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紙の本
書評前編:「天皇制が是か非かという問題」を脱構築する天皇制論
2000/12/28 18:15
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投稿者:服部滋 - この投稿者のレビュー一覧を見る
「わたしが学生だったころ(約三十年前)から、『天皇(制)』および『戦争(責任)』の問題は、日本社会を考えるうえでのメインプロブレムだった」と竹田青嗣は本書のまえがきで書いている。「知識人は誰でもこの問題を論じたし、学生は例外なく多くの本を読み、自分なりの見解を得ようとした」と。
たしかに「この問題は、われわれ戦後世代が『戦後』を考えるために通らなくてはならない必須の関門だった」には違いないが、それは「反帝・反スタ」(反帝国主義、とりわけ反アメリカ帝国主義。これを反ベーテーという。および反スターリン主義)とか「反安保」とか「反ベトナム戦争」とかといった、多くの「反〜」プロブレマティックの一つだったように思う。
「天皇制」がそれらのなかで特権的なアイテムであったのは、先行する世代(多くは戦中世代)によってすでに「特権的な問題」として確立されていたからであって、当時の学生はたとえば藤田省三の『天皇制国家の支配原理』(本書には登場しないが)といった本を読みあさった——のであるが、それは必ずしも多数派ではなかった。「多くの本を読」む学生はむしろ「例外」的存在であって、たいていの学生はあまり本を読まないというのは当時も今もさして変わりはない。
当時の(一部の)学生が「天皇制」に関する本を読みあさったとすれば、それは天皇について考えるというより、つまるところそれを否定する根拠を得たい、反天皇制の理論武装のためだったといった方がいいだろう。天皇制は否定すべきものであり、天皇に戦争責任があるのは疑うべくもない自明の理とされていた(違うかな?)。
そうして読みあさった多くの本と本書が決定的に異なるのは——本書では「天皇に戦争責任はあるか」という問題をめぐって加藤典洋(ある派)と橋爪大三郎(ない派)がディベートを繰り広げているのだが——レフェリー役の竹田青嗣がいうように「二人はいわば作業仮設的に対極の立場に立ち、この問題を、いまわれわれが『白紙』の状態から考えなおすとして、どのような問題設定をおこなうべきか、という思考実験を競っている」ところにある。
すなわち、「『天皇制をわれわれはどう考えるべきか』じゃなくて、『どこのところから考えたら、天皇制が是か非か、というあり方自体がほどかれるのか』」(加藤)といった、問題の枠組み自体を疑問に付すところから議論を始めようとしている、そこがきわめて刺激的な試みなのである。 (bk1ブックナビゲーター:編集者/服部滋 2001.01.02)
〜 書評後編へ続く 〜
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