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この本の帯にも書かれている様に、今(2014)の日本は、アベノミクスによる効果や東京オリンピックの誘致成功などで浮かれていると思います。
民主党が政権を担当していた頃には多くあった日本悲観本が近頃はメッキリ少なくなっています。私も悲観本が多く出ていた頃には、自分に元気を出す意味でも、日本の経済・技術の素晴らしさを強調した本を読んでいましたが、ふと、同じような本ばかり読んでいる自分はこれでいいのか自問し始めました。
そんな私にとって、久々に日本への警告を述べている本に出遭いました。何百兆円とも言われる預金が半分無くなっても日本では暴動は起きないと思いますが、仕事がなくなって失業率が50%になれば他国と同様に暴動が発生すると思います。
「楽観論からは未来は切り開けない」とこの本の著者が強調するように、このまま好転するような行動を起こさなければ未来にどんな生活が待っているかをこの本は書いてくれています。
先週の都知事選では、下馬評通り「外添氏」が当選しました。日本の経済を牽引している東京都知事の考え方は、日本の将来を形作る上で重要だと思います。大学教授、厚生労働大臣等の経験を活かして、まずは東京から若者が元気になるように変えていって欲しいものですね。
以下は気になったポイントです。
・JR北海道の経営が成り立っているのは、民営化の際に国から提供された「経営安定化基金」を保有しているから、この運用益は国の特別会計が負担(税金)している(p21)
・首都圏の人口は2015年頃をピークに減少に向かい、東京都に限っても2020年をピークに減少する、65歳の人口比率は2010年の2割から3割へアップ(p26)
・中国は2015年から人口オーナス(生産年齢人口の減少)となる、韓国は2016年からだが、2020年には欧州、日本よりも減少速度が速くなる(p33)
・未来予測は、人口が増えるか減るか、次に、教育レベルが高いか低いかでほとんど確実に未来が描けると考える(p34)
・シンガポール、インドがなぜ経済成長したのか、彼らが英語を話すから(p45)
・限界集落とは、65歳以上の高齢者が総人口の過半数を占める状態であり、都会の中にも存在する(p59)
・外国人比率が低いのは東京だけでなく、韓国や中国の都市も同様。(p85)
・サンフランシスコ、ニューヨークは、IT産業の興隆などによりドーナツ現象は収まった、都心は再開発されて中間層、富裕層が戻ってきた、そして税収も増えた。デトロイトはそうならなかった(p90)
・GM破綻のときは、年金債務や医療費負担が一掃されたが、デトロイトは自治体であり、年金・医療費を受給する権利が法律で手厚く保護されているので、制度手直しに時間がかかる(p91)
・アメリカといえば確定拠出型年金と思いがちだが、それは民間の話、公務員はまだ確定給付型が残っている(p91)
・アメリカの公務員たちは、人員削減や給与カットは受け入れてきたが、確定給付型年金と健康保険だけは守り続けてきた。しかしこれからは崩れるのは時間の問題(p93)
・日本の場合、地方債を発行して市場から資金を調達できるのは、25都道府県と17政令都市のみ、これ以外は「銀行等引受債」といって、指定地銀や地方金融機関から借り入れて財政をまかなっている(p99)
・財政力指数が0.4以下だと、その自治体は危ない、ここに高齢化率が30%を超えたらなんらかの手を打つべき(p101)
・サムスン、マイクロンテクノロジーは、PC用DRAMを破壊的に安価に大量生産した、一方、主要顧客がメインフレームメーカであった日本の半導体メーカは、相変わらず25年保証のDRAMを作り続けた、これがコスト競争に負けた原因(p120)
・現在の輸出統計は、資本財が中心とされているが、自動車産業が稼いだ外需は、内需として広く国内に行き渡っている(p124)
・中国山東省では、クルマ統計に現われてこない新たなカテゴリーの電動車が相当走っている、最高速度が50キロ以下なので、低速EVと呼ばれている、ランニングコストはガソリンクルマの10分の1(p133)
・第2回ブラック企業大賞2013では、ワタミ・東北大学・餃子王将・東急ハンズ・西濃運輸・ステーキのくいしんぼ・ベネッセ・クロスカンパニーがノミネートされ、ワタミが8月に大賞をとった(p137)
・資本主義はオランダ生まれだが、発展させたのはイギリス、だから資本主義は英語でできている、そのシステムは他の言語で学ぶと違うものになる。日本語でいくらビジネスしても、それは本来の資本主義でない(p160)
・一般人に英語は必要ないと言っているのは、英語ができる人、それは他の人が英語をやりだしたら、自分たちの優位性・希少価値が崩れるから(p166)
・日本国債が最強と言われているのは、本当の貸し手である「国民」「企業」が返済を請求できないところにある(p192)
・アメリカの倒産は世界中に巨大な損害を与えるが、日本の倒産はほとんどの債務が国内なので、超円安になって調整されて、国内問題で終わる(p201)
・今後、私たちの所得はほぼ完全に捕捉される、2013年に「マイナンバー法」「特定秘密保護法」が成立したから、2016.1からの運用開始(p205)
2014年2月16日作成
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英語の重要性を再認識しました。
前から英語不要論者の意見に違和感を感じていましたが
この本が彼らの本音を見事に暴いています。
「英語ができるという自分たちの優位性、希少価値が崩れてしまうからである。」
英語を勉強する意欲を掻き立ててくれる本です。
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シンガポールでは小学校から徹底した英語教育が行われている。国民の英語力は一気に増しグローバル化が始まった90年代になると、それが強みとなり、海外から多くの企業、多額の投資マネーが入ってくるようになった。東京証券取引所は、バブル崩壊以前は世界一の取引量でアジア経済の中心であったが、今やその地位はシンガポールに奪われている。英語を軽視し外国企業にまで日本語表記を義務付けていた。東証から外国企業が激減し、ようやく英語表記を認めるようになったが、時、既に遅し。英語ができなければ話にならないという時代に日本の学校では英語教育に十分な時間が充てられていない。日本人のほとんどが英語を話せない。購買力平価換算の一人当たりGDPは世界第24位。アジアの中ではシンガポール、ブルネイ、香港、台湾の後塵を拝している。日本は既に十分に貧しくその経済力は日ごと衰退している。全編悲観論で埋め尽くされているが、健全な悲観論こそ未来を開くものと信じたい。
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読書再開。再開一発目にしては刺激的。笑
高齢化社会の現実、それに伴い引き起こされる様々な問題。
イノベーションの虚構。技術革新がイノベーションではない。社会を変えられたか?すべて使われなければ意味がない。売れなければ意味がない。
国際化社会から取り残される日本。言葉が通じない人に仕事なんかない。
マイナンバーで成立する監視国家。
取り上げられているテーマはすべて報道されたり、書籍化されていたりで周知の事実。
ただ、本当の本当の現実社会で何が起こるかまで取り上げられることはあったのか?表向きの話だけで、突っ込んだ話になっていなかったのではないか。私はとても救いようのないぬるま湯に浸かっているのではないか。
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あえて悲観的な視点でこれからの日本を考えてみたという本。
資本主義において、経営者は生産性を追求するため、失業者が増える。すると、モノは安く作れるようになるが買う人がいなくなる。そして、経済が縮小する。
資本主義が抱えている自己矛盾。
・どんなビジネスも人口減には勝てない
・2015年から中国、韓国も日本とともに人口減、高齢化に進む
・日本人は英語ができない
・自治体破綻は「財政力指数」と「実質公債費比率」をチェックしろ
・量的緩和の出口戦略があるのか?
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金融緩和を否定しているようだけど、お金を刷らずに借金を返したら、どうなるんでしょうかね?
1.000兆ー1.000兆で、お金が無くなるんでない?
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日本の少子高齢化、産業の衰退、重税や国策といった視点から、日本の行く先を憂いた本である。
経済や社会情勢を当時叫ばれていた社会問題をネガティブに捉えたもので、読んでいてなかなか堪えるものもあるが、概ね事実であることから目を背けずに読むべきである。
私が読了した時点で約9年前の本であることから「予言の書」のつもりで読んでみたところ、当たり前のことが起きただけのもの(日本の英語教育レベルの低下や外国人の日本離れ等)が多数を締めているが、韓国経済の衰退や日本メーカーのEVシフト(私は政府の失策と考えているが)等、当時はあまり話題に上がっていない事象が現実となっており大変興味深い。
反対に、「経済予測は人口の増減と教育レベルで計れる。指標が多すぎると外れる。」という主張、クルーグマンの景気循環説への反論等、論拠の乏しいポイントも見受けられ、筆者のオリジナルの考えというよりか、誰かの言葉のツギハギを感じる部分もある。
総じて、日本の行く先を悲観的に論じること自体は賛同できるが、論理の飛躍や論拠の無い部分が目立つ。筆者には、「日本を手放しで褒め称える本は激減しましたよ」とお伝えしたい。
さて、本書が2030年、2050年に「予言の書」として手に取られるとき、どういった評価がされるのか、楽しみである。私もまた、拝読したいと思う。