すると,急に気分が悪くなったと言って帰ってしまう。明美は,プロフェッショナルバー香月でも,マナーの悪い客が出したおでんのにおいをかいで嘔吐してしまったという。明美に何があったのか。真相は���明美の母が要介護の祖母に必要がないこんにゃくを食べさせ,祖母の死期を早めていたのではないかという疑いを持っていたのではいかというもの。そのことを知った明美はこんにゃくを受け付けない体になってしまったのだ。
〇 背表紙の友
東山朋生は,香菜里屋で,子供の頃,田舎の本屋さんで,ややいやらしい山田風太郎の本を買うためにカバーを同じ価格の別の本と取り換えて購入していたという昔話をする。東山は会社を辞め,東北の旅館の番頭になった。その後,背表紙の話を香菜里屋で聞いていた浜田という男から手紙が届いたといって工藤が東北の旅館に手紙を持ってくる。東山の行為が,本屋と客の出会いのきっかけになっていたというもの
〇 終幕の風景
この話で香菜里屋は閉店する。冒頭は過冷却を利用したマジックのネタで息子にポータブルゲームを買った男の話。そして,大学の七不思議の話。これは学生運動の頃のスパイの話。たわいのない小さな推理ネタが続く。そして,「香菜里屋」という店のいわれが,「香菜」という女性からの連絡を待つ工藤の思いを表したものだということが分かる。「花の下にて春死なん」で出てきた「片岡草魚」の霊を始めとして,香月,仲川,秋津,真澄,妻木,日浦夫妻,飯島七雄まで登場し,工藤がみなに頭を下げるというシーンで終わる。
〇 香菜里屋を知っていますか
雅蘭堂(孔雀狂想曲の舞台となる骨董店),冬孤堂の宇佐見陶子(狐罠などのヒロイン),蓮杖那智(蓮丈那智フィールドファイルの主人公)のもとに,香菜里屋と工藤の行方を捜す時田雅夫という男が訪問する。香月によると,時田雅夫という男は,工藤と香月が修行していた店にいた男で,修業をしていた店を失った原因を作った男だった。時田は,かつて,地上げ屋に店を明け渡すために,工藤と香月の師匠にあたる料理人の薬を入れ替えていたという。時田は,工藤に謝るために,工藤の行方を捜しているという。工藤の行方は誰も知らない。しかし,どこかの町の路地裏で,香菜と工藤は香菜里屋という店を開いているのではないか…というラスト
〇 双獣記
北森鴻の死により未完のまま終わった作品。飛鳥時代を描いた小説になっており,厩戸皇子,蘇我蝦夷,鞍作止利の弟子である鞍作の那由多などが登場する。厩戸皇子が悪役で,「桃太郎」を下敷きにした話が展開されそうなのだが,残念ながら2章で終わり。ミステリではない。
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香菜里屋シリーズがこれで終わってしまうのは何だか寂しい。この巻は一言で纏めると「旅立ちの巻」、マスターの工藤さんも常連さん達も新しい生活に切り替えた方が何人もいます。
「香菜里屋を知っていますか」の章では香月夫妻以外は、これまで出てきた常連さん達ではなく、他のシリーズのキャラクターが登場しているようです。したたかですね〜〜!ま、そのうち読んであげましょう。
最後に「双獣記」という香菜里屋とはまったく関係のない飛鳥時代の話が載っていた。面白い話なんだけど…香菜里屋の余韻に浸って本を閉じたかった。その辺の構成を少し考えて欲しい。ジャズのCD聞いていたのに最後に演歌を聞かされたような感覚。
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ここに行けば「お帰りなさい」と迎えてくれるところがある。こんな幸せはなかなかないもの。工藤さんが、香菜里屋が、常連客が、雰囲気がとても好きでした。でもそれが永遠じゃないってのも当たり前のことですね。伏線をするするっと回収し、物悲しい思いは残りますが綺麗なエンディングだったと思います。今回、他のシリーズのメンバーがそっと登場されていましたが、香菜里屋が他のシリーズに登場しているところもあるそうで、もし彼がご存命だったらこの後の幸せな工藤さんをどこかで見ることができたかもしれないととても残念な思いもします。
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シリーズ完結編。未完の「双獣記」も収録。
表題作である「香菜里屋を知っていますか」で
北森作品のメインキャラ達が続々登場!
主要キャラ達によって、過去に工藤達に降りかかった
事件の真相が導き出される。
「優れた酒場は賢者の集まりだよ」
蓮丈那智のこのセリフに鳥肌立ちましたよぉ~
そして店名である香菜里屋の意味。
そうだったのかぁ~・・・ちょっとしみじみしました。
ここでシリーズは終わってしまうけど、北森氏が
生きているならば、どこかで工藤のその後を
描いていたのでは・・・と思って切なくなりました。
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北森鴻の小説は初めて読んだ。ビアバー香菜里屋の主人工藤哲也が、バーに集う客の謎を解く短編集の最終巻らしい。推理自体はそうなのかもしれないという感じかな。謎を解くなかで人生を感じさせるというのが持ち味なのだろう。工藤が出す料理が素晴らしく美味しそうなのだが、結構手が込んでいて、しかも素材も厳選されているようで、なかなか家では作れそうもない。
工藤が店を畳んでしまって終わりになるのだが、ちょっと終わり方に唐突感がある。続きを想定していたのかな。作者は亡くなってしまわれたそうだが。
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目次
・ラストマティーニ
・プレジール
・背表紙の友
・終幕の風景
・香菜里屋を知っていますか
やっちまった!
北森鴻の作品3シリーズを、今後読もうと思ってリストに入れていたのだけれど、そのうちの一つ「香菜里屋」がタイトルに入っていたので、まずこれから読もうと思って手にしたら、なんとこれが最終巻だった。
実はシリーズ最初の『花の下にて春死なむ』は読んでいたので、どこから読んでも問題なかった筈なんだけど、実際は問題ありありだった。
まず、のっけから常連さんのいつもの会話に入って行けない。
人物の背景がわからないので、探り探り読む。
香菜里屋のマスター・工藤の友人である香月の視点で語られる事件は、切ない別れの予感をはじめから漂わせていて、そこに香菜里屋のマスターである工藤を登場させるのは、無理やりっぽい気がした。
その後の作品も、常連たちの環境が変化し、少しずつ今までの香菜里屋の風景が変わっていってるんだろうなあという気がした。
もうこれ、最初っから最終巻の気配満々じゃないか。
しかも、最大の謎は明らかにされないまま終わる。
これはもう一度、ちゃんと順番通りに読むしかない。
書き下ろしの「香菜里屋を知っていますか」は、古美術商の冬孤堂こと宇佐美陶子と、民俗学の准教授・蓮杖那智という、私が目をつけている2つのシリーズの主役も登場する。
これらについても順番通りに読もう。
だって北森鴻、絶対面白いはずだから。
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北森鴻さんの香菜里屋シリーズ第四弾で完結編。工藤のその後とか、香菜さんがどんな女性なのかとか、もっと続きが読みたいけど、北森さんは2010年に亡くなっているので、無理です。工藤マスターの作る料理がとても美味しそうでした。
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世田谷区・三軒茶屋のビアバー「香菜里屋」。客から持ちかけられた謎の数々をマスターの工藤哲也が解き明かす連作短編集の完結編となる第4弾。「ラストマティーニ」「プレジール」「背表紙の友」「終幕の風景」「香菜里屋を知っていますか」の5編を収載。また、飛鳥時代を舞台にした伝奇アドベンチャーで、未完となった「双獣記」も収録。
シリーズ完結編は、終末や別れを強く感じさせる短編が並びます。老店主が作った最後のマティーニがテーマの「ラストマティーニ」。「プレジール」では、3人の女性常連客で結成した居酒屋探検隊“プレジール”の岐路が語られます。「背表紙の友」では、常連の東山が会社を辞めて岩手・雫石の旅館の番頭に。工藤の元に香菜から十数年ぶりに手紙が届く「終幕の風景」。「香菜里屋を知っていますか」では、「香菜里屋」の過去が明らかとなります。
いやぁ、本音を言えば、もっと「香菜里屋」シリーズの新作を読みたかった。けれども、著者が明確にシリーズを終わらせていますし、冗長さやマンネリ化をよしとしない「引き際の美学」も、このシリーズらしいといえるかもしれません。しかし、何より、2010年に著者が若くして亡くなったのが残念でなりません。