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いつもユーモア(毒舌)に溢れた著者です。入試問題で引用される上位2位とのことも、メッセージ性から頷けます。10代のころにオーラがあった早熟な少年たちが「じぶんがどれほど賢く有能なのか」をショウオフすることに知的リソースを投じ、ある日気がつくと狷介で孤独な中年男になっているという一文には苦笑いです。また朝日ジャーナルの熱心な購読者の意識として読んでいるという無言のメッセージを発信するためだったということもその通りです。!「国家の品格」というベストセラーがいかに品格がない本であるか!本来的に外部評価が品格を決めるはずであるのに、自ら主張するという夜郎自大ぶりを批評する主張にも全く賛成でした。まことに痛快な本です。著者がユダヤ文化論の専門とは今回初めて知りましたが、なるほど旧約聖書の引用が多いはずでした。
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【私の本棚】p22
小説を読むというのは(哲学でも同じかもしれないけれど)、別の時代の、別の国の、年齢も性別も宗教も言語も美意識も価値観も違う、別の人間の内側に入り込んで、その人の身体と意識を通じて、未知の世界を経験することだと私は思っている。
私の場合はとくに「未知の人の身体を通じて」世界を経験することに深い愉悦を感じる。
【ジュンク堂と沈黙交易】p81
インターネットでお買い物というのは「沈黙交易」の今日的な甦りであるという仮説。
【非人情三人男】p96
「苦しんだり、怒ったり、騒いだり、泣いたりは人の世につきものだ。余も三十年の間それをし通して、飽々した。余が欲するのはそんな世間的の人情を鼓舞するようなものではない。俗念を放棄して、しばらくでも塵界を離れた心持ちになれる詩である」(夏目漱石『草枕』)
【マルクスを読む】p105
「労働者が骨身を削って働けば働くほど、彼が自分の向こうがわにつくりだす疎遠な対象的世界がそれだけ強大になり、彼自身つまり彼の内的世界はいっそう貧しくなり、彼に属するものがいっそう乏しくなる」(カール・マルクス『経哲草稿』301頁)というのは単なるレトリックではない。
【歩哨的資質について】p177
私たちの世界は「存在しないもの」に囲繞されている。
宇宙の起源を私たちは知らないし、宇宙の果てに何があるのか(というより「何がないか」)も知らない。時の始まりを知らず、時の終わりを知らない。
【140字の修辞学】p375
長く書いて、かつ飽きさせないためには、螺旋状に「内側に切り込む」ような思考とエクリチュールが必要である。
【補稿 「世界の最後」に読む物語】p401
私たちは文学を通じて、今の自分と違う身体のうちに入り込み、こことは違う世界で、こことは違う空気を吸い、想像を絶した快楽を享受し、想像を絶した苦痛に耐える。今いるこの世界から抜け出し、他者たちのうちに入り込む。その経験がもたらす解放感と快楽ゆえに人類は文学を必要としているのである。
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http://www.ohtabooks.com/publish/2012/04/12193738.html
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気になって数えてみたら、内田樹はこれで14冊目みたいです。これだけ読めば僕も「タツラー」を名乗ってもいいでしょうか?
街場シリーズ『読書論』ですが、読書にとどまらず教育・文体・母語・情報・エネルギー・ネット社会・死など、さまざまな分野について語ってくださっています。
情報システムがIBMモデルからアップルモデルに変わる過程で「情報」は「商品」ではなくなったという話には目からうろこでした。そこからエネルギー問題まで持って行っちゃっうんだからタツラーはやめられない。
例によってブログコンピ本なので読んだことのある文章は少なからずあるのですが、なかでも『学ぶ力』という文章は大のお気に入りになりました。いつか中学2年生の担任になったら、生徒に読ませようと思います。
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本はなぜ必要か。
どうすればもっと「伝わる」のか。
強靱でしなやかな知性は、どのような読書から生まれるのか――。
(アマゾン内容紹介より)
約400頁、自分としたらよく頑張った。
・・・いや、のど越しのいいうどんを食べるときのように、スルスルと読み進んでいけた(笑)
しかし、内容は多岐にわたり、しかも知的で密度が濃い。
第一章 文芸棚
第二章 人文棚
第三章 ウチダ本棚
第四章 教育棚
第五章 著作権棚
第六章 表現とリテラシー
補論 「世界の終わり」に読む物語
あとがき
あとがきに
「言葉が伝わるというのは、どういうことか」が主題。
リーダビリティ」といういささかこなれの悪い言葉
を使って、この本の中で僕が論じていることです。
とある・・・この本に関しては、リーダビリティがあると思うよ。
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街場シリーズは数あれど、「読書論」となればついにウチダさんの本業が主題ということになる。(作家は書くだけじゃなく、読むほうも仕事のうちだろうし)
そういう意味もあってさすがの内容。テーマが幅広くて面白いです。
ウチダさんの本は多くがそうだけど、今回は特に読書欲を掻き立てられた。
とりあえず、ウチダさんの著作何作かと、トーマス・マンとカミュとヘミングウェイを読書リストに追加した。(※p280)
—
memo:
54
「一気に読ませるもの」では、一行目でいきなり書き手が耳元にいる。つまり、「一行目から話が始まる」のではなく、「もう話は始まっているのだが、それはたまたま私にとって『一行目』だった」ということである。
78
「学習」は脳への入力である。「テスト」は脳からの出力である。つまり、脳の機能は「出力」を基準にして、そのパフォーマンスが変化するのである。平たく言えば「いくら詰め込んでも無意味」であり、「使ったもの勝ち」ということである。
102
「マルクスを読む」
149
私たちに必要なのは、「ダウンサイジングの戦略」である(ギリシャもイタリアもスペインもポルトガルもオランダもイギリスも)版図を世界に拡げた帝国から小国に劇的に「ダウンサイジング」した。そして、長い低迷と退嬰のときをやり過ごして、安定し、成熟した体制を整えることに成功した。
200
統治者の才能や徳性は被統治者と同程度である方がデモクラシーはスムーズに機能する。
228
自分の人生を豊かにしてくれる可能性を潜在させている人と出会うと、生物的に「ぴん」と来る。
242
日本におけるマルクス主義は「大人」を作り出すための知的なイニシエーションとして活用された
313
「本を読む人」の全員はこの「本を購入しない読者」から、その長い読者人生を開始する。
363
情報についての情報とはメタ・メッセージのことである。メタ・メッセージとはメッセージの読み方についてのメッセージのこと。
407
人間は自分宛てのメッセージでないものを理解するために知的資源を投じることについてはきわめて吝嗇である
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1か月以上かけて 読み終えました。
トクヴィルの『アメリカのデモクラシー』買いました。
私に読めるんだろうか。
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本のガイドというよりも、引用した上での思考哲学といったほうが正しい。しかし、いつもの論評よりはテンポが軽めなのでさくさく読める。
ジョルジュ・サンドの『愛の妖精』やケストナーの『飛ぶ教室』ってそんなにおもしろいのか、読んでみたくなった。
読みやすい本のコツとは、コミュケーション・プラットホームの構築。読者に対してゆっくりと理解を得ながら進む文章。目から鱗が落ちる指摘。いい本を書く人は本に対する感性が鋭い。
著作権に関する論評も納得。質を問わずに数だけ捌こうとする出版ビジネスにうんざり。
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論文とレポートの違い、
聞き手の知性に対する敬意、
何か新しい見解を、相手の聞きたい言葉で語る。
リーダビリティについても、深く考えさせられる。
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脳の機能は「出力」を基準にして、そのパフォーマンスが変化するのである。
平たく言えば「いくら詰め込んでも無意味」であり、「使ったもの勝ち」ということである。(p78)
これからの自分の読書の仕方ということについて考えさせられた。
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内田先生の著作が世に広く知られるようになる頃のブログ記事なども収録されていて、「ああ、そうだったなあ」と、その頃のことを懐かしく思い出しました。
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実家にいると、家族から話しかけられたりして
どうも没入する読書は難しい。
だもんで、章がぷつぷつ切れているエッセイが
読みたくなる。これもそんな一冊。
個人的には「読書論」の本って大好きで、
ほかにも齋藤孝さんや三谷宏治さん、
佐藤優さんや奥野宣之さん、原尻淳一さんの
「読書論(読書術)」を読んできました。
この手の本の評価基準は、読後にどれだけ
また本が読みたくなるかなんですけど、
そう意味では三谷さんの『戦略読書』と
この本は別格の面白さ。
はじめの方に書いてある、
クリエイティブ・ライティングの話は、
前に読んだときよりも、この正月に読んだときの方が
なんだか胸に来るものがあった。
『街場の文体論』の補助本として読むと、
面白い発見がありそう。
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読書のモチベーションが少し下がった気がして(気のせいでしたが)、困ったときの内田頼みってことで、本作を手に取りました。これを読みながら、ネガティブ批評はいかんなと思いつつ書くのも憚られるけど、読み始めたものの遅々として進まない「仮往生伝試文」がどうしても受け付けず、何か突破口はないものかと思ったのがきっかけ。同作の個人的感想はそのときに書くとして、肯定的に読んでみようと思う契機づけにはなりました。他は、母語の考え方とか、人に伝える仕方とか、読書論というくくりで語られてはいても、あくまで筆者ならではの論旨に、相変わらず感嘆しきりでした。決して容易な内容ではないのに、リーダビリティの高さを感じさせられる理由、少し分かった気がします。
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ワークショップ・デザインなどをやっていると面白い視座からの提言は必要。これからは内田さんの書籍を読み直し、読み直し、そこから発案しようと画策している。
思考停止に陥らず考え抜くとはどういうことかを身をもって示してくれている先達だと思う。これからも是非新しいものを提供いただきたいと思う。
内田さんのマンガの趣味が自分のと結構合うのにビックリ。是非お会いしてお話ししたい。
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読書本はただ本の紹介か感想が書いてあるだけのことが多いが、内田氏のものは、著書の論考がふんだんに盛り込まれており、色々な刺激がある。いくつか読んでみたいなという本があったので、参考にまたいくつか物色してみよう。