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昨年のリーマンショック以来、新卒の雇用状態も悪くなってきていますが、それ以前の大卒新卒は多くの人が正社員になれていたというニュースをきいたがあります。この本で取り扱っているのは、それ以前に卒業した世代(ロストジェネレーション)がいまだに正社員になれずに年を重ねている現状をレポートしたものです。
就職する時代の景気不景気によって、一生が左右されてしまうという社会が許されて良いのでしょうか。この悪影響は時間が経過するほどに大きくなっていくと思いました。
最後の章で紹介されていた、東京エリアにおいて、月収15万円以下で暮らせる場所が作られている(p215)というのは驚いたのと共に、何か不気味なものを感じました。
以下は気になったポイントです。
・戦後最長となる経済停滞期に、雇用の過剰を解消するために企業が最も力を要れたのは、新卒採用の絞込みであった(p20)
・非正社員化の恩恵を受けているのは企業だけではなく、消費者も、安さや便利さを享受している(p25)
・現在の工場労働のありかたは、高度経済成長時代とは異なり、従業員を常雇いして製造技術を学ばせるのではなく、派遣業者を利用して部品のように交換可能な低賃金労働者を雇う、この方法でなければ中国の国々とコスト競争できないと考えている(p42)
・必要なときに人員を安価にそろえたいという企業側の論理と、当座の現金を手にしたい働き手が結びつき、携帯電話というツールがそれを後押しした(p49)
・厚生年金に40年間加入した月収35万円の正社員は保険料を差し引いて12万円が残る、一般的な生涯賃金(夫のみ労働:23-60歳、専業主婦のケース)は、2.7億円、フリーター夫婦:1.8億円、正社員夫婦:5.3億円、となる(p158)
・経営者は45歳以上の給料が高すぎることはわかっているが変えることができない、その一因として、年齢とともに給料が上がる年功序列の職能給であり、仕事内容による職務給でないため(p163)
・ロストジェネレーション世代は、貧富の格差が拡大する戦後初の世代、この世代は雇用・労働面で非常に損をしている反面、親が経済的に豊かということに特徴あり(p173)
・韓国の短大以上への進学率は2006年で82%、日本の52%と比較して凄い差である(p180)
・高円寺のエリアに、月収15万円以下で暮らせる場所を作り上げてしまった人たちがいる(p215)
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結局決めつける事で抽象化できるんだろうけど、
私はまさにロスジェネ世代ですが、そんなこと、考えたことがありません。
影の部分として非正規雇用な人が多い世代なんだよね、なんて言われても結局、で?って思ってしまう。
社会も悪くない。
人間も悪くない。
結局、自分じゃないですか。個が強ければこの本の後半に載っているような、人生を謳歌する人だって生まれるわけです。
だから勝手にこの世代は冷めやすいよねとか、決めないで欲しい。
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はやりの格差社会論を世代を軸にした切り口でみせようという試みだが、成功・失敗が相半ばしているように思う。
成功しているところとしては、従来の格差社会論にありがちな中流・下流や正社員・非正規といった不毛な階級間闘争にいたずらに陥ることを回避できている点。また就職氷河期にたまたま遭遇してしまった、という誰の目にも明らかな事実を議論の起点とすることで、「格差は本当にあるのか」等という冗長な議論をかすませることができている点。
失敗していると感じるのは、「IT起業家」や「脱官僚エリート」から所謂ワーキングプア層まで満遍なく取り上げることで逆に「ロスト・ジェネレーション」という世代の核がぼやけてしまっている点。一部の起業家や社会的企業・NPOなどに関わる人たちをモデルに、「失われた十年に翻弄されることで国家や社会等に依存することなく、自分自身のみを頼みとして生きることを選択した世代」などとする安直な「括り」はひたすらうそ臭く感じてしまう。様々な日本社会の変動はあるにせよ、「ロスト・ジェネレーション」の中でも最大のボリュームゾーンはいまだ所謂「正社員」層であることに違いは無いのだ。
世代論としてはそうしたポジティブな価値を打ち出したい気持ちはわかるが、いかにも朝日のエリート記者が優等生的にまとめた「作文」という印象が強く、どうにも実感が沸かないのである。
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日本全体が少しおかしくなっている気がするが、どこに原因があるのだろうか。
少し気分が暗くなってしまう。
ある年代をグルーピングして名前をつけるのが流行っている様だが、果たしてそのことに意味があるのだろうか。
何やら「後付け」の理論という気がしないでもない。
色々と考えさせられる。