藤子不二雄論としては秀逸だが
2014/04/20 19:37
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投稿者:愚犬転助 - この投稿者のレビュー一覧を見る
「ドラえもん」周辺のごった煮状の考察本だ。藤子不二雄論としては興味深く読めるが、フェミニズムや政治の章立てとなると、やや辛い。とくに、著者は政治に主張が強すぎるせいか、その主張がすけて見え、お話が滑ってしまうところがある。政治にふれなければスッキリするのに、このあたりは性なのだろう。
とはいえ、これまでの藤子不二雄論の中では、もっともおもしろいと思う。「ドラえもん」創造当時、藤子不二雄が過去の人になりつつあったことは初めて知った。ドラえもんが当初、それほどの存在ではなく、1980年以後に無視できないキャラクターになったという構造分析も、新味があった。
なによりも、不思議なのは藤子不二雄の漫画家としての立ち位置である。著者も指摘しているとおり、藤子の絵は、子供でさえもが「ガキっぽく」感じる。ふつうならば、時代に追いつけず、「あの漫画家はいま」扱いになってしまうところだ。その社会センスも、古い。ところが、「ドラえもん」人気も手伝い、藤子はギリギリのところで生き残った。鳥山明や水木しげると肩を並べる日本漫画世界の顔とさえいえるのだが、勝因はわからない。著者も指摘しているように、小学生相手に勝負しつづけたところも大きいだろう。ということは、小学生雑誌の力、恐るべしということだ。
それにしても、藤子不二雄の基本世界は落語であるとの著者の指摘には納得した。寡黙な印象の強い藤子だが、どうして寡黙な奴は、何を考えているかわからないところがある典型だ。
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「ドラえもん」を考察するにあたって、本編だけでなくて劇場版のシリーズや、「のび太の結婚前夜」みたいなビデオ版の中編アニメの話まで含めての考察だったので、その辺に関しては信頼性が高いと思います。
学年誌掲載の関係で、第一話が数種類あるとか、最終回も数種類あるとかっていうのはこの本で初めて知りました。
ただ・・・ドラえもんを通して社会を見るという視点はちょっと失敗だったのではないかなと思います。
特にドラえもんとスクールカーストの関係についてやジャイアン・スネ夫は民主党政権?っていうのは首をかしげてしまう。
スクールカーストの上位に来る人たちが皆、「みんなに好かれる人気者」とは言い難いという事実、この著者は知らないんじゃないの?
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よくよく考えれば、疑問だらけの「ドラえもん」。
マニア向けではなく、一般程度のドラえもん認識で楽しめる内容。
日常版と劇場版から、その行動原理と役割を考察。
萌えられないどころか、むしろ嫌われる傾向にある「しずかちゃん」。
フェミニズム批判とスクールカーストと時代背景から検証する。
全6章のうち、最も興味深いのは作品のSF性を追求した章。
基本は、落語的文体を持つループ世界の爆笑ギャグ漫画。
だが、てんとう虫コミックでは気付かされない作品の構造が、大全集では明らかにされた。
実は、「最終回」以上に数のある「第一回」とパラレルワールド。
その構造は、普通に読んでは理解に及ばない仕組みになっていたのだ。
そこは、この本ではなく大全集を読んで理解したいところ。
「ドラえもん」を教訓書としてもてはやす本は、誤りだとする著者の姿勢も一読の価値有り。
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タイトルに引かれて、思わず買ってしまった一冊。
1.しずかちゃんについての考察、2.ドラえもん世代、3.のび太、しずかちゃん、ジャイアン、スネ夫のスクールカーストについて、4.パラレルワールドなドラえもんの歴史について。
1-3については、楽しく読めました。表題にもあったしずかちゃんがのび太と結婚した理由は、詳しくは分かりませんが、しずかちゃんがクラスのマドンナは、良いとして、戦闘少女と言うのは、笑ってしまいました。
確かに、それに加えて、意見もきちんと言うし、性格も良い、しずかちゃんが、何のとりえもないのび太と結婚したと言うのは、分かりかねるかも。
3に関して、のび太、スネ夫、ジャイアンがスクールの低いカーストと言うのも、そういう見方もあるのだと、唸ってしまいました。暴力のジャイアン、嘘つきのスネ夫が組んでのび太をいじめるのは、民主主義故に当然のこととか。これは、読んでみないと分からない。ドラえもん、のび太の関係をアメリカ、日本に例えるのも面白い。
世界は随所、スネ夫仕様なのだ。「悪いなのび太、ころ三人用なんだ」の言葉、椅子とりゲームより、質が悪いかも。固定化された社会みたいで。
突っ込みだすと、きりがないですが、最後に落ちがつくいつもの楽しいドラえもんもありですが、ちょっと大人向けのドラえもんも楽しかったです。
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読み物としては面白い。
著者の興味がある点についてはしっかり研究している。
しかし、その他の点については、原作を読んでいるとは思うが、原作に描かれていることと異なる内容の記載が散見されるのが残念。
過去に出版された「『ドラえもん』の秘密」もおすすめ。
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ドラえもんと現代社会のあれやこれやと結びつけようとしているが、まあ、読む前からなんとなく予想できていた通り、だいぶムリがありあり。ジャイスネ=民主党論なんて、読者からのなんだってー!を期待して書いてるとしか思えない。もっとも、そんな所がちょっと面白かったりはする。
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ドラえもんと現在の日本社会を比較したような本。
しずかちゃんアンチは結構いるらしく、しずかちゃんにたいして批判的な人の発言がよく引用されていた。まあ確かに、よく分からないところがあるかもしれない(やさしくてかわいい女の子というイメージはあるけど)。
ジャイアンとスネオの関係は小沢一郎と鳩山由紀夫元首相みたいな関係だとか。なお、その場合、のび太は菅直人になるらしい。ただ、しずかちゃんやドラえもんの立場はいないらしい(亀井静香はしずかちゃんの役割を果たせないとのこと)。なお、自公連立政権もジャイアンとスネオの関係のようなものとのこと。政治なんてだいたいジャイアンとスネオみたいなものなのかも。
ジャイアンの「オレのものはオレのもの、おまえのものはオレのもの」という発言は、のび太の探しものを一緒に探す時に善意の文脈で言ったものらしい。これは初めて知って驚いた。けど、調べてみたら最近放送されたアニメオリジナルでの話であって、原作にはそんな話はないらしい。
ところで、ほんとうの「事件のない日常」をアニメにするようになったのは21世紀の「日常系」「空気系」が登場してから。と書いてあったけど、そういうもんなのか。現代の日常系の例としてちびまる子ちゃんがあがっているのをよく見るのだけれども。
モジャ公の話が自分の知ってるのと違うような・・・。と思って調べたら、自分がモジャ公だと勘違いしていたのはポコニャンだった(どちらも藤子・F・不二雄作品)。なんでそんな勘違いをしてたんだろう・・・。
ところで、ドラえもんは学校には行かないらしい。あれ? そうだっけ? と自分の記憶を探ってみても、確かに学校に行ってるドラえもんは見た覚えがない(窓の外からのび太の様子を伺う話はあったような気もするけれど)。ということは、ドラえもんの話は学園漫画ではないわけか。
後、ドラえもんが初めて載ったのは学年雑誌の一誌だけではなく、一年生~四年生と幼稚園、めばえでも同時に掲載されたよう。予告を書いた時点でドラえもんというキャラを思いついてなかったと前に聞いたことがあるけど、本当だろうか。一誌だけならまだしも、六誌って・・・(全部、ドラえもんと初対面ということは共通でも、全て違う話だったよう)。
最後のあとがきは小学生の感想文のようだった(わざとそうしてるのだろけど)。
とりあえず、この本を読み終えた自分は、『しずかちゃん 入浴』というキーワードで検索してみようと思う。
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ドラえもんこそ真の主役という筆者の説を私も支持致します。
色々と細かい考察が為されており、藤子先生も草葉の陰で喜んでおられるのではないでしょうか。
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ドラえもんって、藤子F不二雄って、めちゃくちゃすごかったんだなって感動した。
こんなに壮大なパラレルワールドストーリーだったなんて。
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『ドラえもん』を社会学的に分析した一冊。
ちまたにある謎本とは一線を画している。
また、過去のドラえもんが生まれた経緯や連載事情なども知ることができて良かった。
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意外に面白かった。
ドラえもんに掛けた社会分析かと思っていたのだが、本当にドラえもんの分析だった。一部そうでないところもあったが。
ドラもんは子供向けマンガであり、落語的物語なのだ。そういうことなのだ。
実に面白い。
最後の章で、ドラえもんのパラレルワールド的あり方を、そういやそうだったと思い出した次第。
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藤子・F・不二雄の代表作『ドラえもん』の世界について論じた、「ホンワカパッパな社会学的考察」です。
しばしばフェミニズムの立場から、しずかちゃんの入浴シーンなどが批判の対象になることはありますが、著者はそれ以上に重要な問題として、しずかちゃんには「かわいい女の子」以外の役割があたえられていないと指摘しています。この点はそれなりにおもしろく感じたのですが、それ以上の掘り下げがなされているわけではありません。同様に、1960年代から70年代の郊外に暮らす核家族としてえがかれている野比家を、戦後日本の時代背景のなかに位置づける議論は納得のいくものですが、こちらも『ドラえもん』の世界にえがかれる時代と場所を限定するだけにとどまっており、そこからなんらかの問題を取り出すような試みは見られません。
また、他のテーマについても、のび太とジャイアン、スネ夫の関係に民主党政権に通じる問題を見ようとするなど、こじつけの印象があります。
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何の気なしに借りてみた本。『ドラえもん』に関して、今まで考えたことがなかったような深掘りの考察がなかなか面白い。なぜ学校の場面が少ないのかとか、専業主婦のママは、昼寝とテレビばかりで、ご近所やママ友との交流がほとんどないとか、0点を取るからのび太ママは怒るのであって100点を取れないからではないとか、放任主義でのび太を塾に通わせたりしないとか。また雑誌掲載当時の逆境からの逆転の一発としての「ドラえもん」という事情は現在からは想像できない。行動パターンがよくわからない(類型にあてはめられない)静香ちゃんは、やっぱり「女性」なのであって、男性からは計り知れない『妻のトリセツ』にも書かれていた通りなのかもしれない。