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タカラトミーの「人生ゲーム」がアメリカン・ドリームの追体験だとすると、米国の黒人教師が小学4年生の教材として開発した「ワールド・ピース・ゲーム」は、夢破れた世界で生じる紛争や貧困を集合知を頼りに解決する盤上演習だ。本書は、ゲームによる児童の学びや成長を教師が記録したノンフィクション。
子供たちは4つの架空の国、2つの少数民族、国連などの国際機関の構成員としてゲームに参加。教師が仕組んだ数々の危機を克服し、いずれの国、民族の富も増やす。これが「あがり」。1ゲームに10コマの授業が充てられる。
女神のダイスで自然災害や国境紛争も頻発。児童は混乱のなかで決断し、時に手勢を戦死させ悩む。そんなとき教師は孫子「兵法」を参照し、大局的解決を促す。解決手段には軍事的威嚇も含まれる。首相に指名された児童は裁量権を持つが、独裁的な行動が目に余れば閣僚がクーデターを起こすこともできる。戦争と平和をめぐる駆け引きにのめり込む教室の息づかいが聞こえてきそうな筆致がいい。
圧巻は、ゲームに関心を持ったペンタゴンに児童が招かれ、オバマ政権のパネッタ国防長官と会談する場面。著者は名誉に浮かれることなく、「戦争の殿堂」が招待した意味も考察する。著者の人間的魅力が伝わる。伊藤真訳。
(KADOKAWA・1600円)
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そもそもワールドピースゲームとは具体的にどのようなものか?ワールドピースゲームは日本に導入されているんだろうか?日本に馴染みそうな内容なのか?
に興味があり読んでみることに。
1枚1.2メートル四方のアクリル板が縦に4層の構造。これが地球全体を表す。
一番下の層から、海中、陸地と海面、大気圏、宇宙空間。
4つの異なるタイプの国がある。
ゲームを始めるにあたり各国の首相を指名する。
国連や世銀、さらには株式市場や気象といった無作為に変動する要素を決める気象の神を決める。
指名された首相は外務、国防、財務大臣を指名する。
他にも数多くの役割があり、誰にどの役割を割り当てるかはまさに教育者の腕の見せどころ。
このゲームの一番の特徴は冒頭で50もの課題、問題が、与えられること。例えば
「ある貧しい国家が領有する辺鄙な孤島に絶滅危惧種が生息していて、その島には偶然にも未開拓の油田がある。この石油資源からの収入を得られなければ、飢饉を防ぐことができない。そこで、この国は石油の新たな調達先を確保したいと熱望している経済的に豊かな隣国に油田の採掘権を売却したい。しかし油田開発は絶滅危惧種を危機にさらすからと、生態系保護に強い信念を抱いている第三国が反対している。」
こんなのが他に49個ある。
1ゲームデイとして各国に順番が回ってくるまでに各国の中で検討や他との交渉を行い、自国の番が来た時に首相は決めた事を(いくつでも)宣言する。
1回2時間程度で8〜10タームを1ゲームとし、4国全ての資産がゲーム開始時点より増えていること。がゲームの勝利条件。
50もの難題を突きつけ、一旦、途方に暮れさせる。無力感を感じさせる。そこがスタート。
それにしても日本の4年生に出来るのかな?
日本なら中学1年生くらいが妥当な様な気もするが。
(本当は電車の中でゲームばかりやってるサラリーマンにまっさきにやらせたいけどね)
成果の評価が難しいので、文部省が推奨するとは思えないが、自分で考え、周りと議論・交渉してそして決断していくという問題解決のアプローチを教えていく事が、今の教育現場にとってまさに喫緊の課題だと思う。
日本で普及活動しているのであれば、関わってみたい。調べてみよう。
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戦争・民族問題・地球温暖化・エネルギー不足等の問題を抱える「地球」を4つの国の首相・閣僚、少数民族、世界銀行や国連、武器商人、破壊工作員、気象や株式市場など無作為に変動する現象を司る気象の神の役割を担った小学4年生がシミュレーションするボードゲームの話。(これまで自身ですら認識していなかった)創造力と集合知を発揮して解決していく様を開発者であり教師の目線で振り返る。大人でも解決できなさそうな難問を前に打ちひしがれる子供。ついつい口を出したくなるけれどもそこをぐっと我慢すると思いもよらない案が出てくるのだ。「ワールドピースゲーム」は知識を伝える教育では学べない貴重な体験が子供たちの才能を見出し伸ばしてくれる素晴らしいツールだ。
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アメリカらしいというか。TED受けしやすい内容
だと思いました。小学生が世界平和に対して真剣に
対峙してあらゆる問題を解決していく。という
あまりにお手軽な内容のような部分もあります。
所謂日本でいうと、なんでもかんでも大学生を
読んできて、地域のコミュニティーを作って
というやつとあまりかわらない部分も感じます。
でも。一方では、教育の素晴らしさ。大切さ。
教育の本質。は非常によく語られている
本だと思います。今個人的に感じているのは
仕事上の閉塞感について解消するポイントは教育だと
思っているこのごろです。
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この本ほど、読み手が試される本も無いと思う。浅く読めば教育実践ストーリー。だがその深さは読み手次第でどこまでも深くなる。私は、今まで読んだ本の中でも相当上位に来ると思った。「ワールド・ピース・ゲーム」を9歳の子ども達と繰り返し、現実の地球さながらの難題や争いが起こり、全体の平和と繁栄を目標に、苦悩や歓喜が巻き起こる。それを見ている著者・教師の目を通して語られる、子ども達の洞察・行動・選択と彼の思い。
私の場合は読みながら、宮沢賢治は出てくるし、孫子の兵法の下りでは黒田官兵衛、かつてのセミナーの数々のゲーム、世界の首相たち、平和のために闘ってきたリーダーや名も無き人たち・・・思いが広がりすぎて、実にエキサイティングな読書だった。決して単純に世界平和のために頑張りましょう式の公式解法ではなく、答えのみつからない状況・人間の暗い面をも組み込んだゲームだからこそ、学びの大きいものに設計されている。
いつか、やってみたいな。
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外国の教育実践の取り組みを読んだのは初めて。ワールドピースゲームという教材の話はもちろんの事、それを取り巻く子ども達の様子や心の動きが盛り込まれていて、読み物としても面白かった。
それにしても子ども達のレベルが往々にして高い。
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自分もゲームの一員になったかのように、ハラハラして時に涙しながら読みました。
小学4年生の子供たちが先生の作ったワールドピースゲームという世界平和を達成するボードゲームに挑むノンフィクションです。
子供たちは4つの架空の国、2つの少数民族、国連の首相、国務長官、外相、国務長官、財務大臣となりゲームに参加。その他に自然災害や紛争を左右する女神、武器商人、破壊工作員もいます。教師が与える50件の危機を克服し全ての国の資産を増やし平和であることがゴールです。独裁者がいたり、クーデターが起こったり、裏取引や駆け引きといった様々なドラマがあり、子供たちの成長と思いやりの心に胸が打たれました。
最後に生徒たちとペンタゴンを訪れるのですが、それも感動的でした。
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分厚くて、結構かたい話かとおもったら、中身は、先生による実体験をまとめられたものでした。これと合わせて、TEDのスピーチをYoutubeで見ると面白いです。
まず最初に、エンプティスペース、何もないところで、自分に向き合い、戦略を立てる空間の大切さに驚き、あとは、子どもたちの発想の豊かさなどに感心しました。そして、世界平和に向けて、子どもたちにゲームを通じて、孫子の兵法のエッセンスも伝えていらっしゃるというジョンハンター先生に脱帽です!
ドキュメンタリー映画にもなった話題の、35年以上の実績が詰まった本です。
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仮想世界に科された、政治的、軍事的、民族的、環境問題的な各種の問題を、各国の首相、大臣に任命された子どもたちが、交渉によって解決していくワールド・ピース・ゲーム。大人でも一度やってみたいです。
解決できないように思える重大な問題に直面した時、あえて立ち止まり、時間に追われない「何もない空間」に自分を置き、じっくり考えることが重要。これは共感できます。
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TEDのプレゼンテーションが非常に良かったので購入。
敢えて「エンプティ・スペース」を設けて、答えのない問題を考えさせるという著者の方針が印象的であった。
戦争に関しても、戦争は絶対だめであるという考えを押し付けるだけよりも、戦争を選択肢のひとつとして捉えた上で何故起こしてはならないのかということを理解した方が本当の意味での平和につながるのだろうと思う。
自分も請うような教育を受けてみたかったし、是非とも一度ワールド・ピースゲームをやってみたい。
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世界平和のための想像力
これはアメリカ黒人教師のライフワークの記録です。彼が30年以上続けているワークショップがある。それは「ワールド・ピース・ゲーム」。ゲームの中で子供達は4つの国の首相や大臣、国連事務総長や世界銀行総裁となり、世界に迫る50の課題を解き、すべての国の経済を成長させ、平和に導かなければ、ゲームに勝利しない。他に2つの少数民族に武器商人、秘密の破壊工作員、はたまた気象の女神(気象現象や戦争の勝敗などで賽をふる)までいて、さながら国際政治の縮図のようだ。課題も環境破壊、貧困、民族紛争に原発問題・・・。すべての問題が複数の国に跨がっていて、問題を見ただけで悲鳴をあげそうだ。しかし、今まですべての子供達が最後には勝利を勝ち取っている。そのプロセスは一様ではなく、またピンチの連続だ。自分を過信して、世界を自分の力で掌握できると思い、失敗する子供もいる。その挫折で自分を発見し仲間に再び受け入れられる。普段はもの静かで行動も遅い子が、ある時ゲームの状況のすべてを掌握し、一気に解決策を提示することもある。子供達が最後に手に入れるのは集団的英知だという。最初はバラバラだったクラスメイト達が課題に取り組むプロセスで、心を一つにして解決策を導きだしていく。だれも答えを知らない課題に取り組み自分たちの解をみつけ出す。そこには世界平和を生み出す想像力がある。しかも彼らは小学4年生だ。考案者のジョン・ハンターが何よりも大切にするのは、エンプティスペースだ。その目的は「まだ見えていないもののために場所を空けておいてやること、可能性や潜在能力が生まれる余地を与えるため」である。「充実と空隙、決まった枠組みと自由さ、知識と創造性など」の両方が必要であるという。このエンプティスペースこそが子供達を集団的英知へと誘って行く。日本でもこのような教育は実践できないのだろうか?「ワールド・ピース・ゲーム」は、何よりもジョン・ハンターその人の英知によっているところが大きいのであるが、そう願わずにはいられない。
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〈『パブロ!君は見抜いたんだね!』と、私は我を忘れて叫んでいた。
『ハンター先生、ボクには全部見えてます』と彼は答えた〉
子どもたちが首相や大臣や武器商人になり、世界を平和にするため外交する–––
そんなボードゲームを授業に取り入れた先生の話。
生徒たちがぶつかる問題は、実際に世界が直面しているものばかり。
子どもたちがゲームの中で成長し、思いやりや想像力を駆使して世界を平和にする姿に感動します。
教育、子育てに関心がある方へ。
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BISから。TEDも映画もまだ観ていない。
ワールドピースゲームという、現実世界を模した複数の仮想国の首脳を務める子供達がそれぞれに抱えた課題を解決しつつ最終的に全世界の平和を目指すゲームを通じて、通常のテストに合格するための授業で学べない様々なことを生徒だけでなく教師もまた学んでいく。
面白い。確かに面白いのだけど、TRPGのプレイログのような楽しみ方を期待していた私としては、その欲求が満たされなかったことに消化不良感が残る。子供達の一連のプレイを眺めることは出来ず、複数のプレイのうちから様々なシーンを抜粋してそこから子供達が学んだことや教育論が説明される。
教育論をぶつのは構わない。が、ゲームの複雑さ故かも知れぬが何度も同じような説明が挟まれたり、あまりにもその比重が大きかったりして全体のテンポを損ねている。語り方によってはもう少し紙幅を減らすことも出来たろうし、子供達のプレイ自体にそちらを割くことも出来たろう。そこは残念である。
教育者でなくそれになるつもりもない人間には多少くどいが、教育者並びにそれに準ずる人たちには是非勧めたい一冊。
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ワールドピースゲームについてのノンフィクション。
現実のような複雑に絡み合った模擬世界で小学4年生たちが様々な問題を解決していく様子を描く。
ワールドピースゲームやその進め方は興味深いが、文章構成がまどろっこしく読み難い。新書サイズで十分。
自己満足のような文章が多いのも気になる。もっと簡潔にまとめられるはず。ノンフィクションは感情が多く語られるためかもしれないが、私には合わない。
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子供たちにゲーム形式で政治のシミュレーションをさせ、
世界が抱える問題について考えてもらう「ワールド・ピース・ゲーム」の実施記録。
「ワールド・ピース・ゲーム」では子供たちは4つの国の首相や閣僚、
世界銀行や武器商人、破壊工作員や少数民族の長等の役割を与えられ、
既定の日数以内に、設定された複数の”世界の危機”を全て解決した上で、
4か国の全ての総資産を開始時より増やすことを求められる。
”世界の危機”は、「貧しい国家が所有する島に未開拓の油田が発見されるが、生態系保護を信念とする国家から開発の反対を受けている」等複雑かつ複数の要因を解決しないいけない問題ばかり。
子供たちは協力したり、騙したり、開発したり、協定を結んだり、戦争したり、
融資を頼んだりしながら問題の解決に当たる。
ゲームの規則がいまいちはっきりしないため、時々首を傾げるような点もあるものの
「争いを好む首相を連続クーデターで追い落とす」だとか
「武器商人がエネルギー産業に参入し、国家の資源問題を解決する」だとか
「無計画に隣国の石油地帯を占領したように見えた少女の本当の意図」だとか
ゲームの場面はエキサイティングで面白い。
その一方で多々挟まれる著者の教育哲学の部分になると、
読み物としては冗長かつ観念的になってしまうのが残念。