紙の本
人類の行き着く未来、そしてその先の宇宙
2011/07/03 11:50
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:くまくま - この投稿者のレビュー一覧を見る
人類の行き着く未来、そしてその先の宇宙を想起させるSF短編集だ。
「都市彗星のサエ」は、彗星にある鉱山街に生まれた少女サエが感じる閉塞感と、そこからの脱出を目指す少年ジョージィとの出会いを描く。
「グラスハートが割れないように」は、人の心を栄養にして育つという地衣類に関する、青年・日吉康介と少女・秋間時果の心の揺らぎを描く。このふたつには、閉鎖系で生きる人という共通点がある気がする。
「静寂に満ちていく潮」は、地球外知的生命体と地球生命テミスの出会いとその先を描く。
「占職術士の希望」は、他人の天職を見抜く力を持つ紺野哨平と、彼に才能を見出された女性・山科寛奈が遭遇するテロ事件を描く。これらは、生命体としての人と、社会生物としての人、それぞれの変化の可能性を示している気がする。
「守るべき肌」は、情報存在となった人類の選択を描く。
「青い空まで飛んでいけ」は、人類に地球外探査を義務付けられた存在の葛藤を描く。これらは人類の終着点と、その先に広がっている世界を提示している気がする。
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過去の短編集は、結構分かりやすい一貫した背景の中でまとめられていたが、本作では、少々、ひねりがききすぎているため分かりにくい。SF的な恋愛と交配の在り方が根幹としてあるが、無理して入れている作品もある。地被類を食べる女の子の話は読んでいても辛いぐらいに暗く、好き嫌いが分かれるだろうし、天職が分かる占い師ものの話は、落ちがかくあるべきという予定調和的で明るい結末は短編らしくて好感が持てる。異色なのは人間の遥か遠い将来における、人間という物理的な在り方に拘らない姿を描く作品類であり、確かにこうならないと生身のままで宇宙には出れないだろうし、今の絶望的なまでの未来への暗い先行き感は払しょくできないだろう。そうなった遠い将来の人間の性の在り方が、男女という染色体の違いのままで残っているのかについては少々、疑問だが、残っていないと恋愛ものにはならないのだ。
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ちょっとSFとは言えないような話から、超スケールなスペオペまで、なかなかバラエティーに富んだ短編集だった。解説は少し深読みしすぎな気もするけど、全体のテーマは確かにボーイミーツガール(もしくは逆)。
「生命」の定義を考えさせられる1冊でもありました。「生きてる」ということは必ずしも生身を伴わないんだなぁと。
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いろいろな短編をかき集めて、最後にテーマを読者にもわかりやすく提示する、というある意味王道パターン。
慣れた人なら途中でテーマの推測はつくのだろうねぇ。自分はぜんぜんわからなかったが。
というか、途中の気味悪さは何なんだろうかな、というとつまりは異種交配がな。
・・・Gを彷彿をしてしまってさ(苦笑)
いやー、もうだめだったね。訂正ききゃしない。
そういうわけで一番無難だった天職探しがお気に入り。
軟弱ってゆーなー
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軽い短編集で「第六大陸」のワクワク感も
「天冥の標」のドキドキ感も薄い。
未知との遭遇というより、解説にある
登場「人物」でないものも含めてボーイ・ミーツ・ガール的。
とはいってもSFで描かれれば単純な恋愛もんではなくて、
どちらにしても物足りない?若い人向けなのかな。
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計画停電でさぞ通勤時間が長くなるだろう、と覚悟して文庫本を何冊か持ち駅に行きました。そうしたら・・・アレ?いつもとそれほど変わらない。まあ余裕を持って行動するに越したことはありませんね。
小川さんの新刊が出てるよ~ととりあえず購入。グラスハートは他の本に収められていたので読んだことがありましたが他は初めて読みました。オケラちゃんの話と占職の話はそうくるか?と言う感じで面白かったです。
ただ、この方の書かれる女の子ってあまり私の好みに合わないみたいで女の子が出張っている話は…でした。その辺りは個人の嗜好なので仕方ないですね。ハイ。
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天冥の合間の短編集。装丁がたまらなく好み。順列都市的世界でのお話や、生ける宇宙船のお話が好き。そして帯が川口淳一郎先生ってどういうことなのw
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最近の小川一水氏の中では一番好きな本かも。表題の「青い星まで飛んでいけ」も久しぶりにSFを読んだ気がして面白かった。もう少し長編でも良い気がしますが氏の作風からするとこの長さがベストかもとも思います。お薦めの1冊!
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小川一水の短編集は表題作が最高、という気がしてきた。
まだ「老ヴォールの惑星」「フリーランチの時代」しか読んでないけれども。
「天冥の標」を読んだ後なので、軽さや短さになんとなく乗り切れない感を覚えつつ、しかし慣れてきただけでそういえば相変わらず、というか今まで以上に「さらっと流されてるけど実は凄いことになってないですか」という世界だった。
「彗星都市~」だと、すんなりとおさまるところにおさまる、ように見せかけて実は、と見せかけて、という展開でちょっと驚いた。外に出ていくことについて。
「占職術師の希望」はタイトルが跳ね返ってきて、絶望や憂鬱じゃないんだ、としみじみ思いなおした。
一番好きなのが「青い星まで飛んで行け」で、もう会話がいちいち可愛らしくて楽しい。さらっと描写される年数を流しかけて、なにか寂しくなったり面白くなったりする。
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占職術師のお話は、読み易いがあまりSFという感じがしない。
京極夏彦の小説に出てくるとある探偵に近い性質の能力を持つ主人公で話が進むので、個人的にはミステリのような感覚で読み終わった気がする。
巻末にある解説を見ると、少し見方が変わるかもしれないので、解説はあとで読むことをオススメする。
最初の一、二話と占職術師のお話は以外は、基本的に価値観の大きく違う人たち(少なくとも生身の肉体にそれ程コダワリがない)のお話はではあるが、個人的には話に振り落とされることなく読み終えることが出来た。(と思う)
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SF読んでるなぁ。
って気になる一冊。
ずっと未来から、遠い宇宙から、現代まで、幅広く。
「占星術師の希望」なんかが好き。
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小川一水作品は、私にとことん合うものと合わないものがあるのだけれど、これは趣味じゃない方の小川一水だった。「都市彗星のサエ」「グラスハートが割れないように」「静寂に満ちていく潮」「占職術師の希望」「守るべき肌」「青い星まで飛んでいけ」の6篇収録。「グラスハートが割れないように」の前半が一番面白かったかな。
「天冥の標」シリーズ4巻が初夏発売らしいので、待つ。
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面白い。いろいろな傾向のショートストーリーが、それぞれに面白い。が、若干物足りない。どのお話ももっともっと長い物語を描けそうだからかもしれない。
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氏の本を読むのは久しぶりですが、ずいぶんと文体が軽くなった印象を受けました。
元々重い話を書く人ではありませんでしたが、今まで以上に軽い感じ。
短編で求めるのは酷だと理解しつつも、個人的には第六大陸ぐらいのを求めていたのでガッカリというよりは肩透かしをくらった気分。
そういう意味では短編としての奥行きの浅さが(あくまでも私にとっては)悪い意味で出てしまったのかもしれません。
■都市彗星のサエ
巻末の解説でボーイミーツガールと書かれていますが、正しくはガールミーツボーイな話。
小川氏らしい、スケールの大きな話をちまちま進めていって最後のカタルシスにつなげる話。
結末も氏のテイスト満載のオプティミズムな短編。
■グラスハートが割れないように
水からの伝言を彷彿とさせる話。
それ自身は否定しつつも、ある意味で受け入れるというスタンスがとても印象的。
ヒロインが絶望的に苦手なタイプでした。
恋愛SF的な著者の作風が如実に出た作品。
■静寂に満ちていく潮
侵略や征服といった動的な接触ではなく、迎合と理解という静的な交流でファーストコンタクトを描いた作品。
静的であり、性的。
ただ生物の根本的な交流は性行為であるという解釈が根底にあると推測しましたが、折角ならそこの根底すら異なる生物の方がSF的観点では面白かったかもしれません。
人類とはまったく異なる価値観を持っている設定なのに、そこだけなんか人類の価値観を共有している感だったのが違和感。
■占職術師の希望
個人的には一番気に入った作品。
相手の天職が見える主人公と彼のおかげで大成した画家の少女の話。
ちょっと趣向を変えればミステリーにも使えそうな設定。
個人的にはこれ一本で長編化したものを見たかったです。
■守るべき肌
ディアスポラの二次創作。結末で驚きました。
巻末の解説には「すわり」が悪いと書かれていますが、個人的には居心地が悪いの方が感覚として近かったです。
割り切れない最後を前向きに解釈しているという、ある意味で悲哀的な作品。
著者の過去作の中でも異質な存在。
■青い星まで飛んでいけ
表題作。
設定の広大さと、はやぶさたんや2chを彷彿させるゆるさ。
相反する2つの成分によって構成された不可思議な作品。
個人的に気に入ったのは占職術師の希望。
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小川一水のおおよそSF短篇集。
テーマは未知との遭遇とのことで、解説にも、最大の未知とは異性であるという言葉通り、ボーイミーツガール的なお話も多い(あまり真っ当でないことも多いが)。
好きだったのは、「占職術師の希望」と、タイトルの「青い星まで飛んでいけ」か。
占職術師は、星新一の趣味を決めてくれる人工知能の話を思い出した。
まだ知らない楽しいことや、選ばなかった選択肢に気を取られがちな私は、
自分の現在の立ち位置が正しい選択の結果であることに自信が持てず、誰かに肯定してもらって、しかもそれが自分の腑に落ちればどれほど良いかと思える。
そういうあこがれもあるわけだ。
青い星、は、人類滅亡後もオーダーを守り続ける自動機械のお話だが、スケール感がすごい。そして、そのような環境での生殖行動とは何であるかまで書かれていて、
それをもって、このような環境であればそういう生活様式になるであろうというのに納得のいくのが大したものだと思う。
あ、こちらはタチコマだな。そういえば。