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konnokは仙台弁のページを開いているので「吉里吉里人」(きりきりじん)はおすすめの本になります。ちなみに私の本棚には仙台に戻ってからずっとこの本がおいてあるのですが、気力が充実していないと読み始められないのでまだ読み直してはいません。井上ひさしの小説は「言葉」にこだわりのあるものが多く、面白く読むことができます。
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3月11日の大震災以後,というよりそれに引き続いて起こった福島第一原発の事故以後,ちょっと話題になっていた本です。
東北地方の一寒村・吉里吉里村が,ある日突如として日本国からの分離独立を宣言し,「吉里吉里国」を作る,というお話。吉里吉里国は独自の国政方式を敷き,これまで「ズーズー弁」と蔑まれてきた東北方言を「吉里吉里語」として公用語に定め,金本位制の独自通貨「イエン」を導入し,次々に新国家としての体制を整えていきます。機動隊か自衛隊を投入すれば瞬時に片が付く,と高をくくっていた日本側も,吉里吉里国が次々に繰り出してくる「切り札」を前になすすべもなく翻弄されます。騒動に偶然巻き込まれた三流作家・古橋健二を中心に,吉里吉里国の分離独立闘争を描いた作品です。
「独立闘争」などと書くと重苦しい感じがしますが,作品は全編にわたって明るくのんきな感じです。吉里吉里人たちの繰り出す「切り札」が,例えば自衛隊の介入に対する切り札が参加人数わずか3名の国際卓球大会だったりして(なぜこれで自衛隊を追い返せるのかは作品をお読みいただきたい),真正面からの力押しで独立を勝ち得るのではなく,知恵を使った戦い方にうならされます。
しかしその背景にあるのは,これまで長きにわたって虐げられてきた東北地方の現状です。日本の工業化・高度成長の陰で常に泣かされてきた東北の人々の不満が,吉里吉里村を分離独立に踏み切らせたのです。食料自給率は100%,電力も地熱発電で賄え,小国家ゆえに自転車で事足りるため石油燃料に頼る必要もない。自分たちの手ですべてをうまく回していけるのに,なぜ日本政府の命令に従って苦しい生活をしなければならないのか…という言い分です。
この作品が書かれたのは1981年,今から30年も前のことですが,東北の受難は今もって変わりがありません。日本の農政は30年前から今に至るまでずっと,東北の農村に農業の単一化・機械化を推し進め,機械代と化学肥料代で農村を借金漬けにしました。減反政策は深刻な農業離れを生み,若者は農業と故郷を捨てて都会へ出,税収の減った地方自治体の財政は破綻し,そこへ莫大な補助金を伴って原発がやって来たのでした。そう考えると,井上ひさし氏が東北の怒りを『吉里吉里人』にぶつけた30年前から(作品を読むとわかりますが,実は30年どころではなく300年前から受難は続いているのですが),現状は変わっていないどころかより深刻化していると言えます。東北の一寒村の独立という冗談のような物語をハラハラしながら読みながら,そういう視点を持つことができたのが良かったです。
作品の半分ぐらいはそういう真面目な話で,もう半分はほとんど下ネタなので,誰にでもお勧めできるというわけではありません。性的な話題にそれほど嫌悪感がないという方はどうぞ。
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日本国から独立した、東北地方の小さな村…斬新な考え方ですね(^.^)
でも、昭和の文学だからかなり長編(^^ゞ
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東北の寒村が突如日本からの独立を宣言する—今まさに地方自治が叫ばれていますが、究極的には地方が自立することが肝要です。
吉里吉里という地名は現在は岩手県大槌町に残っています。もともとはアイヌ語で砂浜を意味するそうで、東北地方でも「木里木里」と呼ばれる地名はかなり多くあったそうです。
農作物が豊富に採れ、地熱や薪炭といったエネルギー源もある東北地方は、自給率という観点では優秀な地域なのですが、政治的にはずっと虐げられてきた感があります。
夜行列車で上野に労働者が出稼ぎに行き、雪深い冬はおしんのように耐えて過ごすといった高度成長を支えてきた東北地方のイメージは、福島原発の事故によって変わりました。
今こそ東北地方が独立するくらいの意識を持って、国づくりを進めることが求められています。
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東北のとある村が独立を宣言した!
才人、井上ひさしによる社会派エンターテインメント。もう面白いのなんの。東北弁に翻案された日本国憲法にうならせられたり、随所に出てくる国際法の知識に仰天したり、それはそれはもう素晴らしい作品です。
すごいよ、井上ひさし。
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2011/11/25
読みたい
井上ひさしなので。あと設定が魅力すぎる。糸井重里と東北の商売人との会話の中で話題に上がったんですよ。
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初読は大学受験の頃なので、今から25年程前になります。国際法や為替、笑いもありの正にザッツ・エンターテイメントな作品でした。
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個人的に、『国家反逆』カテゴリーに含めている作品(ほかには筒井康隆「俗物図鑑」、小松左京「日本アパッチ族」、大江健三郎「同時代ゲーム」)。
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ブックナビ7周年の記念の定例会!今回も様々なジャンルの本と出会い、有意義なひとときを過ごすことができました。
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吉里吉里国は日本から分離独立すると宣言した東北の一寒村。
独立を認めない日本との攻防は激化していく(‥のか?)。
上巻は吉里吉里国の切り札が徐々に明らかになっていき、さて日本はどう出る?という展開。
途中、主人公の半生が紹介されたり、吉里吉里語のテキストの内容が紹介されたりするのだけど、その辺のバランスが非常に不思議。
え?ここを掘り下げるの?とついつい笑ってしまう。
それまでいい加減な人に見えていた主人公が、(いい加減はいい加減なんだけど)すごい苦労人に思えたりとか‥人に歴史ありだなぁ。
吉里吉里国はどんな歴史を作っていくのだろう。
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文庫版(全3巻)で読む。
主人公である作家の視点で東北の村・吉里吉里の日本からの独立騒動を描く。
全体的にテンポは良いが、主人公のバカさ加減には多少イラつくことも。
震災後の被災地に対する政府や東電の対応を見ていると、本作はただのフィクションでは納まらない気がしてくる。
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十数年ぶりの再読を開始。「ふりがな」という日本語特有の表現方法の可能性をとことん追究する井上ひさしの超絶芸を堪能しています。
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上中下巻読了。東北地方の一村が、ある日突然日本からの独立を宣言するという荒唐無稽な物語。新国「吉里吉里国」の国策をもって現代日本の問題点を浮き彫りにする。こう書くと崇高だが、進行はまるでドリフのコント調。上中下3巻ずっとコントはチト辛い。短編なら良かったのに。
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ある村が日本から独立し一つの国家となる。
ハチャメチャな設定です。
それにしても、この人の話は独特です。文脈から余分なものを削ぎ落としていったものを鋭い文章と言いますかが、この小説はその逆。
文脈に余分なものをどんどんつけることにより、それが独特のリズムを呼ぶ。
日本刀の鋭さはないもののの、鈍器のように破壊力は抜群。
いつの間にか引き込まれます。
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面白い!! 物凄く面白い!!
最初の吉里吉里語講座も熱心に読んだので、その後の吉里吉里語の会話もバッチグーで読める。
ただあまりに熱心にやったお陰で、時々普通の会話中に”今のを吉里吉里語で言うと○○だな”と頭の中で翻訳してしまうのが、ちょっと…ね…笑