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なんだよこの救いようのない結末は…いやそんなはずはない、羽化出来なかった蝶は死なない、潰れた羽を拡げて飛び立つんだ。走れほづみ、ハンチングのもとへと走れ、そして新しい世界を切り開け!… 一気読みだった。遠田潤子さん、全く知らない作家だったのだがその圧倒的な筆力には脱帽。女性が描いたというのが全く信じられないほどの骨太で男臭いハードボイルドバイオレンスには感動を通り越して呆れた。理屈抜きに守らなければならぬもの、そして救わなければならぬもの、その答えを見つけるが如くほづみは対岸に跳んだ…美しいグランジュテで
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絶望の、一歩手前。それでも、生きていく。
大阪の港町で生きる、一人の男と、それを見つめるいたいけな少女。
消せない過去を、生きる力に変えていけるか。
日本ファンタジーノベル大賞受賞の注目作家が人間の絆を描く感動作!
大阪の港町で居酒屋を経営する藤太の元へ、中学の同級生・秋雄が少女ほづみを連れてきた。奇妙な共同生活の中で次第に心を通わせる二人だったが、藤太には、ほづみの母親・いづみに関する二十五年前の陰惨な記憶があった……。
この作品、前評判が高くタイトルもすごく気になるものだから読んでみたが……。
ラスト、救いがあるのか、よくわからない作品だった。
読ませるとは思うのだけれど、どうも会話に作られている印象が残った。
ミステリ :☆☆☆
ストーリー :☆☆☆☆
人物 :☆☆☆
文章 :☆☆☆
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男の醜さ、傲慢さ、幼さが際立つ。同性として目を覆いたくなる所も多いが、共感できてしまう点も。きっと女性から見ると理解し難い愚かな生き物に写るんだろうな。物語はとても面白かった。
あらすじ(背表紙より)
大阪の港町で居酒屋を経営する藤太の元へ、中学の同級生・秋雄が少女ほづみを連れてきた。奇妙な共同生活の中で次第に心を通わせる二人だったが、藤太には、ほづみの母親・いづみに関する二十五年前の陰惨な記憶があった。少女の来訪をきっかけに、過去と現在の哀しい「真実」が明らかにされていく―。絶望と希望の間で懸命に生きる人間を描く、感動の群像劇。
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序盤、疑似父娘の描写を読んでいる時間が、本作において一番幸せな時間でした。ほづみの存在が藤太とその周囲を明るく変えていく様子は心地よくて、仕事の疲れも癒されるような(笑)感覚すらありました。
それだけに中盤からの暗い過去話は読んでいて本当に辛く、気分もページをめくる手も重くて仕方がありませんでした。
以前読んだ「雪の鉄樹」と同じく、主人公達がロクな大人に恵まれずに辛い思いをする様子は、個人的に一番心が痛くなる話。藤太たちの親はもちろん、デリカシーのない教師なども最低すぎて憤りを禁じ得ないです。
後半、そんな状況でも藤太とほづみが幸せになってくれることを祈って読んでいました。しかし、片羽がしわくちゃのアゲハチョウのエピソードが藤太の人生を暗示しているような気がして、ずっと不安がつきまといます。
案の定、最後はいづみや秋雄のところに行ってしまったのかな、と思わされる描写で終劇。重厚な内容でさすがプロな作家の仕事だと感じ入りながらも、結末やほづみのこの先を思うと歯痒さがタップリ残り、微妙な読了感が残った次第です。
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201703/初読だったが、かなり!好み!強引な展開はあるけど、気にさせない引き込む力がすごかった。他の作品もチェックせねば。
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雪の鉄樹でぶちのめされて、是非他の作品もと入手した本作。いやいやこれも素晴らしい。贖罪をテーマに長編を紡げば、圧倒的辣腕が発揮される作家さんですね。ジャンル分けするとミステリになるのかもしらんけど、そっちの要素はむしろおまけみたいな感じ。行き場のないままに交錯する熱い想いたちが、物凄い高揚感をもたらしてくれます。あまりにも切ないクライマックスにも胸を打たれつつ、深い余韻を残して物語は幕を閉じるのでした。いや〜、良かった。
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内容(「BOOK」データベースより)
大阪の港町で居酒屋を経営する藤太の元へ、中学の同級生・秋雄が少女ほづみを連れてきた。奇妙な共同生活の中で次第に心を通わせる二人だったが、藤太には、ほづみの母親・いづみに関する二十五年前の陰惨な記憶があった。少女の来訪をきっかけに、過去と現在の哀しい「真実」が明らかにされていく―。絶望と希望の間で懸命に生きる人間を描く、感動の群像劇。
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何とも言えず苦しくなる作品。
残酷な運命の中でも、懸命に生きれば新しい世界に繋がって欲しかったけれど……。
最後は希望に繋がったと信じたい。
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居酒屋を営む藤太の元に、25年振りに中学の同級生だった秋雄が10歳のほづみを連れて現れる。ほづみは、藤太が忘れられない同級生だったいずみの娘だった。秋雄はほづみを置いていなくなり、そして秋雄のマンションに火がつけられ…。前半はミステリー的な話、藤太とほづみとが心を通わせるなど次々と頁を捲っていく展開。藤太と秋雄といずみたちのどうしようもない親たち。こんな親がいるか!と思いながらも、怒りを持って読み進む。ただ後半の展開、設定がやや強引でちょっとこじ付け的な話になってしまった。前半の展開が良かっただけに、ちょっと残念でした。
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新作『冬雷』のインタビューで遠田潤子はこう答えている
-成功した人間よりも、間違って失敗した人間を描いていきたいです。たとえ惨めで愚かな人生だとしても、否定せずに丁寧にすくい上げて描きたい。安易な救済は失礼だと思えるくらいに真摯に向かい合って、なおかつ面白い物語を書きたいと思います。
著者の書く作品には『正しい人』はでてこない。
負け続け、地べたを這いつくばって下を向いている人しか出てこない。
その人に前向けよ、顔あげろよというのは容易ではないし、
果たしてそれは彼らのためになるのだろうか、お節介ではないのだろうか。
蝶になることは簡単だ。
ただ羽ばたき方は誰も教えてくれない。
(抽象的な推薦文になってしまったが、彼女の作品はストーリーを追うことにあまり意味がない気がしてしまって、このような形がいいのではないかと)
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藤太とほづみで居酒屋を営んでいく暮らし部分が危なっかしくも微笑ましい。ガラの悪い居酒屋の客たちも ほんとはみんな人生の切なさも哀しさも知っているココロ温かい人たち。
藤太たちのそれぞれの親や 麻雀仲間の坊主。
卑劣な消防士とその息子のストーカー。
ほんとにうんざり。吐きそうになる。
衝撃の連続だったけど 一番の衝撃は 秋雄の告白かも。愛してた分 深く傷ついて 怒りが衝動的な結果に結びついたのかなぁ。
いづみはたくさんのひどい目にあったけど 藤太にも秋雄にも深く長く愛され続けた。読むまで気がつかなかったけど 弁護士が言うようにある意味シアワセなのかも。
藤太を無くしたほづみのこれからを思うと明るい気持ちでは終われない。せめて ほづみを心から大切に思ってくれる人と出会ってほしい。
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雪の鉄樹に続き、遠田作品2作目。
前作に負けず劣らず衝撃的な作品。
主人公の不幸な生い立ちは前作同様、読んでいて本当に胸が痛くなる。
作中に出てくる新世界よりの『家路』がひたすら頭の中で流れて、より切なさが増す。
小説の中の世界だと言えど、藤太とほづみの幸せを願わずにはいられなかった。
他の方のレビューにも書かれていましたが、東野圭吾の白夜行、天童荒太の永遠の仔を彷彿とさせられました。
ちょっと時間を置いてから、他の作品も読んでみようと思う。
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2017年に読んだ本でものすごく好きだった本を3冊選ぶとしたら、そのうちの1冊がこの著者の『雪の鉄樹』でした。これもきっと好きにちがいないと手に取りました。
大阪のとある町、殺風景な居酒屋を営む主人公・藤太。そんな愛想の悪い独身の四十路男が、25年ぶりに訪ねてきた友人・秋雄から小学生の女の子を押しつけられる。これだけ聞けばコメディ映画にありそうな話。けれどもそんな話とは対極にありそうな、とてつもなく重い物語。
藤太と秋雄、そして少女・ほずみの母親いずみの3人とも、ろくでなしの親のもとに生まれました。3人をめぐる恐ろしい過去。『追憶』にも似た話ながら、こちらのほうが絶望的。絶望のなか、このうえなくいい子のほづみとガラの悪い常連客にしばしば泣かされます。
生粋の大阪人のくせに標準語を貫こうとする藤太。その理由はもっともだと思えるもの。だから最後がたまらない。この著者は私のツボ。
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大阪市港区安治川の河口近くにある薄汚れた暖簾が掛けられた居酒屋「まつ」。その店の扉が開いたところから物語が始まる。「まつ」の主人はもう長い間、「薄汚い川底の泥の中で亀のように首をすくめて生きてきた」藤太。戸口に現れたのは小学生の少女を連れた中学の同級生秋雄。
25年ぶりの幼馴染との思わぬ再会が藤太を泥から引きずり出し、過去の記憶が痛みと共に藤太をからめとる。
遠田潤子作品らしいノンストップの息をもつかせぬ展開に呼吸が早くなり、毛穴も開く興奮状態。
藤太、秋雄、いづみの3人は、酒とギャンブルと暴力に溺れた最低の親たちの犠牲となり、過酷な毎日を強いられている。それだけに強い絆で結ばれた彼らが互いのためにとった行動、つきとおした嘘が哀しい。
物語のモチーフとして繰り返し登場するのが、家族全員を強制収容所で殺されたチェコの指揮者アンチェルによるドボルザークの「新世界より」の演奏。第1楽章の哀愁、第2楽章の郷愁、第4楽章の衝動、すべてが物語とリンクする。そして、どん底の状態にありながら音楽を聴いて「きれいだね」といえるいずみの強さ。
自分たちが置かれた理不尽な境遇をアンチェルに重ね合わせ、それでも美しい音楽を作り出していることに希望を見出す彼らの姿。
過去に起こった目を背けたくなるような事実が明らかになるにつれ、圧倒的な質量と熱量にもう読む手を止めることはできない。
痛みと、情けなさと、やるせなさで心をかきむしられながら、やっとの思いで最後まで読み通し、ここにかすかな光があるとすれば、人生を棄て、泥の中で生きてきた藤太がいづみの娘、ほづみのためにそれでも生きていこうと前向きな心を取り戻したことと少女が持ち続けた少年への純愛だけなんだろうな・・・
あ~これぞ遠田作品。「雪の鉄樹」以来の感動!読みごたえなんていう言葉では表わせない、のめり込み、身を削られるような物語にしびれました。
でも、この本を読むために購入したアンチェルの「新世界より」を聴くたびに、これからもこの作品を思い出して苦しくなるんだろうな~。
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内容紹介
「母に捨てられ、父に殴られ、勉強もできず、リコーダーも吹けない。そんな俺でも、いつかなにかができるのだろうか」
劣悪の環境から抜け出すため、罪無き少年は恐るべき凶行に及んだ。
25年後の夜。大人になった彼に訪問者が。
それは、救いか? 悪夢の再来か?
河口近く、殺風景な街の掃き溜めの居酒屋「まつ」の主人、藤太。客との会話すら拒み、何の希望もなく生きてきた。
ある夏の夜、幼馴染みの小学生の娘が突然現れた。二人のぎこちない同居生活は彼の心をほぐしてゆく。
しかしそれは、凄惨な半生を送った藤太すら知らなかった、哀しくもおぞましい過去が甦る序章だった。
今、藤太に何ができるのか?
希望は、取り戻せるか?
慟哭のミステリーという名にふさわしい陰鬱な展開。どぶの中で咲いたような一瞬の暖かな光のような思い出。その思い出に絡みつくような、薄汚れて心に食い込んでくる蔦のような記憶。今現在進行形で輝くたった一つの希望である少女。
こんなに陰鬱で有りながらほんのりと感じる美しさに手を引かれて、読むごとに胸に突き刺さる痛みを我慢して読み進めたことだろうと思います。どうしてこんな親から生まれたんだと心の奥底から叫ぶ子供たち。大人になってもその呪縛から逃れることが出来ず闇へ闇へと引きずり込まれていく姿が胸に刺さります。
この話に出てくる彼らの親のくずっぷりが物凄くとにかく比類なき屑。マーダーライセンスを持っていたら全員皆殺しにしてやりたいところです。これを女性が書いたというのだからびっくりです(女性蔑視ではありません)
悲しみのマドンナであるいずみと、彼女の忘れ形見であるほずみ。彼女たちの人生が悲しい符合をしないように祈るばかりです。
僕は男が女を力ずくでどうにかする描写が大嫌いで読むたびに怒髪天を衝くという状態になります。なので、この本読んでいる時にも主人公の藤太と一緒に怒っておりました。藤太が酒におぼれて人生踏み外し始めた時にほずみが彼に与えた光。それによって変わっていく姿を見たいがために読んだようなものでした。
所で最近読んだ柚月裕子さんといい、女性とは思えないぶっとい背骨を持った作家さんが出てきましたね。読む本がどんどん増えてうれしい限りです。暗そうだけど。