紙の本
概念としての「神」を模索?
2001/06/16 09:45
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:旅歌 - この投稿者のレビュー一覧を見る
萬月作品どれかの解説で読んだのだが、巷では評判がよろしくないらしい。確かに、暴力もセックスもたいして描かれていないし、強烈な個性的登場人物の血を吐くような痛みもない。これだけを読めば花村萬月という史上稀な作家の影も形も見えないのは事実かもしれない。萬月さんにはこんな作品を書いて欲しくない、という気持ちもわかる。
でも、この作品は現在の萬月さんを知る上で絶対見逃せない作品だと思うのだ。作家本来の仕事は作品の中で新しい倫理を確立すること、とおっしゃる萬月さんは『ぢん・ぢん・ぢん』で既存の倫理をぶっこわした。でも、それは単なる前哨戦であり、本来の作業は芥川賞受賞作『ゲルマニウムの夜』から始まっている倫理の確立なのだと思う。
『ゲルマニウムの夜』の感想でも書いたが、萬月さんの登場人物にはカリスマ性を帯びた人がかなりの確率で登場する。それらの人々は大なり小なり「絶対者」であり、周囲には殉教者が集っていた。が、いかに強烈なカリスマといえども所詮は人間なのだ。そのあたりに萬月さんはジレンマを感じていたのではないか? そこでひとつの概念として本作の「シマ」を登場させたのではないか。。言ってみればこれは実験作なのだ…。しかも「シマ」は子供で、成長している。不可解な現象の舞台となる大和堆は子供である「シマ」のおもちゃ…。これは神に翻弄される人間そのものじゃないか。おぼろげながらだが、萬月さんの神に対する感覚が見え隠れするような気がした。
投稿元:
レビューを見る
ブックオフ
暗いんだよ〜
空間の理解の仕方は面白かったな
それ以外は私にはついていけない…
もう花村さんを手に取ることはない…
投稿元:
レビューを見る
この話はむちゃくちゃだ。「永遠の島」もワケわかんない感じで消化される。だけど私が★4つ付けるのは、この話の主人公の女が大型バイク(Z2ナナハン改)を乗り回す描写があまりにも格好良かったから。この本を含む花村萬月の小説を読んだがために、私自身もバイクの免許を取ったのです。そういう意味で、特別な一冊。
投稿元:
レビューを見る
勧められて初めて手に取った花村萬月。ちょ、ちょっと想定外・・・。最初ナナハンとか物理学とか出てくるからそういう雑学ががっつり詰まった作品かと、思いきや、あれ・・という結末。もう一冊くらい読まんと、これが作風なのか分からんなあ。
投稿元:
レビューを見る
大女の洋子の ナナハンにのって 興奮する場面なんぞは
たしかに 花村萬月なのである。
超越的な存在に 犯されたりするが・・・・
その超越的な存在は 後には 現れなくなる。
この物語は 『点』のようなプロットがつながる。
『老いによる死は残酷だ。枯れていく・・・
正確には腐敗だ。腐っていくんだ。』
と言うような直裁な表現がうまいと思う。
父親との交流も ストレートだ。
しかし、その後 展開の中で 父親とは まったく交流もなく
尻すぼみとなる。
バーミューダトライアングルを モチーフに、
日本海での海域に起こる 神隠し に迫ろうとする。
シャボン玉 ミニブラックホール 裂け目・・・などを駆使し
時間の扱い方など 面白いところがあるが、
『シマ』がしょぼい。
液体ダイヤモンド・・・
個性の持った虫なども 面白いが ものたらない。
花村萬月の想像力が 集中しきれていない。
投稿元:
レビューを見る
我思う、ゆえに我あり
デカルトの有名な言葉です。
自分の存在を証明するために考える。
考える事で自分が存在することを証明できる。
実にシンプルで真理を捉えている言葉です。
全ての学問において何かの存在(答え)を立証するために理由が必要です。
何故なら証明の無い物を信じることは勇気が必要であり、大概の人は臆病であるため確固たる証拠の無いものを拒絶してしまうと私は考えます。
神様が存在することに心血を注ぐ人達は神の奇跡を立証するのではなく神様が既に『在るもの』と肯定し、信じることにその一生を捧げます。
その信じる心に私は少なからず勇気を感じます。
私は臆病者なので自分が納得できる式で立証されない物を信用することが出来ません。
世の中全てに理が必要だと考えております。
日本海の中央に位置する【匂島】近海で発生する不可解な事件。
それはまるでバミューダトライアングルのように船や人が跡形も無く消えていく...
世界の超越した存在を幼い頃から意識している長身の美女【竹本洋子】はこの事件?に深く引かれていた。
父の伝でこの海域の調査をしている研究機関で働く事になる。
洋子と出会い洋子に惹かれていく不能の天才物理学者【梶】と妻殺しの漁師【政】達は事件の原因究明のため島へ渡る事に...
物理学と哲学と官能が入り交じるSF小説です。
投稿元:
レビューを見る
初めてこの方の本を読みました。
読み進めていくと花村さんの世界に
引き込まれてました。。
ジワジワ怖さが増して来る感じが
ナカナカ面白かったかな?
投稿元:
レビューを見る
花村萬月はこういう小説も書けるのか…と度肝を抜かれながらそのSFめいた世界観を堪能しているうちに、急転直下で雲行きが怪しくなり、多少歪んだ花村萬月ワールドへ。でもそれはSFを経由した分、理屈っぽくて、人間の本能的な獰猛さを描くのとは対照的な外堀だから違和感が凄まじい。時空の歪みは分かったけど、キャラ設定まで歪みまくり。それとも、この豹変が花村ワールド?今まで読んだ作品から一歩も二歩も落ちる。
投稿元:
レビューを見る
あらすじ
日本海の中央に位置する好漁場匂島近海で多発する不可解な出来事。まるで"魔の三角地帯"のように、船が、人が、跡形もなく消える。だが、何故かマスコミは沈黙を守っていた…。Z2ナナハン改を駆る長身の美女・洋子は、この事件に強く惹かれていた。理由はわからない。やがて父の伝から、この海域を調査している研究所を訪ねた後、洋子はひとり島を目指す。不能の天才学者、妻殺しの漁師、そして洋子。島に魅せられた様々な人間が禁断の扉を開ける時-。科学を背景に巧みな筆致で綴る現代の黙示録。万月の新境地。