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本書は所得倍増にかけた三人の敗者の物語です。首相となった池田勇人、政治面を影で支えた田村敏雄と政策面を支えた下村治。本書を読むとかつては確かに志をもった人達がいたという事が良くわかります。
久々に人間の凄味を描き出すような良質なノンフィクションを読みました。
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1950〜60年代。大蔵省の3人の男は、多くのエコノミストが経済悲観論を唱えるなかで楽観的かつ所得倍増計画を打ち出した。奇しくも3人の共通点は大蔵省の「ルーザー」であった。
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“GOOD・LOSER”(良き敗者)だった三人の男たちが、キャッチコピー「所得倍増」のもと、日本の経済成長(ゴールデン・シクスティーズ)を演出する。
半世紀後の現代、日本経済はピークアウトして久しく、むしろ六重苦に悩む。この困難な時代にこそ、悲観と楽観、夢と現実等、対極のバランス感覚が必要でなかろうか。
「世界の静かな中心であれ」。筆者が語るよう、三島由紀夫の一文が身に染みる。
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所得倍増計画!
戦国最大のキャッチコピーを今一度考えてみようかと。
沢木耕太郎は、旅ものじゃなくても、いいんだー。これは面白い!
それにしても、骨のある政治家って、何処にいたんだろう?
次は吉田茂でもよむか。
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高度経済成長とは何だったのか・・・
所得倍増とは何だったのか・・・
この閉塞感漂ういま、日本が輝いていたと思われる時代が、
いったいどういったものなのかを知りたかった。
それにあたり、本書を読んでみたのだが、
やはり、60年代というのは、輝いていたのだと思った。
もちろん、テーマは政治であるが、
いかんせん、下村治の異色ぶりに感嘆させられる。
キーワードは大蔵省だ。関係している人たちの出自が大蔵省。
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日本近代史に詳しくないので知らないことだらけでした。
高度経済成長の始まりにいた池田内閣の話。
人として政治家として応援したくなる人物たちですが、今もこういうマジメな政治家がいるんだろうか。
経済学や経済学者がどんな働きをしているかも、少しわかってきた。
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『所得倍増計画』を「どのように」誕生させたかではなく、「なぜ」誕生するに至ったのかを書いている。
つまり、「実行・実現」のプロセスではなく、「構想」の段階のプロセスが主題になっている。
そのため、『所得倍増』が実現していくうねりのような臨場感はこの本では再現されていない。
時系列をあまり意識していない章立てにも原因はあるのかもしれない。
かといって、面白くないわけではなく、国政の内幕に触れたことが無い身としては、政策どのように生まれるかが分かって新鮮だったし、政治家や官僚の志というものも分かって、もっと政治というものを前向きに捉えようと思えるようになった。
また、構想をまとめあげ、それを政策として実行する者としての「政治家」、その政治家に具体的な案を出し、策を作り上げる存在としての「ブレーン」という、国政における役者の立ち位置や存在意義が分かったので、これから投票に臨む上での一つの立脚点のようなものが見つかったのも大きな収穫だった。
それから、物語の本筋とはあまり関係がないが、「永遠の正論」というワードチョイスと事象の捉え方には、著者・沢木耕太郎の持つ視点の凄みが見えた気がする。
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所得倍増をキャッチフレーズに高度成長を突き進んだ1960年代について池田勇人・田村敏雄・下村治を中心に描いたノンフィクション。デフレで給料も上がらない今、「所得倍増」に現実味があった時代がうらやましく思える。池田・田村・下村は3人とも大蔵省のなかでは敗者に見られていたという切り口は面白い。もっとも、通常の敗者ではありえないんだけど。
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1960年代を代表する制作「所得倍増計画」を作り上げたのは池田勇人、田村俊雄、下村治の三人の敗者だった。
「1960年、「反安保」の運動に火が付き始めた頃まだ小学生にしかすぎなかった私は、のちに「安保闘争史」といった書物を読むたびに、なぜかくも急速に「安保」後の政治状況が保守の側に有利な流れになってしまったのか、どうしても分からないと感じることが多かった。(中略)しかしいま、保守、少なくとも池田勇人とその周辺には来るべき時代を見通すひとつの歴史観があったことが理解できる。歴史観というのが大袈裟ならば、日本を動かしていく時代の流れを察知し、その未来を構想する能力があった。」(『危機の宰相』p.237より引用)
著者がこの歴史的出来事を、上記の軌跡を中心として、「敗者性」の共通という視点からまとめなおしていたのはおもしろかった。
歴史的事件をただ教科書通りに読んでしまうのでは全くつまらない。
著者の視点を通じ、ひとつの出来事を見なおしていく作業の魅力がノンフィクションにはあると思う。
三人に共通する「敗者性」、戦争によって変わった運命、所得倍増計画が三人を通じてどのように世に出て行ったのか。
ここら辺がこの本の面白さだ。
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所得倍増という池田政権下でのあまりにも有名なスローガン、未来を知る者にとっては時代の趨勢として割合に自然と実現したかのような印象をもっていたせいか、スローガンが世に踊る前、そして高度成長期においても大半の学者、政治家は高度成長に懐疑的、批判的であったんだということに、ちょっと驚く。スローガンだけに終わらせず、実現を信じて政策を実行させる力となったのは財務エリートたる大蔵省の中枢、ではなく、それぞれ出世コースから一度離脱を余儀なくされた敗者の3人だった。
人の縁、時の運、いくつもの偶然が隠されていたんだなぁと、あとがきを読みながらじんわりとした。
ノンフィクションの醍醐味を味わえる一冊では?
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確かに所得倍増って言われても、
それは月給のことなのかGDPのことなのか、
はたまた他の何かなのか、言われてみると良く分からない。
後の世代に生まれた者としては、
とにかく「景気の良い時代だったのだ」、
というだけの印象が大きい。
そういう曖昧模糊とした「所得倍増」の成立ちを、
池田勇人、田村敏夫、下村治の生を通して視ていくのは面白い。
そこには様々な意図、偶然、思想、人が絡んでいたのだ。
「テロルの決算」もそうだったが、
読むことで近代史に目を向けたくなると思わせてくれるところが、
この本の素晴らしいところだと個人的に感じる。
「未完の六月」は是非書いてほしかったが。
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所得倍増と言う言葉を中心に、これを達成する上で欠かせない池田元首相、下村治氏、田村敏雄氏の敗者の烙印を押されつつあった三名によりなされた奇跡を描いている。共に個性がはっきりしており、しっかりとした調査でより克明に描いていると思う。何故奇跡の様な事が結果として起きたのか、池田勇人が首相になる少し前に安保反対などで、何方かといえば劣勢だったはずを打ち撥ね退けたのかが分かる気がする一冊。
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池田勇人とそのブレーン下村脩、更に後援会の田村敏雄という大蔵省における敗者三人が、所得倍増計画を作って実行していく様子なので、果てしなく地味な話ではあるものの、なかなか皮肉な運命が散見されておっていやはや。
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タイトルの危機の宰相とは、池田勇人のことである。
本作は、彼とそのブレーンであった下村治、田村敏雄の3人に焦点を当てた物語である。
池田勇人といえば「所得倍増」である。
著者が戦後最大のコピーというこのキャッチーなコピーもさることながら、実現不可能と言われた経済成長率を彼らは見事に実現させた。
紆余曲折を経て彼らは出会い、歴史の1ページに名を残した。
一国の総理ですら挫折を味わったのだと思うと、親近感が湧くと同時に、当時の彼の想いを想像すると切なくなる。
丹念に取材されていて、読みやすくとても面白かった。
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唯一私が定常的に手を出すノンフィクション作家さん。
でも、テーマが経済と政治ということで、ちょっと乗り切れず。
とはいえ、余り興味のないテーマでも最後まで読ませる沢木さんは凄いです。