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結婚後、スピカさんが取り続ける行動のイタさとほろ苦さ。
そして、結婚が主人公達の運命を決定的に変えてしまう。
ただ、取って付けたように最後にあらわれるミステリーは不要。
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大人になるってどういうことなんだろう。そういうことを、周りに「大人」のような人が増えてきて初めて考えるようになる。僕は、自分の中の雑念や雑事が一定の量に満ちたとき、いつの間にかなるものだと思っている。純粋な悪や嘘や優しさは、あの頃にしかない。
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【読了レビュー】恐らくは、著者の研究時代の恩師とのやりとりをベースに、著者が一人前の研究者になるまでの道程が書かれたノンフィクション的なフィクション。
研究という人間の壮大な挑戦に関して、恩師が示し続けた哲学から、人間としての格好良さについて描かれていた。
面白かった。
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心から素晴らしい小説だと思います。
ゆっくりじっくり丁寧に読んでいきました。
私の座右の書となりそうです。
私は大学で研究をしているので、尚更感動しました。
私にも、この先生と出会わなかったら今の私はいないと思える、喜嶋先生のような存在の先生がいます。
私を研究という世界に魅了させてくれた先生。
心から感謝しています。
喜嶋先生のような研究者は、なかなか大学にも少なくなってきた気がします。
でもやはり、一度社会に出て大学に戻った身から考えると、研究者は他の仕事をしている人と比べて仕事に対して情熱的で誠実な人が多いと思います。
私もですが、好きなことを仕事にできることは本当に幸せですね。
不景気で、若者が保守的になりなかなかチャレンジングなことができない世の中になってきましたが、これを読んで少しでも研究という道に魅力を感じてくれる人が増えたらいいなと思います。
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『若い頃には滅多になかったことだ。それが、この頃はときどき空を見上げる。空はいつでもそこにあるから、それだけで少し安心できる。』
『僕がその体験から学んだ最も大事なことは、自分がしたいことをする、自分が考えたいことを考える、そのためにすべての時間を使う、ということだった。したくないこともしなければならないけれど、それは、したいことをするために必要な準備、あるいは練習だと考えた。』
「うーん、きいていいかな。こんな質問して、馬鹿な奴だと思われない?」
「思わないと思うよ」
「君はどう?」
「何が?」
「私のこと、馬鹿だと思ったってこと」
「馬鹿はこんな質問しないよ」
「喜びのうちの八十パーセントくらいは、ぬか喜びだからね」
「中村さんは、どう思われますか?」
「どうして、僕が思わなくちゃいけないの?ー 君が思うことでしょ?」
『僕の知っている良い大人というのは、にこにこして僕の言うことを聞いて頷いてくれる、褒めてくれる、でも、結局は僕の言葉の意味するところを理解しているのではなくて、笑顔で聞き流しているだけなのだ。誰も、僕の疑問には答えてくれなかった。それは子供のときからずっとずっとそうだったのだ。唯一の例外は、図書館の本だけ。僕にとっては、本だけが本当の「大人」だった。』
「ということは、自己満足に過ぎないってことですね」
「自己満足できたら、それはもの凄く良い状態だね。自分が満足できるなんて、そんな素敵なことはない。それは価値が大ありだ」
「どうしたの?」
「私の気持ちって、わからないよね?」
「わからない ー 良かったら、言葉にしてくれないかな」
「常に考えていることは、どう考えれば良いかではなくて、何を考えるのかだ。問題がどこにあるのか、をいつも考えている。問題さえ見つかれば、もうあとは解決するだけだ。そんなことは誰にだってできる」
『ただ考えて、発想する。思いつくまで、考え続ける。発想というのは、それまで関係がなかった事柄の間に新しい関係性を見出だすことだ。』
「周りで知りたがっている野次馬みたいな人たちは、なにもできないんだ。ただ、知りたいだけなんだ」
「そうそう、そういうのは、駄目ってこと?」
「駄目ではないよ。それが普通だと思う。好奇心っていうのは、誰にでもあるものだよ。ただ、好奇心が活かせるかどうかっていうことが大事だと僕は考えている。自分の好奇心を、人間とか社会の役に立つことに使いたいだけだよ。せっかく生きているんだからね」
『いいなあ、こんなにすぐ寝つけて。
こうじゃないと、きっと社会では生きていけないんだろうな。あと何年かしたら、僕も、疲れてばたんきゅうで寝られるようになるかな。きっと、そうならなくちゃいけないんだろうね。僕がそうなれば、君はもっといろいろ考えられるようになるよ。夜通し、考えても良いし、星を眺めても良いし、何だって自由にできるんだよ。』
『一日中、たった一つの微分方程式を睨んでいたんだ。
あの素敵な時間は、いったいどこへいったのだろう?』
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学問という海よりも深く山よりも高いモノに挑む研究者というモノを描く.純粋な研究者とは,生活破綻者だし,客観的に見たらドンキホーテだけれど,末端の純粋とは言い難い研究者としても,大いに頷けるところが恐ろしくもある.極めて静謐といえる.
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「喜嶋先生と出会わなかったら、
きっと今の僕はいない。
学問とはこれほどまでに深遠で、
研究とはこれほどまでに純粋。
圧倒的な読後感に包まれる、
自伝的小説。」
これはこの本の帯につけられたコピーです。わたしはこのコピーに拍手を送りたい。このコピーがあって、本を買い、このコピーがあって、今「圧倒的な読後感」という言葉にカタルシスを得ている。この言葉がなければ、わたしの読了後の、輪郭のおぼつかない、けれどもどこまでいっても激しい衝動のようなものは、行く先を見つけられず、ずっと宙をさまよっていたことだろう。
この本に出会えてよかった。
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文庫版が出たので即購入。
文庫版解説は解剖学者の養老孟司先生。
森博嗣の自伝的小説とされているけども、真偽や意図は不明だし、森博嗣だからどんなトリックがあるかわかったもんじゃない。
でも、この静けさやが続く感じは好きだ。何とも言えない展開と余韻があって、読み終えた後も、どんどん引き込まれていく。
主人公の大学の生活から研究者としての歩みが描かれたもので、成熟や成功体験の物語ではない。
研究者や研究に携わる方は、是非ともこの本を読んでみて、感想を聞かせてもらいたい。
学問に対する純粋な気持ちがシンクロするだろうか?
あるいは・・・そんなもんじゃないのだろうか?
喜嶋先生のように、「学問には王道しかない。」といえる研究者が、どれだけいるだろうか・・・?
各章の冒頭に引用されているのが、オイゲン・ヘリゲルの『日本の弓術』。これは、『弓と禅』の初稿にあたる内容といわれているものらしい。
なかなか、よいチョイス。
この引用によって小説の世界観がより深く感じられる。
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【内容(「BOOK」データベースより)】
文字を読むことが不得意で、勉強が大嫌いだった僕。大学4年のとき卒論のために配属された喜嶋研究室での出会いが、僕のその後の人生を大きく変えていく。寝食を忘れるほど没頭した研究、初めての恋、珠玉の喜嶋語録の数々。学問の深遠さと研究の純粋さを描いて、読む者に深く静かな感動を呼ぶ自伝的小説。
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まだほんの1年ちょっと前のことだけど、学生時代のことを思い出した。当時は深く考えもしなかったけど、あの頃が一番自分のやりたいことをやれてたな。真っ赤に添削されて帰ってきた課題とか、なかなか書き出さなかった卒論とか。用意周到に準備したプレゼンで、なんじゃそりゃって質問受けたり。でも凄い楽しかった。本当に人生で一番充実してたんじゃないかと思う。
惜しむらくは、もっと早くこの本に出会っていたかった。在学中ももちろん好きでやっていたことだけど、この本読んでたら大学生活変わってた。進路考え始めた高校二年生にお薦め。
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終わり方が腑に落ちない。
理解出来ていないだけかもしれないが。
大学時代に良い先生に会ってたら、人生変わっていたかもなー。
まさに一期一会。
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『良い経験になった、という言葉で、人はなんでも肯定してしまうけれど、人間って、ただ経験するために生きているのだろうか。今、僕がやっていることは、ただ経験すれば良いだけのものなんだろうか。』
ハッとさせられた。
学べる、今しかないこの瞬間を大事にしなければならないと。
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1112
自分の学生生活は何だったのかと、読了後に自問自答をしてしまった。せめて、残り僅かの学生生活と卒論はしっかりやろうと心に決めた。
p225
普通の人は、先生を見ても、そんな凄い人だとは絶対にわからない。これも、科学というものが謙虚である証拠だと僕は思う。宗教家や政治家ではありえないことだろう。
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今、真っ直ぐ見つめている生活の中で上位に置かれる価値観を、ちょっと視線を外して眺めることができる、一息つくような読書だった。癒されたといってもいいかもしれない。
生活というありふれた言葉が持つ不思議さがしみじみと染み入る感じ。
解説では、「こころ」が触れられています。私は、最後まで読んで「人間失格」を思い出しました。
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大学の話
大学とは人生最後の学舎であり
本当に自由な自分の時間が取れる最後の期間だと思う。
その間で研究をするも旅をするも良くて、吸収出来ることはこの時期に全て吸収しておくべきだとも思った。
勉強をしよう。
私はあと3ヶ月で大学を卒業する。
とても不安でとても悲しくて、それなのにとても何かに期待している。喜嶋先生のように静かな世界で一生を終えたいとも思った。
在学中に読みおわれて良かった。
そして、この時期に読み終わった私には、読ませたい人の顔が浮かんでしまった。
それは私にとっての一番の恩師。
私がなんで話さなくなったのか、どれほどに先生が好きかが、主人公によって代弁されているようで、読んでいて苦しくなる時があった。
静かな日常はとても大切だ。
その世界はきっと、何人たりとも犯してはならないものだったのだ。
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シリーズ外小説。 もの凄く良かった。長く忘れていた探求心、学ぶ意欲を猛烈に掻き立てられる。 短篇集も鮮烈だったが、本作はさらに秀逸。なかでも、研究生活において挑んでいく様は、もはや命がけといっても良い。全てを捧げ、考えに考え抜いていく。喜嶋先生の本質を突く言葉の数々。鋭く刺さる。 有名な慣用句として使われる王道は、実に稚拙。森博嗣が解釈するように、歩くのが易しい近道ではなく、勇者が歩くべき清く正しい本道こそそれであろう。文字通り、別次元の思考と覚悟がそこにはある。 「学問には王道しかない」