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紙の本
地域経済につける薬
2004/04/20 15:47
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:後藤和智 - この投稿者のレビュー一覧を見る
地域経済再生における地域金融や産業政策の役割を論じたのが本書である。だが、本書が、一般の経済書と違うのは、著者が積極的に「現場」へと赴いて考えたことが記述の大半を占めることである。
例えば、「不良債権処理」が必要だ、といわれる。確かに不良債権は銀行の機能を低下させる。だが、不良債権を処理すれば銀行の経営が改善されるほど、事態は単純なのだろうか。むしろ安易な「不良債権処理」は、自分で自分の首を絞めることにならないか。そこで山口氏が提唱するのが「不良債権減らし」である。著者は「不良債権減らし」の利点を論じつつ、実際に「不良債権減らし」に成功した、茨城県の地銀である常陽銀行の事例を紹介する。
銀行が貸し付けた資金を返還できなくなった企業に対して、銀行が進んで、且つ粘り強く改善の指導をして、やがては借金を返還できるようにするのが「不良債権減らし」であるが、常陽銀行が、いかにして地域の中小企業の経営を改善させ、新たな不良債権の発生を阻止したかをたどっているのは興味深い。
第2章は、いったんものすごい危機に苦しめられた地域が、いかにして再生したかを紹介している。この章で紹介されているのは、炭素繊維でワカサギの湖を復活させた群馬県榛名町の小さな「産学協同」や、自治体や大企業が中小企業の結束を促し、地域の活発さを取り戻した大阪市、これまでの対症療法的な考え方を切り替えて、病院の改善策に乗り出した三重県尾鷲市の病院だが、経済学が扱うような価格競争・市場競争ではないところに地域経済再生の鍵を見出すことができる、というのは確かなようだ。
本書は3章で構成されているが、本書を貫くスタンスは一貫している。それは「現場」の意見を尊重し、また地域金融や政府・自治体が地域を活かすことが経済再生に繋がる、ということである。これまでの「構造改革論」が「不良債権処理」一辺倒に代表されるような「壊す」経済であることに対抗して、山口氏が唱えるのは「活かす」経済である。
山口氏にとって「現場」でものを考えることは新たな挑戦だったという(あとがき)。しかし、既存の経済対立が通用しなくなった今だからこそ、市場経済学が取り扱わない部分にスポットライトを当てるという試みは、もっと評価されていいと思う。
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