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第二次大戦の強制収容所をモチーフに描く“パラレル・センソー・ワールド”。戦争から正義と悪をレッテルとして廃し、想像力を養分に残酷かつ甘美に花咲かす。
この行為自体に賛否両論があると思う。が、それでもアクセルを踏み込んだ今日マチコさんは気高いアーティストだ。という風に僕は納得した。これは事実に対する一つの解釈で、非難の対象ではない。でもこれは戦争の一側面ではないし、これはスタンダードになってはいけないと思う。
ただそれでも、綺麗だと思ったことは間違いなく本当で、こういう危うげな感性は貴いと思うな。
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もちろん史実のような収容所の場面もとても残酷。その残酷さを主人公・花子の無邪気さがより引き立てていて、見ていて苦しかった。
花子が無邪気に、物語の世界で主人公でいられたのは、姉という脇役がいたからなんですね。姉が収容所で最期を迎えると、花子はとうとう物語の世界から放り出される。花子の変わり様がとてもショック。
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「ゴミになっちゃた」が印象的だった。
少女たちを襲った、戦争のむごさと、儚さと、絶望さ。
あのね、
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「cocoon」に続く戦争もの。「アノネ、」のタイトルの通り「アンネの日記」に題材をとっているが、今作も架空の国が舞台であり主人公の名もアンネではなく花子。迫害される身でありながら、どこまでも牧歌的な花子。
そして、もう一人の主人公太郎は、かつて芸術家を目指しながら夢敗れ、今は花子たちの民族を収容所送りにする軍事国家の将校。ヒトラーがモデルであることは言うまでもない。
二人は角砂糖の部屋の中で日々を過ごす。互いに傷つけあいながら、互いに依存しあいながら。迫害されるユダヤ人の象徴たるアンネ=花子と、迫害するナチスの代表ヒトラー=太郎、本来ならば決して交わることない二人の関係。本来ならば禁忌と言ってもいいその組み合わせをあえて描き、そうしてできた作品は前作を圧倒的に超えて迫る。
「cocoon」もよく出来てはいたが、今作では一気に次のステージに上がったように思う。凡庸な戦争ものが多いなかで、これは傑作と言っていいんじゃないだろうか。
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夢を見るにも、周りの人々に支えられなければならない
それは子供だからしかたない
逆に言うと、大人たちは子供に夢を託すしかないのである
そのことにうすうす気づきはじめたふたりは
自由な世界におびえ、絶望するのだった
自分がなんでもできるというのは思い込みで
大人たちの助けを当然のように受け入れていた結果でしかない
その事実をどうしても受け入れられないのは
まあ、大人たちの劣等感の受け皿にされたという恨みにもよるだろう
しかし大人たちが自信を喪失した時代にあって
少年の自暴自棄な行動が、むしろ希望として賞賛されたとき
不自由ながらも安定した毎日にしがみつく少女は
白昼夢の世界からはじき出されてしまうのだった
そこではじめて他者への、心からの思いやりを持てるのだけど
そのとき彼女はすでに引き返せないところまで来てしまっていたというね
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今日マチ子さんのマンガは、読んでいると心がざわざわする。目の細かい紙やすりに触っているような。この本も。
前情報なしに読んだから、数ページ読んでから、ああ…と気づく。あちこちで語られる彼女と彼の世界が、ぐるんとひっくり返ったり捻れたり、また元に戻ったり。
どう受け止めたらいいんだろうという気持ちとともに、2人とも本来ただの人間で、私と何ら変わるところはない、というフラットで無残な気持ちにも。
あと、他者とのかかわりによって規定される自分、についても考えてしまった。
こんなに悩ましいマンガ、あんまり読んだことないかも。