紙の本
「無責任の構造」と戦うための実践的な書
2001/10/24 00:01
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投稿者:jig - この投稿者のレビュー一覧を見る
モラル・ハザードが話題になって久しい。証券会社による損失補填、自動車メーカーのリコール隠し、最近では農水省の狂牛病への対応等々、枚挙にいとまがない。これらの「事件」には、「無責任の構造」が潜んでいる。
本書は、はじめに具体的な事例として、著者が実際に関わったJCO臨界事故を取り上げ、事故に至る過程を検証している。続いて、無責任を引き起こす集団のメカニズムについて、様々な実験データをもとに分析する。さらに、「無責任の構造」の病理として、職場における「権威主義」と「属人主義」について解説している。
民間企業に身を置いている評者には、耳の痛い話であった。権威主義、なかでも因習主義的風土が業界内に存在することは言うにおよばず、著者が示すように「日本の職場は属人主義である」ことを痛切に感じることがあるためだ。ただ、これらの問題は企業だけではなく、日本の社会のあらゆる場所で見られることである。
では、この「無責任の構造」といかに戦うか。これについても本書は具体的に、方法論を示している。例えば、「孤高に耐える」、「人に好かれたいという気持ちを捨てる」などであるが、しかしいざ実践するとなると躊躇してしまうような事柄が多い。当たり前のことだが、それだけ困難なことなのだ。
自分が属している組織を冷静に見つめる上で、恰好の一冊といえる。
紙の本
2001/03/18朝刊
2001/03/28 15:15
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投稿者:日本経済新聞 - この投稿者のレビュー一覧を見る
職場の不祥事を目にしても「会社のため」と口をつぐむ。ワンマン経営者の独断専行にだれも異を唱えない——。物言えば唇寒し、はサラリーマン社会の常だが、事なかれ主義は時には組織の存続を脅かすようなモラルハザードを生む。
リスク心理学の専門家である著者が、東海村臨界事故を起こした企業などを題材に、日本企業に特有の「無責任の構造」を明快に分析する。個人が摩擦を回避しつつ組織の方向をただしていく「戦略的な処世術」にも触れている。
(C) 日本経済新聞社 1997-2001
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組織の中の人間関係のなかで不可避的に出てくる「同調」「服従」「属人主義」などがどのようにして、リコール隠し、損失補填、大事故などにつながっていくかを社会心理学の立場から読み解く。勤め人には必読かもしれない。
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JOC事故を引き合いに,無責任を引き起こす集団的メカニズムについてわかりやすく解説している.とかく属人主義の傾向が強い日本型組織の問題点を明快に指摘している.
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どうすればいいのか、というhowto本。
具体的に力を入れて解決編を書いているんだけれど、
働いていない成果、実感が薄い。
反証するデータが入れていないで、真偽の程はよくわからないが、
mindhackされるほど、受け入れがたいものでもない。
複眼法が上手く働いていないなーと思った。
年齢を重ねるごとに人格も低下する
衝撃です。
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JCO臨界事故の資料として購入したのですが、権威主義に関する考察がとても面白く、普通に読了しておりました。
これももう10年以上前の本ですが、内容的には決して色褪せておりません。いや、むしろインターネット社会の今でこそ、この本で描かれている「無責任の構造」は拡大し悪化しているかのような気がしてきます。
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組織があれば腐敗がある。
その腐敗をいかに予防するか?または対応するか?ということについて、タイムリーにもJCO臨界事故の例を用いて説明されている。
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JCO事故(事件)の関連本として手に取る。会社組織にうとい自分にはとてもおもしろい本だったです。わたしが社長だったら社員全員にぜひ読んでもらいたい一冊。あ、それからネットでぶーぶー言っている人たちにも。
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[ 内容 ]
金融、警察、食品メーカー、さらには臨界事故など、不祥事の根底に潜む無責任体質とは?
その構造と予防策を社会心理学的に考察する。
組織のあるところには必ず「無責任の構造」がひそんでいる。
証券会社の損失補填、自動車会社のリコール隠し、警察の被害届改ざん……。
本書は、無責任をひきおこす集団と人格のメカニズムを社会心理学的に分析している。
[ 目次 ]
●第1章 「無責任の構造」の事例研究――JCO自己の精査
●第2章 無責任をひきおこす集団のメカニズム
●第3章 「無責任の構造」の病理
●第4章 「無責任の構造」克服の戦略
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
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☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
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共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
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『権威主義の正体』を読んで良かったので,著者の著作をもう一つ読んでみた。
日本で最悪の原子力災害となったJOCの臨界事故の調査にあたった筆者の経験をもとに,高度に複雑化した現代のシステムにおいて,大事故が起こってしまう社会的心理的な構造を明らかにする。社会心理学に興味をもった。
集団心理にはいろいろと逆説的なところがあって面白い。皆が同じ作業をしていると能率が上がりやすい反面,手抜きが行われることもある。機械的単純作業については能率が向上しても,複雑で結果のチェックが十分にできない作業の場合は手抜きが生じることが多いのだそうだ。また集団の意思決定は個人による意思決定より冒険的になりやすい。これをリスキーシフトというが,責任が分散したり,見栄を張ったりすることが原因であろうか。
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この本のことを簡潔に説明すると、「組織内の人間関係によって事態が悪化していく事にどう対処していくか」についてまとめた本、ということになるのだろうか。
JCO事故というものがあった事は知っていたが、いかにして発生したかは知らなかったので、本書を読んでショックを受けた。どうして自分たちがしている事を客観的に見ることが出来なかったのだろうか。
という、疑問については一章以降で、その発生したメカニズム、発生しうる環境・主義、対処法について解説している。
四章の「「無責任の構造」克服の戦略」については「これが出来たら苦労しないよ」と言いたくなったが、一つの参考にはなると思う。
ちなみに、本書で使われている言葉は心理学や社会学を学んだ方によっては「今更?」と思えるものも多い。サッと目を通すだけでも良いのではないか。
自分用キーワード
一章
JCO臨界事故 リスク心理学 計画被爆(臨界事故などが起きた時に復旧・廃炉をするために被爆をすることをコストとして受け止めること) 国際原子力事象評価尺度(INES) 原子力損害賠償法 八条機関から三条機関へ(「機関」は「委員会」と表記されることも) 一バッチ(ウラン正味の量が2.4kgを超えなければ安全とされる) 臨海安全基準(質量制限・形状制限) クロスブレンディング ウェット法・ドライ法(ウラン燃料の製造法)
二章
同調(筆者は同調には「内なる同調性」「外なる同調性」の二種類があると述べている) アッシュ(有名な線分の長さを答えさせる実験の考案者) 服従 ミルグラムの実験(筆者曰く「実験者と参加者は一次的な関係であり、服従を拒否することが出来て、罰が無いにも関わらず服従が起きたことに恐怖を抱く」) 勢力基盤(心理学) 内面化 フェスティンガー「認知的不協和の原理」 選択的情報選択(認知的不協和を低減するために行う) 禁じられたおもちゃのパラダイム(組織内の問題を提起した人に対し、「一度静かにするように」軽い圧力を掛けることで「時間の経過(上は考えてくれているようだ)・間接的な方法(会社に貢献したという安堵)・控えめな報酬(長い目で見ると改善する)」という三要素が働き、内面化を起こして、無責任の構造の構築につながると述べている。逆に意固地になってしまい、改善が遅れることも) 社会的促進(例:満腹になったニワトリの隣でもう一羽にエサを与えると、再び食べ始める) 社会的手抜き コーガン・ウォラック型の課題(個人としての判断か集団判断かが分かる) リスキーシフト(集団での議論は複雑で高度な処理ができなくなり、冒険的な選択を選ぼうとする) フレーミングの効果
三章
権威主義(アドルノの研究が有名) ファシスト傾向 ドグマティズム(教条主義) 因習主義 反ユダヤ主義 エスノセントリズム(自民族中心主義) 因習的家庭観 形式主義 ロッドアンドフレームテスト(物事を認知するにあたって、他律的な文脈の影響を強く受けるかを調べる) 属事主義(筆者の造語。事柄の是非を基本としてものを考える) 属人主義
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無責任というか、責任不在というのはストラクチュ アルに説明される。「権威主義」と「属人的な運 営」の二軸である。
この二軸を中心に、1999年世界で最も被曝した死者 を出した「東海村JCO臨界事故」が分析されてい る。
その後13年を経て発生した3.11の原発事故(および その後の責任処理)という事象を振り返ってみる に、あまりにも本書が十分に理解されていなかった 事が悔やまれてならない。
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無責任に端を発する組織や構成する人間の問題点・リスクについて、発生原因や対処法を教えてくれる。
筆者は原子力安全委員会の専門委員としても活躍された方で、JOC臨界事故の事故調査も行っている。前半はそれら事故の発生した経緯について、多少難しい専門用語などもありながら、手続きや手順の問題点を洗い出す。その要因としては組織の体質や過度の利益追求などを挙げる。危険を扱う現場でいとも簡単に崩れていく状況を見ながら、私が現在所属する会社にも似た様な傾向はあると感じる。
本書中盤以降は社会心理学から組織に潜む危険性・リスクを同調生や個人の認識の低さ、組織風土など一つずつ発生要因とプロセスを説明していく。ここではほぼ確実に読み手自身あるいは読み手の属する何らかの集団・組織にも、複数の一致性を見出す方が多いのではと感じる。
特に会議のシーン、参加者の一人一人の顔を思い出しながら、心理的に当てはまるタイプを見つけられるだろう。だから毎回あの定例会議の結論はこうなるのか、という具合に。
上司や社風にもだいぶ近い感覚を感じられ、業績はまあまあでも実のところ、危ないのではと恐怖も覚えた。
私自身も社内の多くのプロジェクトに参加、もしくはリーダーとして率いる側の立場にあり、現在進行形の状態だ。そこには多数の問題、複雑な課題に日々立ち向かう必要があり、場の空気や社風、関係者の力関係を見るなどして意見を出しきれない事が頻繁にある。組織以上に自身の不甲斐なさを感じる。
後半はその様な中でどの様な意志と立ち回りで乗り越えていくか、技術的な参考になると共に精神面で勇気・力を貰える。始めに描かれた臨界事故も誰かが防げたのではないか。
まずは立ち向かうスキルと自信を身につけるためには、幅広い知識に触れて吸収しようとする努力は怠れない。ある日私にも自信と勇気が後押しして、現在難航中かつ出口の見えないプロジェクトを中止に追い込む様な時が来るだろうか。
本書は明日の自分を変える力と知恵と勇気をくれる。