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他国の予算制度と行政の事後検証が参考となる一冊
2021/10/13 15:34
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投稿者:もちお - この投稿者のレビュー一覧を見る
日本の財政と先進諸国の財政を比較し、予算制度がどのように成り立ち、検証されているかを比較する一冊。行政側に財政を維持する責任を課す制度や予算策定プロセスを含む、予算の執行やその後の管理状況を事後に検証する仕組みが他国では導入されていて、それが一部の国では機能しているという点は参考になる。日本だと、予算の査定、会計検査院による事後検証しかなく、実績の外部監査も事後的な行政の効果測定もないお寒い現実も明らかになる。
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著者は、幹部公務員の政治任用につき、「公務員の行動をさらに政治化させることになり、政官関係をさらに曖昧にさせる。政治任用の仕組みでは、公務員は政治家の家来であり分身である。政治任用は業績・能力主義とは究極的に相反する仕組みであり、専門性を低下させる仕組みである」と反対を表明しています。
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日本の借金について危機はある。しかし、大丈夫だという言説もありよく分からない。そんな自分に財政についてとっかかりを教示してくれた好著である。財政再建のためのメニューはほぼで揃っているんだな。しかし、日本は呆れるほどの落第生。国会議員に読ませたい。
・徴税権限のため、国は借金が容易
・支出削減か増税か
・財政再建に成功した国はトップダウンとボトムアップの順番、組み合わせがしっかりしている
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新書とは思えない内容の充実ぶりだった。資料、グラフと盛りだくさん。
他国との比較により、日本の予算の上限に歯止めがきかない理由が明らか。
日本が一度痛い目に合わないと、政治は変わらないのかなあと思う。
私は選挙では財政規律にも注目して選んでいるのだけれど、もっとはっきり行動し、周りも巻き込んでいかないといけないのだろうと感じた。
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なぜ、我が国の財政改革がうまくいかないのかという問題意識に基づいて書かれた本。この問題意識から議論をスタートさせ、財政と政治が密接に関連していることを指摘。続いて、我が国の財政をめぐる政治の議論をし、また、諸外国との比較をして、我が国の財政の問題点を指摘している。
政治と財政の問題が密着していることは、大いに首肯できることである。しかし、議論が余計な情報によってボヤけている印象も受けた。例えば公務員制度について述べられており、その点が残念だった。
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日本の財政につきどんなに楽観的な見通しを抱く人でも、本書の冒頭4頁の日本の公債依存度のグラフの不恰好さを見たら暗澹たる気持ちになるに違いない。まるで心室細動でも起こしたかのような禍々しい形状だ。しかし、どうやら現在の政治・行政の中枢を占める方たちにとってはそうは見えないようだ。先日も、診療報酬の本体部分の消費税分上乗せが報道された。歳入に連動して歳出を増やすのでは何のために消費税を引き上げるのか分からない。
著者は、まずバブル崩壊以降民主党政権崩壊までの日本の財政改革の試みと蹉跌を概観し、他先進国の制度改革と比較しながら、なぜ日本では財政改革が進まないのかを探る。そして、最大の問題は財政健全化のためのルールへのコミットメントが弱いことであるとし、公務員制度改革により、官僚の過度な政治への関与を押しとどめ、首相・内閣の中期計画に基づいたリーダーシップの強化を提言する。
実際に財務省に籍を置き、管内閣で参事官を務め、予算検討委員会に参画し挫折を味わった著者の公務員に対する視線は厳しいが、限られたリソースを官僚本来の企画立案業務に振り分けるべきとする主張は正しいのではないかと思えた。かなり堅苦しい内容だが、予算制度の概略の再確認もでき、かなり有用。
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日本という国の財政の現状と、改善するにはどうすべきかを、背景の説明も取り入れながら分かりやすく説明している良書。何度も繰り返される項目もあるが、くどくはなく、逆に頭に残りやすい印象の書き方で、極力優しい表現を意識しながら書かれたのであろう。
我々国民が、小さなことから疑問や問題意識を持つことが何よりも大事であると共に、複雑に入り組んだ日本の財政を一つずつ簡潔に説明しており、入門書としても良いと思われる。
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「ダイヤモンド」のWeb記事で、著者がインタビューされているものを読んだのがきっかけで、前々から関心を持っていたテーマだったので、著書の方も読んでみることにしました。
自分自身の体験からも、日本の財政再建がうまくいかないのは予算編成の方法にあり、予算編成の方法を変えることができないのは、個々の政治家や公務員の資質や意識の問題というよりも、根っこには日本の政治・行政システムの問題であることは強く感じていましたが、そのことを実に明快にまとめてくれていました。
また、とはいえこれを解きほぐすのは並大抵のことではなく、現実にそれが果たして可能なのかとも思っていましたが、オーストラリアやスウェーデンなど、実際に予算編成システムを抜本的に改革して財政再建を成功させた先進国の例があることを知り、非常に意を強くしました。
この本で、著者は解決のための具体的方策を提案してくれており、それは非常に納得のいくもので、これを実現することは、実現の意思さえあれば可能なように思います。現在までのところは、政治的状況がまだまだ政治的リーダーたちにその意思を持ってもらうには至っていないということのようで、歯がゆい状況ではありますが、日本に残されている時間はもうそれほど多くないように思いますので、1日も早く実現に舵を切ってもらいたいものだと強く感じました。
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日本の財政悪化の軌跡、財政赤字についての理論、先進各国の財政再建策などがよくまとまっており、そのうえで、財政責任法の制定など日本の財政再建に向けての処方箋を提示している。
財政再建に向けては、プレーヤーのコミットメントが重要という指摘が印象に残った。本書では地方財政についてはほとんど触れていないが、本書を読んで、地方自治体におけるプレーヤーの財政健全化へのコミットメントを確保するような仕組みとして、財政運営基本条例の制定が有効なのではないかという示唆を得ることができた。
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現代版の昭和史みたいな。読むごとに暗澹たる気持ちになる。拒否権プレイヤーが多すぎて決められずまずい方向にずるずると進んでいく。諸外国はなぜうまくいったのかもみっちり書かれておるし、それらの国々の中でうまく行った方は結構短い期間で立ち直ってることが数少ない救い。
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これは良書です。元財務官僚が財政について相当な問題意識を持って書いています。政治、官僚それぞれの問題を指摘したうえで、政治家のコミットとその前提となる国民のコンセンサス醸成の重要性と、テクノクラートとしての公務員の専門性向上が期待され、予算制度、財政責任法、公務員制度改革が提言されています。問題は
根深いですね。
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誰しもが思う日本の財政赤字について、元官僚&元民主党のブレーンの立場から論じた作品。
諸外国の財政赤字の歴史や状況についても書かれていて、財政赤字のことを概観できる。
逆にここまで書かれていて、なぜ民主党で財政改革が出来なかったのか、どうしたら切り込めるのかについて、今後は書いて欲しいなぁと思った。
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日本の財政問題といえば、増税の問題に単純化される傾向があるが、本書は、増税は必要としつつも、予算制度や公務員制度に焦点を当て論じている。
予算制度の問題として、マクロ面からは、
?赤字ルール/景気変動に対応して安定的に財政運営を行うためのメカニズムが欠如している。
?支出ルール/シーリングが一般会計当初予算を対象とするため当初予算偏重、一般会計偏重、単年度偏重の問題を生じさせている。
?中期財政フレーム/単なる見通しであり支出を拘束せず、ベースラインがない。
?透明性/透明性が低く、会計上の操作を抑止できない。
?意思決定システム/首相・財務大臣が政府の内外に存在する拒否権プレーヤーを制御できない。
ミクロ面では、予算を効率的・効果的に使うことを促す仕組みやインセンティブが乏しい
ことをあげている。
一方、財政再建に成功した国の特徴として、
?財政ルールを踏まえ、内閣主導のトップダウンで支出の総額、そして省庁別の支出の上限額などを複数年にわたり決定し、事実上固定する。
?こうした省庁ごとに設定された支出上限の枠のなかでの資源配分は省庁に裁量を与える。
?予算編成での査定では、細かい事前規制を行うのではなく、ペイアズユーゴー原則などのルールを導入し、予算制約のなかで資源の再配分に重点を置く。
?会計検査院や省庁自ら行う政策評価などを活用して、調達などの予算の執行面、プログラムの実施面で改善を行い、予算の効率化を図る。
?人口高齢化に対応して、より長期的視野を予算編成に取り入れる。
といった共通点をあげている。
この20年の財政悪化の政治プロセスの振り返りも参考になった。