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表題作「老ヴォールの惑星」は、珪素生物というイキモノ視点で描かれていて、一番SFっぽいというか、設定だけでも楽しめる素敵な話だった。
他の短編はSFというジャンルではあるけれど、限定された状況の中での人間の行動を追跡実験するように描く…というスタイルで…これが短編SFの王道なのかな?
その中で一番楽しめたのは「漂った男」。任務中の事故で海しかない惑星に墜落した男の話。
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表題作は地球外知的生命体による自惑星外知的生命探査のお話。有川浩『空の中』に出てくる巨大空中浮遊生物みたいなのが出てくる。お勧めは最終作『漂った男』。全球を海に覆われた未踏の惑星に不時着した男。惑星には呼吸可能な大気と栄養充分の海水があり、人間の長期生存が可能。捜索隊との通信は確保されているが大海原の中、場所を特定できず男は波間をひたすら漂い続ける。捜索隊隊長と漂う男との10年余にも渡る通信内容が淡々と描かれている。異国にて深夜にツイタ―をしていると、自分が『漂った男』であるかのような錯覚に陥る時がある。
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SFっぽくなくて、きちんとエンターテイメントとして書かれていた。物語世界に引き込まれて、展開にハラハラドキドキして、読後の満足感に浸れる、そんな小説。文体も癖がなく、簡明な記述で読みやすい。ただ、主人公が若干マッチョなのがたまに気に障る。その分「漂った男」はブラマンスとして魅力的なのかもしれないけれど。
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ニュージェネレーションSF作品
「ギャルナフカの迷宮」、「漂った男」はとても楽しめた。
「老ヴォールの惑星」はちょっと苦手です。
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最近お気に入りの作者の短編集。「ギャルナフカの迷宮」はSFとはいえないけれど、なかなか読ませる。オチは想定の範囲内というか筋書きに新鮮さはないけれど、読ませる技術というのかなぁ、すばらしいな。
表題作「老ヴォールの惑星」は異星人知的生命体視点での話。「重力の使命」っぽいな。ハートウォーミングな展開で、地球人が彼らを救出するんだが、乗り切れなかったのも事実。なんでやろなぁ。
三番目は既読「幸せになる箱庭」。これは良かったんだよなぁ。ディック風で。
ラストは「漂った男」。ハッピーエンドというか、ひねりがない終わり方というか、なかなか味わい深いというか評価に迷うのだが、良い作品であることは事実。
実は表題作が一番インパクトが小さい気がする不思議な短編集だ。
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小川一水さんの、おそらく出世作になるであろう中短編集。
そんでもって、これサイン本なんですよ。神保町にてゲット。
ドリルではなく、知性と秩序をもって地下に光をもたらす「ギャルナフカの迷宮」、
ティプトリーっぽい異星生命の話でありつつやっぱり一水さんっぽくまとまるタイトル作の「老ヴォールの惑星」、
「幸せになる箱庭」はまぁ、どこかで読んだことある感じですが。
どれも綺麗に纏まっている。
個人的にこの三つでは「ギャルナフカの迷宮」が好きですが。
しかし何といっても「漂った男」でしょう。
これは日本SFのオールタイムベストに入るべき作品だと思う。
おそらく、時空を超えて面白い。
GPSが前提の今では突飛に見える設定ですが、
Locator/ID分離が本気で実現されて物理層が隠蔽されれば、
それっぽくなる・・・かも?
今改めて読むと、天冥の標のアーキタイプになってそうなギミックもチラホラ。
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反社会的な政治犯として、一枚の地図だけ渡され地下迷宮に投獄された主人公が、原始時代に等しい無法状態の中から民主的な社会を築きあげるまでを追っていく、社会構築シミュレーションゲームみたいなお話。
「ギャルナフカの迷宮」
と
陸のない惑星に不時着した兵士が、栄養価の高い海にプカプカしながら○年も、母星と通信機を介したやりとりを心の支えに救出を待ち続けるお話「漂った男」
が面白かった!
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SF短編4本。共通のテーマとして既存の価値観を捨てる状況に半ば強制的に追い込まれた時に、生命体が新しいシステムを構築するまでの葛藤と執念が描かれている気がする。そこには、思考する生命体の無限の可能性のようなものを感じさせてくれる。
「ギャルナフカの迷宮」と、「漂った男」が読み応えあった。
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SF中篇4作品収録。
日本にはすごいSF作家さんが誕生していたのですね。
いやぁ、全然知りませんでした。
「漂った男」が一番好きです。
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SFマガジン読者賞受賞作。
短編と中編の区別を知らないけど、解説によると中編集になるらしい。
「ギャルフナフカの迷宮」「老ヴォールの惑星」「幸せになる箱庭」「漂った男」
の4編が収録されている。
SFはあんまり読んだ事のない分野だけど、この本は哲学的な思索が随所にみられるように感じた。他のSFもそうなのだろうか。
既に書いた文章から感想を持ってくると、「ギャルナフカの迷宮」は、
映画でいうと「CUBE」とか「SAW」とかに分類されそうな、(笑いを入れると松本人志監督「しんぼる」も含まれる)「閉鎖空間でのサバイバル&脱出系」の作品でした。
外界から隔絶された空間で同じ状況に置かれた者同士が、相互不信や疑心暗鬼に陥ったりしながら、知恵を出して生存と脱出のために奮闘するというのが、私の置かれた心理的状況とシンクロするものがありました。
生贄として、最下層民として囚人が必要とされたというのは、自分の状況認識と似ているなと思いました。
「老ヴォールの惑星」は、想像だけで書かれた生物の住む惑星が舞台の話で、将来に隕石の衝突による種族の滅亡が確実の中、別の知的生命体に知恵や経験を託せないかと種族が連帯してメッセージを送る話。
これは死を身近に感じる精神状態で、私が読書経験の中で得た最良のものを人に伝えようとするのと似ているなと思いました。
「幸せになる箱庭」は「仮想現実と現実」が主題の話で、マトリックスのような仮想世界に生かされている世界と現実の世界の区別はできるのか、という哲学的な思索がある。
これは「培養液の中の脳」といった哲学で時々話題になる話を思わせる作品でした。
「漂った男」は、自分の住んでいた惑星から遠く離れた無人の海だけの惑星に漂流した男が、通信のみを心の拠り所にして救出を待って生き延びる話。
これは、私の支持者なんて一人もいないんじゃないかという無人島への漂流に似た心理的風景と、パソコンによる通信を心の拠り所にしているという自分の状況と重なるものがありました。
バイタルデータもとられたり、生存のために脳内妄想の世界に逃避したり、通信手段の機械での情報伝達経路が政府によって把握され、心の拠り所としている存在が実際には代理役を立て相手している事を隠している、というのも自分の状況と似ているなと思いました。
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はじめて読んだのは「フリーランチの時代」だが、ベストはやはりこれを挙げる。表題作はじめ、粒ぞろいの作品集。
「第六大陸」「妙なる技の乙女たち」や、刊行中の「天冥の標」シリーズも好き。
「復活の地」「導きの星」「時砂の王」とかが実は未読。
この人の作品は、「SFを読んだ!」て気分にしてくれる。それでいて難しくはなくて、ポジティヴ。人間を信じてる感じがする。ポジティヴすぎて「甘い!」って思うこともあるけど、基本はその前向きさを信じたい気持ちがあるから、やっぱり勇気付けられてしまうんだろうと思う。「漂った男」いいよ。
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極限状況における生存、みたいな設定の4編を収録。非常にシンプルな設定で、短編SFだと人工的な思考実験的なものになりがちだが(それはそれで面白いけど)、物語としても面白いし(ラノベで鍛えたリーダビリティの高さのおかげ?)、なんだか熱いw
「ギャルナフカの迷宮」ホッブス的原始状態から社会を作ることを描いた寓話。そう都合よくいくかよ、と突っ込みつつ、ハッピーエンドでよかったよ。
「老ヴォールの惑星」嵐の中鰭肢を踏ん張って立ち尽くすのは、皇帝ペンギンがヒント?? でも体表に無数の汎眼を持つ円筒体の知的生命体が、冬夏には隊列を組んで踏ん張り、春秋に飛行するてほうがロマンだわ。まさか、その円筒体生命体の成し遂げたことと運命に大泣きするとは、自分がびっくり。
「幸せになる箱庭」私にはクインビーの提案(?)を拒む自信はない… トランザウト状態が、各人の意識内だけでなく、みんなで共有されたヴァーチャル状態だとすると、各人の要望が常に満たされるってホントかな? 2人のエリカ状態みたいな矛盾が生じて、欲求を満たされない人も出てくるのでは。要望までコントロールされるのはイヤだなあ。
「漂った男」昔店番バイトで、1日中誰とも会話しない日があったりして、意識の内外の境界(?)がぐちゃぐちゃになってきて、頭へんになりそう、と思ったことを思い出したわw タテルマ少尉の究極に単調な日々もなぜか面白く読み進めたが、終盤怒涛の展開で、最後は号泣しました。「こんなラストは認めない。ハッピーエンドを自分で書いてやる」と思って作家を志した(解説より)というくらいだから、ハッピーエンドにしてくれるとは思っていたけど、ホントによかった。甘さ・青さ上等。
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SF中編集。
面白かった!
この本で描かれる女性たちは全体的にあまり好きではないんだけれど(作者が女性をこう見ているのかと思うと…ちょっとなぁ。 笑)、比べて話自体と男性キャラクターたちが良い。
特に最後の「漂った男」
これが良かった!
私がこの状況だったら絶対に気が狂います。
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中編4話
1 脱出困難迷宮牢獄の話。そんなものつくる労力があったら他へ使うわい!という舞台設定への文句は言っちゃダメです。こういう舞台では当然ある人間への悲観という展開を丁寧に覆していく。若さと力強さと温かい期待にあふれるお話。
2 表題作。いきものの描写が緻密で楽しい。先人の知識をまるごと受け継ぐシステムが素敵。口語伝承を続ける部族みたいな雰囲気だなあ。最後に会うのが人類じゃなくても良かったかな。
3 星間飛行の末、辿り着いた星は…。よくある展開のように思うが、ラストが爽やか。青年と異星人?との会話が噛み砕くように進むのでありがたい。世(ほかのSF)の異星人は、このシチュエーションでそんな親切な態度にはでてくれないぜ。
4 漂った男。コミュニケーションが人間を形作る、という普遍的話題を突き詰めた話。そんなご都合主義な場所があってたまるか、という舞台設定への文句は言っちゃダメです。SFとして屈指の作品だと思う。泣かせる。
総じて甘く青いけれど、そこを楽しむこともできる。巧さも楽しめる。
追っかけしたかったなあ。今からみんな読むけどさ。
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今、読み終わった本があまりにも良かったので、久々に感想を。
涙ぐみながら、書いてます。
小川一水さんのSF短編集です。
4編あるんですが、どれも一級品です。
素晴らしいの一言。
どれも素晴らしいんですが、とくに印象的な2編をご紹介します。
『ギャルナフカの迷宮』
短編集の一話目で、ガッツリ掴まれました。
とある国で、主人公の男性が政治犯として、逮捕され、刑として地下迷宮閉じ込められます。
中の条件は
「他にも国に盾突いた政治犯が閉じ込められている」
「パンみたいな食べ物と水が、どこかで発生しているが、そこを特定するのが困難であり、中の人が奪いあっている。それによって疑心暗鬼になっている」
「食料に満足できない人たちが、人喰いを始めている」
というもの。
そんな苛烈な環境を、主人公が徐々に変えていきます。
与えられた環境をどう幸せなものにしていくか?という話でした。
ワクワクしながら、それでも幸せって何だろう?って考えさせられます。
素晴らしい!!
『漂った男』
ある惑星の探索中に事故にあい、水しかない惑星で漂流する人生を送ることになった男性のお話。
電話みたいなもので母星の人と会話はできるんですが、それだけしかできなくなります。
この短編集全てで言えることなんですが、テーマは「幸せになるには?」「何のために生きるのか?」です。
ちょっと宗教チックなテーマではありますが、誰もが考えたことがありますよね?
それを突き詰めて、最高に表現するにはどうすればよいのか?と考えられたのが『漂った男』だと思いました。
読む人によって、結論が変わる類のお話ですね。
とにもかくにも、ラスト数ページで僕はガンガン泣かされて、最後の一行は今年読んだ本の中で最高でした。
そんな短編集。
SFなんですが、近未来的な環境を用意するに留まり、中身は普遍的なテーマを扱っています。
や~ここ最近、小川さんの本を何冊か読んでるんですが、大好きです!!