紙の本
この分量でこの読みごたえ!同じテーマで、いつか長編で読んでみたい。
2004/05/11 05:17
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投稿者:風(kaze) - この投稿者のレビュー一覧を見る
文庫で150頁あまりの中編。ラストには胸が熱くなったのと同時に、できれば長編で読んでみたかった、とも思いました。話に引き込まれて、さあこれからというところで、もうラストが来てしまったみたいな。うーん、なんかもったいないなあと。
目覚めたら機械のボディになっていたミキが、病院で患者の介護にあたりながら、「自分は何者なの? 人間? ロボット? いったい何?」と問いかけていく話。生きることと死ぬことが身近に感じられる環境の中で、自分は一体何者なのだろうと問いかけるミキ。彼女が必死に記憶を探り、答えを見つけようと思い悩む姿は、見ていて胸が締めつけられました。
それと、菅さんの文章、擬音の使い方がとても上手ですね。そう感じた箇所を、本書の最初のほうからいくつか抜き出してみます。
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擬音語を使って、あるイメージをさっと掴まえて表現しているところ。うまいもんだなあと感心させられました。
また、ロボットの持つ意識とか心の在処(ありか)といったことも、この作品のひとつのキーワードになっていたみたい。それでなんでしょう、読み終えて、ロボットが忘れられない作品を久しぶりに読んでみたくなりました。手塚治虫の『火の鳥 復活編』とか、アシモフの中編「バイセンテニアル・マン」(『聖者の行進』所収)とか。
とまれ、菅 浩江さんの『アイ・アム』。読みごたえがありました。
「より良く生きること」とか、「人間らしさ」とか、「ロボットの存在と役割」とか……。色々と考えさせられる作品でした。
紙の本
おいしい一冊
2002/04/14 22:35
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投稿者:かけだし読書レビュアー - この投稿者のレビュー一覧を見る
長くもなく短くもない中篇。といっても実際に本を手にした時は薄いし、字はデカイし、値段は安いけど中身はあるのか? と疑ってましたが、なかなか良かったです。
突如、目が覚めたら不恰好な看護用ロボットになっていて、病室で難病と向き合う患者さんの介護をする、といった物語。時に我が子の病状について嘆く親を励ましたりしながら、頭に横切るのは、遠い記憶と自分に対しての疑問。一体、私は誰なんだろう? 本当にロボットなのだろうか?
目の前で死と向き合う者、またそれを見守る者、全てを受け入れて生きる者など、テーマが割と深いので頁数はさほど気になりませんでした。印象的な言葉なども結構あったな。「たとえそれがすぐに失われる幸せであっても、幸せだった記憶は、残ります。小さい時に覚えた歌が、いつまでも心に残るように」や、ホスピス練での主人公の問いかけに対する院長の返答(これが鋭いのよ)など。
でもって、ラストが泣かせるんだわ。こういったオチは弱いんだよなぁ。一応主人公はロボットだけれど、あまりSFって感じでもないし、さくさくっと読めるし、万人向けの非常にオトクな作品。おいしい一冊。
紙の本
機械の看護婦が問う自らの存在
2002/03/22 22:53
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投稿者:あすか - この投稿者のレビュー一覧を見る
彼女の名はミキ。苗字とも名前とも取れる名を持つ彼女は、病院で看護をするために生み出された。機械であるがゆえに、人は彼女に遠慮せず用事を頼める。機械であるがゆえに、彼女はミスをしない。
しかし人が感情をともなってミキに相対するとき、双方が人間同士では感じることのない微妙な違和感を覚えることになる。死に行く家族は、なぜ自分の子が? とつぶやかずにはいられない。ミキが返す答えにも、なぜ機械にこんなことを言われねばならないか、と叫ばずにはいられない。繰言を発する女性は、機械にこんなことを言うなんて、でも同じことを言うのだから機械に言うぐらいでいいのかも…と自問する。そして、人々の生々しい感情に触れるとき、ミキは自分がなにものなのか、と問わずにはいられない。
中篇ながら、機械と自我、人間を人間たらしめるものは何か、という問いと、物語を巧みに織り込んだ佳篇です。
紙の本
原点回帰の幸福
2002/03/07 21:41
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投稿者:3307 - この投稿者のレビュー一覧を見る
——ちょうどいい長さの物語。帰宅時の通勤電車で一気読みしました。重厚長大路線にも魅力はありますが一息に読むのに適した長さもあるのだと改めて痛感させられた一冊。
作品の質が高く、枚数が短いと「切れ味」の良さが際だちます。
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ホスピス病院で目覚めた「ミキ」は金属のボディにラバーの腕をもち、プログラミングされた高度な専門知識と技術で難病の子供たちや末期癌の患者をケアする仕事を与えられる。
彼女は最新の介護ロボットとして患者や家族と相対するたびに、命のない存在でありながら彼らの苦しみを感じ取り、苦しみ迷う。
何故迷うのか?生まれてもいないし死ぬこともない存在であるはずの自分が、何故死と隣り合わせの彼らの気持ちがわかる気がするのか?
その答えは自分でみつけるしかない・・・ミキは仕事をしながら自分探しをする。
ああ、生きているというのは有り難い事であるなぁ、としみじみ思いつつ読了。短いながらも必要十分、といった短編でした
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終末医療を行う総合病院にミキという看護ロボットが目覚めた。
看護、介護するなかで感情の揺れやなぜか存在する記憶を思い出し、私とははなんなのかを問うていく。
短い本なのですぐに読めるし、話もわかりやすいのでおすすめ。
この手の話は幸せな方向に自分探しが進むのがほとんどだけど、ミキのようにロボットとなるという救いがなかったらどうだったんだとは思わずにいられなかった。
結末としてはこれが良いに決まってるけど…
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自身の内の自我に気づいた医療用介護ロボット<ミキ>が、「自分とは」「生きるとは」を問いかける。面白かったけど、できれば長編で読みたかったかな。
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自分は何者であるのか。この、人類が存在する限り、決してなくなることのない究極の問い。人の一生はこの問いの答えを探す旅のようなものであるような気がする。その答えは一つではなく、正解もない。自分で見つけたものだけが、自分にとっての正解と為りうる。
介護ロボットのミキは目覚めた時から必要なことは全部知っていた。介護の知識も、病院の地図も、自分自身の構成図すら与えられていた。それでも、一番最初の彼女の質問は「私は、誰ですか。」という言葉だった。その問いの真の答えを求める思いは、病院の人々との触れ合いを通して、ますます大きくなっていく。
身体のほとんどを機械に助けられ、それでも生きていることを実感しようと必死で生きている男性。産まれた時からの難病で、生命の限界をみつめながら生きている子ども。ホスピスに入っても遠慮がちで介護を頼めないでいる老婦人。病院にはむき出しの命と向き合っている人々が暮らしている。
少しずつ明らかになるミキの謎。そのBGMのようにさりげなく描かれている命の記録。それらが優しい、そして少し哀しいSFの世界を作る。
謎は大がかりではなく、読み慣れた読者ならば想像の範囲内の結末だと思うが、それでもこの優しい世界に触れることに、きっと意味がある。そう思う。 (2002-04-10)
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SF。
看護用ロボット、ミキ(三番目の機械)の自分探し。
外科・小児・ホスピスと、ミキは体験していくにつれて自分とは何かを気にし始める。ロボットゆえに差別され、ロボットゆえに頼りにされて、でも……、ロボットであることを諦めてしまう自分に気がついて、何を諦めるのか自問自答するのだ。
ラストで、不覚にも涙ぐんでしまった。
「裸眼で見たかったの お父さんとお母さんの顔」
そこから、思い出の部分で。
なんで哀しいのか、説明できませんが。
哀しいのです。
自分が猿だと忘れさせられて、ロボットだと思い込んだジミーの哀れさも。
自分がロボットだと思い込まされて、それでもホスピス(終身医療)という過酷な生命の現場で、女の子の得る哀しさも。
それにしても、この設定は凄い。
究極の医療介護。自己介護。ロボットを自分で操って、自分で介護する。
文句のつけようもない。だって、自分がやっているのだから。
こんな時代が来るのだろうか。
そうしたら、人は今より少し、寝たきりになるのが楽かもしれない。心情的にね。
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私は“幸せの貯金”が出来ているだろうか。
総看護士長が言うように、満額で死ねたら幸せだ。
けど、どれ位の人がそんな風に死ねるんだろう。
院長夫婦のした事は、やっぱり偽善だと思う。
本人達も、それを承知の上でした事だから余計つらい。
それでも…、それでもって思ってしまうんだろうな。
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良かった
平成13年の薄い本。2時間もあれば読みきれる。筋も、ものの 10分で読みきれる。ロボット・ナース。
雑だ。流れるような美しさはない。もっとていねいにこのテーマを扱ってほしいと思うほど。
アプローチは瀬名作品とは異なる。ロボットに人格はない。でも、でも、とても感動する。単にアバターがほしいわけではない。アバターを通じて命を学ぶ。ラストのキレは、マッドサイエンティストのそれ。自分が居なくなっても困らないように。そうか、だからナースなのか。素晴らしい。
心に閉じ込められた姑問題。安楽死。さらっと語る現実と、新生児は人間未満、老害は人間崩壊と言い切る愛。そして、ラストの親の愛。雑でも短くても、すばらしさは損なわれていない。いいなぁ。ここテーマ、もっと書いてほしい。
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目が覚めると、目の前には江成一信院長と、江成瑞枝総看護士長がいた。ここは病院で、自分が介護をするためのロボットであることを知る。「ミキ」と名付けられ、病棟で様々な患者と接することになるが、次第にミキは自分の中の不思議な感覚が気になってくる。これは記憶?”私”は一体何だったのだろう?ただのロボットではないのだろうか?
オチはまぁ、それしかないだろうな~という感じだったので特に驚きもなく。ここまでの技術は今の世の中でも発展していないけれど、介護の世界にロボットが進出してくることは間違いないのではないのだろうか。ミキのように人間と同じく反応してくれる方がいいのか、もっとあえて機械的な方が介護を頼む側からしても気楽な面があったりするのではと思わなくもない。
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SFとは言っても少し物足りなさが残ります。ちょっと薄過ぎるせいでしょうか!?できれば長編で読みたかった。ソフトなSFってところでしょうか。