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ケルト神話がのってます。入門編かな。これを読んだだけでも、ファンタジー小説にケルトの影響が濃いのが分かると思います。
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騎士道の華・中世騎士物語とケルトにどんな関わりがあるのか、どっちの世界にも等しく興味と愛を抱いているので非常に興味を持って読んだ。
冒頭はブルターニュ半島に今も残る「イスの街」の幻想に始まる。キリスト教以前のケルト文化が徐々に浸透しつつあるキリスト教によって駆逐される過程が口承伝承の中に幾つも残っているという。
第一部はケルト口承文学の中から「異界」「あの世」がどこにあると規定されているのかを探り出し、第二部はキリスト教化された中で口承にどんな脚色が加えられていったのか、変えられた部分、変わらない部分を読み解き、そして第三部に至って、ようやく中世騎士物語の元となったアーサー王伝説へと分け入っていく。
新書のコンパクトさで、ケルト神話やその基本モチーフをざっくりと把握するにも、中世騎士物語成立までの流れを把握するにも非常にわかりやすい。巨石文明やケルト文化そのものについては若干記述が弱いけれど、これは著者が考古学者や歴史学者でなく文学者だというところに起因するのだろう。入門として、また何冊か専門書を片付けた後の頭の整理にはもってこいの一冊だと思うので、私もその意味で時々読み返す。
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ケルト神話とキリスト教がいかに融合したか、そしてアーサー王の伝説はいかにケルト神話から発展したか。はっきりと分かっていないケルト神話を分析しつつ書かれていて、独自の世界観を築いているケルト神話の魅力が深まった。
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●構成
序章 地の果てにて
第一部 ケルト人と他界
第二部 ケルト・キリスト教と他界
第三部 中世騎士物語と他界
終章 「夜の航海」
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ケルト人は古代ヨーロッパの大部分を支配したが、ローマ人やギリシア人、ゲルマン民族の隆盛に伴い征服され、その結果彼ら独自の宗教もキリスト教に包摂される形、すなわちケルト的キリスト教へと変容することとなる。
ケルト人は文字を持たなかったが、口伝により彼らの古伝承が代々伝えられた。またキリスト教化する際にも、ケルト人の神話などが記録されていった。これらの神話、伝承などを精読することによって、著者はケルト人が征服される以前の彼らの宗教の他界観、さらにキリスト教によって変容を遂げたケルト的キリスト教の他界観についてを論じる。
古来からのケルト人の他界観は、地底あるいは海の彼方の陸地にある不老不死の世界に到達するというものである。それが、キリスト教の流入により、罪の概念や天国・地獄などの要素が中心となる。しかしケルト人の独自の要素として、旅によって他界へ到達する物語、というストーリーも加味され、やがては中世の騎士物語へと洗練されてゆく。本書ではこうしたケルト人の宗教史というべき変容の過程を、古伝承や神話、英雄譚などを通じて解読する。いわゆるファンタジー世界が好きな人や神話の好きな方は、興味を持てる内容だろう。
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丸の内開催されていた「バーン・ジョーンズ」展を観て、アーサー王に興味を持ち、この本を読んでた。
日本における他界は、沖縄のニライカナイにみられるように海の彼方にあるが、ケルト神話では地の底にあるらしい。ガリア(ケルト)人は先住民たちを滅ばしたか追い出したかしたとき、先住民たちの神々をそのまま自分たちの神々に取り入れて、地上の世界は自分たちの神々、地下の世界をその神々に支配させた。
そのケルト神話の中にキリスト教思想が浸透してきたことにより、中世騎士物語が創造された。この本は中世騎士物語が、いかにケルト神話とキリスト教思想をベースとして成立してきたかを比較対照しながら紹介している本だ。
アーサー王のちょっとしたエピソードを紹介して、これはこういう世界観が反映されているんだよ〜、と優しく教えてくれるのだが、自分の当初の目的はアーサー王の話を簡単に理解できることだったので、見当はずれていた。でも紹介されている物語はとても面白い。
たぶんエヴァンゲリオンのことを知らないのにエヴァンゲリオン研究序説を先に読んでしまったような感じ。
アーサー王の話をよく知っている人が読めばもっと面白いと思う。
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ケルト神話とその流れを汲む中世騎士物語を分かりやすく解説している。あらすじも紹介されており、原作を読んだ気になれる。
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ギリシア・ローマ時代、かのカエサルを苦しめたケルト人、そうガリア人の勇敢な戦士達。
ヨーロッパの底流に脈々と流れているケルト人達の神話や伝承。
どこかに、日本の神話に通ずるところもあるような気がして、実に奥深い。ハマってしまいそうである。
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自分内「90年代のアーサー王関係書籍を紙の本でゲットできる、そろそろ最後の機会を大事にして、ついでにチャンスがあればいろいろ再読してみよう」キャンペーンの一環で読む。
さすがに10代で読んだ本はよく覚えている。
当時はこの本を持っていなくて、図書室で借りて読んでいた気がする。
全3章のうち、1、2章はケルト神話、民話とキリスト教化について。
当時の私は、ほとんどこの辺には興味がなく読み飛ばしたようだ。
今もケルトもの、特に2章の作品群はちょっとノリにくいのだけど、興味深く読んだ。
自分の成長を感じた次第である。
そもそも、アーサー王ものとケルトものは、私には、隣のもの、祖先を同じくするもの、くらいであって、同一視はできない。
(ケルトものにある、血の匂い、原始の剥き出しなバイオレンスの物語にはノリにくかったのだろう。。。と言っても、アーサー王系も荒々しいストーリーにぶっ飛んだ登場人物、ツッコミの追いつかない超展開は同じなのだけど…。とにかく両者は、私の中では「違う」存在。とごちゃごちゃ言ってしまうけど、特に論理的に説明はできません。考えるな感じろ的な話です。隙あらばなんとやら、すみません)
第3章はアーサーネタ、というか、ジェフリとクレチアンの話です。
わかりやすいし、面白い。
イヴァン、獅子を連れた騎士、はもっとちゃんと読みたかったなと思う。現行のアーサーものにはほとんど名前しか登場しない。
一番笑ったのは、荷車の騎士のイカれた箇所=ランスロが王妃の髪の毛を見てトランス状態になるシーンについての作者のコメント。
「大脳皮質の働きの発達しすぎてしまった現代人とは違って、昔の人間は物事をより深く全身で感じることができたということなのであろうか。」p223
うん、まあそういうことなんだろうな、きっと…。
それにしても、これ(荷車)が、ランスロットのアーサー世界への初登場なんだもんなー。
最初からけっこうぶっ飛んだキャラクターだったなあと改めて思った。
第3章、クレチアンのことがよくわかったし、今はもう廃れたような気がするユングと結びつけてクレチアンの英雄たちの冒険譚を解いていくスタイルはかえって新鮮な気さえする。
でもどっちかといえば、ケルトがメインの新書だなと思う。