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みんなの評価3.5

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26 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本

日本の教育が招く怖ろしい未来

2010/01/15 16:50

12人中、11人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:狸パンチ - この投稿者のレビュー一覧を見る

 私じしんも授業はさぼり、読書したりバイトをしたりの「名ばかり大学生」だったので、本書のタイトルを見たときは、日本の大学では当然のことだろうと思いました。昔から日本の大学は入るのは難しく出るのは簡単、欧米はその逆だと耳にたこができるぐらい聞きました。しかし、本書を読んでみると衝撃の連続でした。昔の名ばかり大学生と今のそれとは、雲泥の差があるのだというのです。

 授業時間を減らした「ゆとり教育」のせいはあるでしょう。しかし、学校でゆとり教育を受けていても、大学受験のためには一流大学を目指す者は塾に通い、相変わらず競争をします。問題は中位以下の子供たちでした。著者が理事長を務める全国学力研究会の調査では、一流進学高校を除いてテストを課したところ、明らかにかつての同年代よりも今の子どもたちの学力低下は著しいそうです。特に数学は惨たんたるもので、「数学の勉強を通じて培われる、多様なものの見方を実践する、あるいは工夫しながら局面を打開するという精神が、現代の子供たちは衰弱しているのではないかという懸念が生じる」と著者は述べます。

 そして、そうした子供たちの多くが大学に入学します。少子化と中位以下の大学の定員増によって、極論すれば誰でも大学には入ることができます。著者はこの現状を「現代の日本は、まったく勉強しないまま大学への入学を許可し、かつ基礎学力を欠いたまま(それゆえおそらくは教育効果がないまま)卒業を許す、世界史上でも極めて稀有な環境を用意していることになる」と定義づけます。つまりは数年後からしばらくは、「工夫して局面を打開」することができない若者たちがどっと社会人になっていくということです。一流大学の学生は制度と関係なく、親からの援助で高い教育を受けていますから、格差もさまざまな局面で広がっていくでしょう。

 ならば、今の制度を改めて、詰め込み型で管理を強化する教育に転換すればいいではないかという意見が出るでしょう。しかし、競争と管理教育を強めることが、中位以下の子供たちを破壊していった歴史を本書はたどっています。愛知県は1970年代末から80年代にかけて徹底した管理教育を行いました。そこでは軍隊式の暴力を教師がふるい、こまごまとして規則で子供たちの生活を拘束しました。

 その結果、何が起こったのか。それは、校内暴力と援助交際だったと著者は指摘します。統計からみると確かに符号するのです。管理教育とは生徒の序列化を含み、そこから落ちこぼれていった者は「荒れる」しかありません。校内暴力は明らかなその現れです。援助交際はといえば、序列から落ちてしまった女子生徒が、自分の唯一の所有物である「体」を金銭に換えることで、自分の価値を取り戻すという歪んだ心性によるものだとみます。
 さらに統計と突き合わせて怖ろしいことが分かりました。管理教育を受けた世代は、児童虐待が増えたというのだ。しかも愛知県をトップでした。暴力は連鎖することの証明かもしれません。

 管理教育も人間性を破壊し、「ゆとり教育」も失敗した。日本の教育システムはどうしたらいいのでしょうか。秋田県が教育プログラムを工夫し、学力向上に成功しました。それは教材やプリントを全県で一律一元化することです。そうすることによって教材が多くの教師の目にふれてバージョンアップしやすくなり、成績の悪い子の指導も他校の事例を参考にして対応しやすくなるという結果を生みました。ところが、秋田という土地柄のために悲しい現実が生じたのです。いくら学力が上がっても一流大学への進学率は大都市圏に及ばないのです。大都市圏では国立大に落ちても、そこそこの私立大があります。しかし秋田では数少ない国立に落ち、地元の残るとなると、低位の私立大しか選択肢がないのです。不況のなかで大都市の大学に通わせる資力のある親は減っているということも背景にあります。

 管理教育も人間性を破壊し、ゆとり教育も失敗し、地方の改革も大きな果実となりませんでした。著者はかろうじて、生徒の個性をみるAO入試や、名著古典の読書を義務づけるなどの教育改革を唱えますが、問題の根はさらに深そうです。

 基礎教養がなく、工夫して局面を打開できない子供たちが、10年、20年後には社会の中核となります。それは怖ろしい未来です。本当に教育はいまのままでいいのか、と強く考えさせられる一冊でした。

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