紙の本
結末の意外性とルイス・キャロルの性癖
2021/12/23 16:26
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投稿者:ポワン - この投稿者のレビュー一覧を見る
綾辻作品の特徴は正々堂々と伏線をはるところにある。したがって、犯人やトリックは大体検討がつくのだが、詳細部分が、なおぼんやりしている中で種明かしが披露される。それを、物足りないと思う人もいるだろうが、読者に分からせないように努力した結果、ストーリーが破綻したり、伏線が薄くてそんなこと書いてあったっけ?と思わせるよりは、はるかに良い。
そして、この作品だが、犯人もトリックも大体、見当がつく。しかし、このトリックにはどうしても、ある物が足りない。読者を悩ませるのだが、最後に意外な解決が待っている。
この意外というのは、事実が意外なのではない。ここで、あれを持って来たか!という意外性である。しかし、これに気づくためには『不思議の国のアリス』をかなり熟読する必要があるのではあるまいか。しかも、原文で読んでおく方が望ましい。どの部分かというと(少しだけネタばれになるかもしれない)
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antipathies
つまり、読者もアリスとともにウサギの穴に落ちれば、大いにヒントになったのである。
これは想像なのだが、著者も『不思議の国のアリス』を読んで、このトリックを思いついたのではないか。この作品を存分に楽しむためには、ぜひ『不思議の国のアリス』を読んでいただきたい。
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最期に、『不思議の国のアリス』の作者ルイス・キャロルの性癖について述べておきたい。『黒猫館』が出版された当時は、この性癖についてわが国でも尾ひれがついて、さかんに言われていたようである。中には訳者が解説でそのように言及することもあった。現在でも、いわゆる知識人と言われる人が「間違いない事実」のように性癖について言うことがある。しかし、このことは十分な根拠があることではなく憶測の域を出ないし、このような言説が独り歩きしてようにも思える。『黒猫館』の中でこのように書かれていたとしても、読者はそれをそのまま信じるのではなく、事の正否をよく調べていただきたい。
紙の本
館シリーズ
2019/01/19 18:01
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投稿者:Otto - この投稿者のレビュー一覧を見る
十角館と時計館に続いて、江南が登場するところが、個人的にとても嬉しかったです。一冊の手記をもとに、繰り広げられる出来事にわくわくさせられました。
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投稿者:ヴァン - この投稿者のレビュー一覧を見る
綾辻行人氏の館シリーズの1つ。
館シリーズの中では知名度がやや低いが、
綾辻氏お得意のあのトリックがふんだんに使われた名作。
その分好き嫌いも激しいが、あとがきにあるように
一部に気づかせて重要な部分に気づかせない。
100%わかった人はすごいと思う。
伏線に次ぐ伏線で、どのページのどの描写も見逃せない。
解答編で解説はあるが、ホントに?ともう一度読み直したくなる一作。
紙の本
1周目より、2周目が面白い!
2015/08/08 12:52
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投稿者:じろきち - この投稿者のレビュー一覧を見る
事件の全容が明らかになってから、読むと「あ、だからこんな言動を!?」と新しい発見ができる。
また、他のシリーズで軽く述べられている人とのつながりが、実はこの事件の大きなキーになっているなど、館シリーズを改めて読み返す楽しみができる一冊!
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『館シリーズ』改訂版の最終巻。
旧版も当然持ってはいるのだが、流石に細かい内容までは覚えていなかった……ストーリーの大まかな流れは読んでいるうちに思い出してきたのだが。
この『黒猫館』を最後に、『館シリーズ』は長い休止期間に入ったのだった。『暗黒館』が出たときは色々な意味で驚いたなw
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かって黒猫館の管理人だった老人の記憶を取り戻すため、鹿谷門美と河南は老人の持っていた手記の謎に迫る。
綾辻さんの妙技がさく裂した作品だと思います。伏線の量がとにかくすごい……。なんとなく引っかかった部分があるにはあるのですが、そういう事かあ、と納得しきりです。手記の鬱々とした感じも嫌いじゃないです。
ただ自分は館シリーズは飛び飛びに読んでいるのですが(十角館、迷路館、時計館が既読)、そうした作品たちに比べると殺人や犯人についての謎が今一つ地味だったかな、という印象を受けてしまいました。読んでいくとそこがメインの謎じゃないというか、それ以外に隠された謎をきちんと解かないと、すべてが分からない、という非常に凝った構成になっているのですが、その分分かりやすいエンターテインメント性が、他の作品と比べると弱いかもしれないです。
それでも館自体の発想は、なんだかロマンチックな面も感じられてとても魅力的だと感じました。
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今年一冊目は綾辻と決めておりました。新装改訂版ラスト。あとがきで宇山さんのお名前を見かけてほろりとしますね。
ルイス・キャロル作をモチーフにしたミステリ、綾辻版。ミステリ作家なら一度はモチーフとして取り上げていそうなネタ。大体アリスネタって原作の論理パズル、意味深な会話、奇妙な登場人物(人じゃないのもいっぱいいるけど)あたりを組み込んであるけど、これはそういうのではないよなぁ、と改めて思いました。これ、あれだ、初読、再読時には「不思議の国のアリス」を知ってはいたけどちゃんと読んではなかったし、「鏡の国のアリス」も読んでなかったんだよ。ここ数年の間にどちらも読んだから、出てくる小道具にああなるほどなぁ、と。
スムーズに進む話運び、伏線の折り込み具合、回収の仕方、タイミング、やっぱりすごい、と思わざるを得ない。オチを覚えているからこその楽しみ方がまだまだ全然ある。ところどころに時計館や迷路館の名前が出てきて、また読み返したいなぁ、と思いました。その前に暗黒館の文庫だけどね。
抜粋。中村青司が懇意にしていたという教授のセリフより。
「中村青司、か。――ふむ。憶えておりますよ、むろん。ありゃあ、儂の知り合いの中でも五本の指に入る変人だった」
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新装改訂されるのを待って読んだ本作。本氏の作品では、十角館・時計館の名前がよく挙がり本作に過度の期待はなかったのですが、意外とハマりました。今回の内容も、現実ではありえないだろうけどもそれこそがミステリーの醍醐味。
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今回は結構やさしめだなぁと思いながら読み進めた。
例の“どじすん”発言をはじめ、
随所にちらばる伏線を拾いつつ…
おおかた予想通りのオチ…かと思いきや
最後の最後で、驚愕の事実発覚。
巧妙な仕掛けにすっかり騙され、
このラストのどんでん返しを味わう時の快感たるや。
『不思議の国のアリス』と『鏡の国のアリス』、
それぞれの童話をモチーフに建てられた館。
赤道を境に向かい合う“ふたつの”館。
実際に島田さんたちが
訪れた館の構造や色が違っているのは、
手記の方が、鏡越しの世界のようにわざと反転して
書かれたものなんだと思い込んでいたので…
手記の内容が、まさか海の向こうのお話だったとは。
これはなかなか予想し得ない…。
回転灯が赤と青のパトカーなんて日本にはないのに、
なんで気づけなかったのか…くやしいなぁ。笑
ミステリの醍醐味やおもしろさを
これでもかってくらい実感できた一冊です。
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新装文庫版再読。やっぱりこれは最大の大技トリックでインパクト抜群! 再読が楽しい一冊です。
そしてこの館は。おそらく、一番まともに住んでみたい館かも(笑)。
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記憶をなくした老人。失われた自分を取り戻す為に自らが遺した手記を謎解く。
そこに書かれていたのは、一年前に黒猫館で起こった奇妙な事件の詳細。
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アリスは白兎を追いかけて穴に飛び込んだ。 アリスが黒い子猫を抱いて鏡を覗き込むとこよから始まるんだよ。
こっちは館モノらしいトリックとストーリーで面白かった♡
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十角館以来久々に読む綾辻行人の館シリーズ。
そこここに散りばめられた伏線、館に関する驚きの真実といい、満足のいく面白さだった。
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【あらすじ】
6つめの「館」への御招待―自分が何者なのか調べてほしい。推理作家鹿谷門実に会いたいと手紙を送ってきた老人はそう訴えた。手がかりとして渡された「手記」には彼が遭遇した奇怪な殺人事件が綴られていた。しかも事件が起きたその屋敷とはあの建築家中村青司の手になるものだった。惨劇に潜む真相は。
【感想】
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ここまでスケールの大きいミステリーギミックは初めてだった。読み終えると、結構分かり易い伏線が至る所にあったなぁと気付かされるのだが、読んでいる最中は全くその展開が読めなかった。かなり面白いと思う。