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紙の本
闘争としての思考
2008/05/26 22:47
7人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:けんいち - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、『身体の比較社会学』『ナショナリズムの由来』に比肩する大澤社会学の一道標である。
自由の領域が広がっている現代にあって、逆説的に閉塞感が高まっているという逆説的な現実に向き合い、哲学史・精神分析・論理学・宗教・社会事件・スポーツ・映画・記憶など、実に多岐にわたる領域・文献へのリファーを自在に展開しながら、テーマを考究していくための手続きを短絡することなく、1つ1つ地道に検討し、抽象的なテーマを400ページを越える紙幅を割いて緻密な議論を積み重ねていく──これは大澤真幸、自家薬籠中の筆法であると同時に、7年前に終えていた連載を、ようやく世に問うに至った「現在形の大澤真幸」そのものといってよい。
大澤は〈自由〉を論じるに際し、時間(因果関係)の問い直しから出発し、これまでの自由論を批判的に検討し、大澤社会学の鍵概念=「第三者の審級」を導入し、現代社会あの地平を見極めながら、〈他者〉・〈公共性〉を経由して、「〈自由〉の条件」を問い続けていく。論理的な思弁とともに現実の出来事の社会学的分析を織り交ぜ展開していくその筆致は、構築的であると同時に速度をあわせもち、〈自由〉への祈りを原動力として疾駆していく。
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