紙の本
壮大な「コミュニティ学」の可能性
2010/09/15 20:41
7人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:YOMUひと - この投稿者のレビュー一覧を見る
日本の都市はアメリカ型を辿ってきたので、それを急激に、歩いて楽しめる商店街や市場などのエリアの多いヨーロッパ型に方向転換できるだろうか。例えば、スーパーに車で買い物に行く自動車中心の私たちに習慣は、経済合理性と、多様な商品という利便性などに裏打ちされているので、簡単には変えられないであろう。
しかし、市街地の空洞化、・荒廃や団地の高齢化は放置してよいわけではない。また本書にあるように、見知らぬ他人に対するマナーの悪さも同様である。本書はこれらすべてを無関係とはみなさず、コミュニティの問題ととらえる。
その上で,ここにまで至った日本の厳しい、そして困難な状況のなかで、実行可能な政策を現実的に、かつ理論的・体系的に提示している。
本書は、著者の考え方が新書という限られたスペースに過度に押し込まれている感があり、やや説明不足な部分もあるが、そのなかで、注目されるのは次のような点である。まず、都市計画と福祉政策の結合である。例えば、中心部に高齢者住宅や福祉施設を整備する。また、住宅費助成によってまちなか居住を推進するという、所得の再分配と、空間(都市)の整備との結合策である。
既に先進的な自治体では、このような政策を実施していたり、あるいは検討中であることには目を見張る。
次に、注目されるのは、都市政策と切り離せない社会保障政策、そのなかでも「ストックをめぐる社会保障」である。この前提には著者の時代背景のとらえ方がある。現在は「貨幣で計測できるような人間の需要」がほとんど飽和しつつある「経済の成熟化」(「定常化社会」)の状況にあり、また消費構造においては、「コミニュテイや自然や公共性、スピリチュアリティといった領域に関する人間の欲求」である「時間の消費」に向かいつつあるとする。
このような経済の成熟化においては、富の源泉は、市場経済の発展期におけるフローに代わり、ストックにシフトする。従って、ストックの格差是正こそ重要であるという主張は首尾一貫していて説得力がある。
また、コミュニティ学ともいうべきものの、気宇壮大な位置づけも披瀝される。つまり、コミュニティ学が「近代科学」のあり方そのものを大きく問い直す意味をもつという。失礼ながら半信半疑で読み進めると、医学における「気」の重要性や、脳科学者自身の口から「個体を超えたレベルで脳がどう作動するかについての研究はまだ緒についたばかり」
という発言をきくと、なるほどと納得させられてしまうであろう。
とにかく何よりも、私たち日本人が、ムラ社会の付き合い方だけでなく、自立した個人間相互の「新しいコミュニティ」の人間関係をつくり上げていかなければならないことは間違いない。「コミュニティ」は現代日本の最も根底的なキーワードである。
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とてもきれいに整理されています。
自分の分野だからこそというのもありますが、
これはとても参考になりますね。
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091213 大佛次郎賞0912by朝日
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むずい100221
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戦後の日本社会で人々は、会社や家族という「共同体」を築き、生活の基盤としてきた。だが、そうした「関係性」のあり方を可能にした経済成長の時代が終わるとともに、個人の社会的孤立は深刻化している。「個人」がしっかりと独立しつつ、いかにして新たなコミュニティを創造するか―この問いの探究こそが、わが国の未来そして地球社会の今後を展望するうえでの中心的課題となろう。
都市、グローバル化、社会保障、地域再生、ケア、科学、公共政策など
の多様な観点から、新たな「つながり」の形を掘り下げる。
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「個人」がしっかりと独立しつつ、いかにして新たなコミュニティを創造するか
都市、グローバル化、社会保障、地域再生、ケア、科学、公共政策などの多様な観点から、新たな「つながり」の形を掘り下げる
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文中やたらと強調や補足が多くて読むのに難航。こちらの力量不足もあるかな。本書の全てに共感できる訳でないにしろ、今、自分が乗る船を選ぶとしたらここに手を挙げたい。他著にもあたってみたい。
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コミュニティというものについて、1)都市論、2)社会制度、3)思想、の面から包括的に考察した本。都市論、社会制度の話は少し疑問は持ちつつも納得しながら読めた。思想については、付け焼き刃?というか急いで書いたって感じを受けた。
知らない人に挨拶もしない、レストランで隣に座った人と一言も会話しない、目があっても無視する。そんな日本の住みにくさを、コミュニティ論という耳慣れない分野が解こうと頑張っていることは分かった。しかしいわゆる「文系」の学問全てに言えることだけど、予測可能性のない、「理論」を目指さない「議論」って印象。
こういう議論をもとにした具体的な取り組みと、その効果を何らかの数値(住宅や貯蓄の統計値の変化とか、さ)で表した本があれば読みたいな。
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『コミュニティ』はアンテナ張っているキーワードだったから即購入。あたりでした。まとめると、日本はもっと共同体を超えた規範を共有することで、個人としてつながれる環境を整える必要がある、となる。コミュニティやソーシャルキャピタルなどに興味がある方は必読か。
コミュニティは暫定の定義として『人間が、それに対して何らかの帰属意識を持ち、かつその構成メンバーの間に一定の連帯ないし相互扶助の意識が働いているような集団』とされている。
コミュニティにはいくつも類型があるが、その重要な分類の一つとして、農村型・都市型というものがある。簡単にまとめるといかのようになる。
農村型(閉鎖的、うちわ、共同体としてつながる)⇔都市型(外交的、個人としてつながる)
ここ数十年、日本の人口は農村から都市へ大きく移動したが、コミュニティベースで見ると、農村というコミュニティから、企業と核家族という都市にはあるが農村型なコミュニティに移動しただけであった。これは面白い。そして結局あまり都市型のコミュニティが発達しなかったという。
まぁ、結構僕の周りは都市的なコミュニティが多いんですけどね。やっぱり、見知らぬ人同志が自然に挨拶したり会話できたりできるような環境があった方がいいと思っています。僕自身はKYにもずかずかと話したりできるほうなんですがね。
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2010.04 コミュニティーの話を発端に、日本の今後のあり方を考察している。とても参考になったが、争点がどこにあるのかが、今一歩わからなかった。
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人間にとってコミュニティとは何か。
人となった人類が歩んできたコミュニティとの関わりも分析されている。
他の生物と違って高度に発達した「脳」を持っている人類にとってのコミュニティ。
厚生労働省の官僚であったという経歴からくるコミュニティの分析。
とにかく今まで親しんできたコミュニティの本とは明らかに一線を画された著作である。
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領域、テーマは凄く興味大。なんだけど、文章が冗長的でしんどいね。エッセンスを抽出しながらの読み飛ばしができればいいんだけど。ということで、情けないけど、まだ奮闘中。
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[ 内容 ]
戦後の日本社会で人々は、会社や家族という「共同体」を築き、生活の基盤としてきた。
だが、そうした「関係性」のあり方を可能にした経済成長の時代が終わるとともに、個人の社会的孤立は深刻化している。
「個人」がしっかりと独立しつつ、いかにして新たなコミュニティを創造するか―この問いの探究こそが、わが国の未来そして地球社会の今後を展望するうえでの中心的課題となろう。
本書は、都市、グローバル化、社会保障、地域再生、ケア、科学、公共政策などの多様な観点から、新たな「つながり」の形を掘り下げる大胆な試みである。
[ 目次 ]
コミュニティへの問い
第1部 視座(都市・城壁・市民―都市とコミュニティ;コミュニティの中心―空間とコミュニティ;ローカルからの出発―グローバル化とコミュニティ)
第2部 社会システム(都市計画と福祉国家―土地/公共性とコミュニティ;ストックをめぐる社会保障―資本主義/社会主義とコミュニティ)
第3部 原理(ケアとしての科学―科学とコミュニティ;独我論を超えて)
地球倫理の可能性―コミュニティと現代
[ POP ]
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[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
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コミュニティのあり方やその再生については多く議論されており、地方自治体では商店街や公民館、学校などを中心としてコミュニティを形成する試みがなされている。コミュニティが重要視されるのは、それが人が生活するうえでの基盤になるものと考えられているからであり、経済成長に頼らない豊かな生活を送る上での基盤になるものであると認識されているからである。
しかし、マンションの住人はマンションを単位としたコミュニティという意識は薄く、むしろコミュニティは排他性や同調圧力を生むためにコミュニティというしがらみからの開放が進歩であるとされてきたという歴史がある。文明の発展とは、コミュニティという集団によってではなく、個人がバラバラに生活できる社会が「進歩」であると考えられてきた。このような理由から、コミュニティという言葉に対して批判的な立場をとる人も存在する。
本書は、都市、グローバル化、社会保障、地域再生、ケアなどさまざまな観点から、人と人との新たなつながりの形を模索するものであるが、「コミュニティ(共同体)」をより具体的に分析し、感情的次元の「農村型コミュニティ」と規範的・理念的なルールによる「都市型コミュニティ」とに分類している。
人の移動が少なく、濃密な関係性が築かれるのが「農村型コミュニティ」であり、コミュニティという語についての一般的な認識がこれにあたると言える。そして、生産のために個々が集う場所が「都市型コミュミティ」であり、この外部に開かれている流動的な集団を、西欧では宗教が、日本では経済成長という理念が一つの集合として束ねていた。
明治以降、日本は欧米列強の進出に直面する中で、「文明の乗り換え」を行った、しかし価値原理(キリスト教)は受容せず、仏教・儒教の価値原理はほとんどを捨象した。この価値原理の喪失を経済成長という信奉が埋めたと言える。
そして経済成長が頭打ちになった現在、個々をまとめるコミュニティの意識が希薄になっていると言われているが、推論すると本書で言うところの「都市型コミュニティ」が薄れているのであり、重要ということになる。
しかし、ここで議論は転回し、社会保障の話に移る。制度としての保障だけにとどまらず、心のケアなども含めた保障で、ケアを施す場としてコミュニティが重要であるという内容であり、このコミュニティとは濃密な関係を受容する「農村型コミュニティ」、感情的次元による「つながり」の場についてである。
さらに、社会格差に対する保障にも触れているが、興味深いのは所得に関するフローの格差ではなく、ストック(資産)の格差が、日本の固定的な階層の中での世代交代により蓄積され、より拡大しているという議論である。このストックに対する保障という観点から都市政策による社会保障という考えが
導きだされている。これまでの都市政策は景気刺激策として行われてきた。そして福祉政策は担当省が異なるということもあり、制度やサービスが中心であった。
著者の提言は、NPOや地域コミュニティなどの「公」的な領域の発展と、所得の再配分や土地所有のあり方などの公的部門の強化が重要であるとし、大きく括れば社会保障のより一層の充実といえる。
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日本におけるコミュニティのあり方、というのは2010年現在、ある意味でとてもホットな話題である。
ちょっと厚めの新書一冊によくこれだけ色々なものを詰め込んだと思える浩瀚な論であり、参考になる視点が様々にあった。
特に、筆者の言う『福祉地理学』は今後重要さを増す思考法であろう。どのような地域においても一律・普遍的な福祉を考えるのではなく、地域の実態に合わせた施策を。
その実現のために官・民のみならず「公共」の役割を拡大すること。(日本社会においては「公」の位置づけが曖昧であるとは、他の分野、他の論者も多く指摘するところではある)
また、街づくりにおいてアメリカをモデルとしたために、自動車中心の都市が多くなったことについても指摘がある。人が歩き回れる程度の町、というのは高齢化を踏まえたうえで必要な視点であろう。
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(「BOOK」データベースより)
戦後の日本社会で人々は、会社や家族という「共同体」を築き、生活の基盤としてきた。だが、そうした「関係性」のあり方を可能にした経済成長の時代が終わるとともに、個人の社会的孤立は深刻化している。「個人」がしっかりと独立しつつ、いかにして新たなコミュニティを創造するか―この問いの探究こそが、わが国の未来そして地球社会の今後を展望するうえでの中心的課題となろう。本書は、都市、グローバル化、社会保障、地域再生、ケア、科学、公共政策などの多様な観点から、新たな「つながり」の形を掘り下げる大胆な試みである。
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西洋・中国の都市と日本の都市、街並み・景観、公・共・私、…様々な角度から論じている。コミュニティをめぐる思索の旅に出た気分に。
結論の出せないテーマなので、最後がムニャムニャですが、終盤流し読みにしても十分満足な内容だと思います。