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直前に読んだのが超駄作だったので、知性を感じさせる文章にホッとしながら読み始めました。
どんな話?と人に聞かれたときに上手く説明できないようなストーリーなんだけど、良かったよ、と推薦できるような本。一見寂しい人生だったような、でもどこか幸せな人生だったような。
他の著書はパンチがありそうなので、早速読んでみたいと思います。
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祝・直木賞受賞!
ちょうど読んでいる最中に報を聞きました。
滋賀県で育ち、家庭から脱出するように東京の大学に入った柏木イクという女性の50歳前までの話。
自伝的小説です。
父親は突然、理不尽に「割れた」ような怒り方をする。シベリア抑留が長く、悲惨な体験をしたのだろう。
そんな夫に絶望している母親もどこか壊れている。
イクは幼い頃はあちこちに預けられ、教会の託児所から移った初めての我が家は、仮設事務所だったので安く借りられたもの。
山中に一軒だけ建つ、「ララミー牧場」の家のようだと思う。
家には迷い込んだトンという黒い犬と、シャアという猫がいた。
シャアは人懐こく優しい気立てだったので、イクは犬と猫の性質を逆に感じて育つ。
身近にはいつも犬がいた。
ただし、当時は犬を飼うといっても、繋ぐことさえするとは限らず、名前をつけて餌をやれば飼っているという。餌も残飯を与えるだけ。
父親は犬に言うことを聞かせることが出来て、それは初めて会うドーベルマンですらそうだった。
(犬が主人と認めるような権威を発散していたのでしょうね)
そんな父のやり方を見ていたせいで、犬の扱いが上手いイク。
何のとりえもないと感じていたが、学生時代に貸間を転々として住んでいるときに大家の飼っている犬の世話をしたり、何かと関わっていた。
就職して住んだ家の大家の初音清香はお嬢ちゃまがおばちゃまになったような女性で、白い小型犬(ビションフリーゼ)のベルに洋服を着せて室内で飼っていた。
そういう犬を初めて見たイクは違和感を覚える。
まだ珍しい時代だったんですね。
だんだん懐かれると、かわいくなってくるのだが。
イクが35のときに父はなくなり、その後5年間は人が変わったように母は明るくなる。
だがその後は病気になり、人が変わったのも病気ゆえの変調だったのかと思われた。
両親がやや高齢だったので介護で往復するのも早い時期からあり、下宿先の初音家に病人がいたせいもあってか、どこか暗い印象を持たれるイク。
子供の頃飼っていた犬ペーにそっくりなマロンという犬に出会う。
思わずすぐに手を出して撫でたら、犬のほうもふしぎと嫌がらない。
連れていた老人が散歩で通りかかる時間を見計らい、10分ほど犬と遊ぶ時間を過ごすことになる。
ある日、ふとこれまでを振り返り、特別でない日々を送ってきた自分が幸せだったと感じるのだ。
父を苦しめた戦争を経験することもなく、平凡に生きてこられた。
そこに犬がいたせいで、父も母も癒されたことがあったのだろうと。
ラストで幸福感が溢れるようになるとは、これまでの淡々として苦味のある描写からは予測していませんでした!
親を見送った後の感慨というのは、実感としておおいに理解できます。
作者とは世代が近く、テレビ番組はわかる方が多いし、犬の飼い方の変化もまさしく!かなり知っています。
作者に比べると生まれたところが都市部なので状況も違い、ずっとのほほんとした育ちなので、申し訳ないぐらい幸せに感じますが(違う苦労はあるに���ても)。
「ハルカ・エイティ」と「リアル・シンデレラ」を前に読んでいます。
どちらも直木賞候補作で、女性の半生記という点は共通。
自伝ではないためか、この作品よりも優しい穏やかな筆致でした。
作品リストを見ると、もっと挑発的で強烈なタイトルが多いのですが、そうでないのを読んだようです。
この作品はやや離れた視点から幼い日のことを眺めていて、その冷静さがいいですね。
感情移入したい人には、あるいはややとっつきにくいのかも知れませんが。
感情がないかのように生きているイクに、実は大きく感情が動いていることが端々に見受けられるのが、読んでいて胸の詰まるところです。
犬のことをべったりと書いてはいないのが、犬を飼ったことのない人には入りやすいのか?わかりやすいのかどうなのか。
猫も犬もべたべた可愛がって育ててきた自分だったら、嫌いな人には付いてこれないぐらい甘い話を書きそうです(笑)
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「リアルシンデレラ」がとても印象的で感動的だったので、前回直木賞獲れなかった時はとても残念だったけど、今回のこの作品を読んで、かつ賞を獲れたことで、なんとなくほっとしている自分がいる。長らく姫野さんのいろんな作品をぽつぽつ読ませて頂いているが、ここ最近の2作品が、わたしにはとてもしっくりくるとともに、姫野さんが書き続けてきたことが、いちばんいいかたちで成熟し、表されているように感じた。
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姫野カオルコさんの本は、初めてでした。
主人公イクが生涯に渡って、関わった犬や猫を通して
描かれている。
犬に馴染みやすいイクを犬を通してリアルに表現を
している。
それでいて、イクも犬もそれぞれのスタンツを淡々と
たもっている距離感が何とも言えない昭和らしさを
感じさせるのだろう。
犬ってやっぱりこんなにも家族を見ているのだと
改めて知らされ、愛犬の目をまた見つめる。
イクと同じく、私も母の病気が発症した時には
20代後半だった。
重なる思いも深い。
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昭和33年生まれの主人公なので、全くわからない訳ではないけれど…入り込めなかった。もともとこの作家さんが苦手という意識があるからかな〜
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「昭和の犬/姫野カオルコ」犬がいつも傍にいたという小説。だけど、劇的にも涙ものにもしない。犬は主の悲しみを理解し慰めたりしない。ただなでたり、餌がほしい。そんなただの犬がいてくれてよかったという話
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内容紹介
辛いこともあったけど、平凡だから、幸せなこと。
柏木イク 昭和33年生まれ
『リアル・シンデレラ』以来、待望の長編小説。
昭和33年、滋賀県のある町で生まれた柏木イク。嬰児のころより、いろいろな人に預けられていたイクが、両親とはじめて同居をするようになったのは、風呂も便所も蛇口もない家だった――。理不尽なことで割れたように怒鳴り散らす父親、娘が犬に激しく咬まれたことを見て奇妙に笑う母親。それでもイクは、淡々と、生きてゆく。やがて大学に進学するため上京し、よその家の貸間に住むようになったイクは、たくさんの家族の事情を、目の当たりにしていく。
そして平成19年。49歳、親の介護に東京と滋賀を行ったり来たりするなかで、イクが、しみじみと感じたことは。
ひとりの女性の45年余の歳月から拾い上げた写真のように、昭和から平成へ日々が移ろう。
ちょっとうれしいこと、すごくかなしいこと、小さなできごとのそばにそっといる犬と猫。
『リアル・シンデレラ』以来となる、姫野カオルコ待望の長編小説!
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技術的にはすぐれているのかもしれないが、私のような凡人にはわからない。そういうスタイルなのだろうが、わかりにくい言葉や言い回しが多く、わくわくもドキドキも感動もない。ストーリーもただ淡々とその時代の犬とのかかわりを描くだけで、ちっともおもしろくない。
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主人公と同年代ということもあり、懐かしさを求めて読みました。確かに、そう感じる場面もあったのですが、入り込めませんでした。
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最初、少し読みづらいと感じましたが、犬の存在が私たちに幸福をもたらしてくれることを、つくづく感じました。よかったです。
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祝!直木賞受賞。
今、自分の年齢と親の介護からも眼をそらさずに真っ直ぐに敬虔に生きてきたカオルコさんが著したこの本、重たいほどの感動を持って読み終わりました。
犬を愛でるという経験を通して自分の半生を思い起こすと滋賀県の良く見知った(かつて心酔した「ツイラク」にて)風景や方言と共に両親との摩擦や友達との距離感をまた深く思い出します。それは柏木イクでもあり、森本準子でもあり、私であったのかもしれない。
誰にも似てない、という評価、直木賞の選評であったと耳にしましたが、カオルコさんの本はずっと以前からこうでしたし、かつてのノミネート作もしかりですし、何を今更の撰者の言葉と思ったのですが、そこはそれ、本当にようやくの受賞、よかったよかった。
この本は直木賞受賞作はご苦労様でした賞などと嘯いていたこれまでの(ダレとはいわないけれど)私の直木賞本への思いを覆しました。多分にひいき目もありますが。
そんなに好きなのに!なぜ、発刊後即読みしなかったかというと『犬』だったから。これが『猫』だったらまた違ったのですが。
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“獲得したものを数えるのではなく、彼らの厚情により、被らなくて済んだ不幸を数えれば、それは獲得したものとちがい目には見えないが、いっぱいいっぱいあるのではないか。近くと大きくて掴めないが、遠いとぎゅっと掴める、(年をとると、掴めることが増えるのがよい)”P300より引用
姫野カオルコさんの、曇った世界が昔から好きだけど、直木賞をとったこの本は、なんといったらいいんだろう、集大成といったらつまらなく聞こえてしまうだろうか。変わった両親に育てられ(育てられてもいないか)人からは不憫にみえるひとりの女性が、昭和から平成にかけて、いつも傍らにいた(飼っていたとは限らない)犬たちと共に淡々と生きるお話だ。地味で暗くて、読んでる間はただただ彼女の成長と出会う人々の、そこに特には何も起こらないあらすじを追ってるだけなのに、読み終わったとたんに、ぎゅっと胸を掴まれてしまう。ああ、彼女はなんて幸せだったんだろう、この不幸に見える人生が彼女にとっての幸せだったなんて、こんなすごいことないな、と読み終わってやっと、ぐるぐると感情が押し寄せるんである。説教がましいことも、言い訳もなにひとつない、この純粋な物語そのものに、すっかり満たされてしまった。
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直木賞受賞のインタビューを見て、作者の方の奇抜さにびっくりしましたが、内容はヤマというヤマもなく、イクという一人の女性の人生と彼女の人生に沿うように登場する犬たち。
山場のない人生、決して恵まれた人生でなくとも、周りに感謝して生きていきたい。
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昭和の時代を犬とともに生きた一人の女性の物語。目の前の現実を受け止め淡々と生きる主人公の姿に逞しささえ感じる。そして、幸せとは何かと考えさせられる。何気ない生活や日常の出来事が心に染み込んでくるのは犬の存在か。終章が何とも味わい深い。
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昭和30年代に滋賀県の南部に生まれた主人公・イク。彼女の5歳から49歳までの半生を章立てて追った自伝的小説。
幼少期から辛い家庭環境にあったイクは社会人になっても一人で居ることを選択し、平凡な日々を過ごす。人との関わりに消極的であったイクの傍らには、随所で「犬」の存在があった。歳月を重ね、イクも歳を取る。月日が流れるほどに色濃く見えてくる遠い景色。家族のこと。昔の自分のこと。そして今の自分のこと。
一貫して淡々とした描写ではあるけれど、イクを通して、また犬を通して昭和の時代が見えてくる。ラストにかけてイクの心情が静かに、でも確実に開けていく様子が印象的。犬を通して気付く、人と人との心の繋がり。犬が居て良かった。