紙の本
季節ごとに京都を訪れずにはいられなくなった、喫茶写真家の京都カフェエッセイ
2016/05/26 18:08
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:佐々木 なおこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
「京都の街歩きがもっとも快適になる時節は、
六月の梅雨入り前のころだと、
祇園の細い路地のカフェで教えてもらったことがある。
少なめの観光客。草木の緑がいよいよ
濃さを増していく時期の大気の輝き。」
ここを読んで、ほぉっとため息が出る。
まさに、これからの季節!
喫茶写真家でもある著書の川口葉子さん、
京都を暮らすように旅する。
例えば春に一週間ほど京都に滞在して、桜の名所を歩いてみたり、カフェに出かけてみたり。
親しくなったカフェの店主に書いてもらった地図を頼りに歩いていると、なんとも素敵な光景に出くわします。
それは廃屋めいた洋館、門扉の横には一本の大きなしだれ桜が満開でした。
川口さんは長い間桜とアパートメントを眺めていました。
と、そこへこの洋館の住人らしき人が通り、一緒にアパートを眺めていたご近所さんが思い切って声をかけてみたら、
ウクレレ教室を開いていて、これからレッスンがあるとのこと。
その流れで、見学させてもらることになり、思いがけなく洋館に足を踏み入れることまでできたのです。
「新幹線で東京に戻ってみれば、アパートメントの桜は夢としか思えず、
私は季節ごとに京都を訪れずにはいられなくなったのだ。」
京都の春夏秋冬、評判のカフェを巡っている気分で、深く深く楽しめる一冊。
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「はじめに」から引用…
「疎水のほとりに建つ、しだれ桜の花の色に染まった古いアパートメント。
この本は、季節ごとの京都の旅のなかで、私がどのようにしてその謎めいたアパートメントや、魅力あるカフェの数々にめぐりあっていったかを記したものです。」
一つ一つの短いエッセイに添えられた写真もどれも魅力的だった。非現実的というか幻想的というか、ふわふわとたゆたう感じ、なんともいえず好き。
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川口葉子さんの視点を本を介しておすそ分け
京都 カフェと洋館アパートメントの銀色物語
「疎水のほとりに建つ、しだれ桜の花の色に染まった古いアパートメント。」
という冒頭の一行を読んだ瞬間、本を閉じました。
この本は「流して」読みたくない。じっくりと、その単語の意味
ひとつひとつを噛みしめながら読み進めていきたい、
と辞書をひもとき、「疎水」とは灌漑のためなどに切り開いた
水路だと知ります。
読み進めていくとその疎水の手掛かりになりそうな場所の記述が
出てきましたので、次は地図でその場所を確認し、その土地の
風景を文字から立体化させ、思いを馳せます。
次々と紹介されるカフェはどこも美しく、どうしてこんなに数多くの
魅力的なカフェを見つけられるのだろう、と思ってから、
著述家に加えて喫茶写真家である川口さんが、
魅力的に感じるところにフォーカスを当てているから、
その魅力が伝わってくるのだと気づきます。
川口さんの視点を、本を介しておすそ分けいただいている、
そんな気持ちになります。
カフェをこよなく愛する川口さんの周りでは、
まるでよしもとばななの小説に出てきそうな驚くべき出来事が
次々と起こります。
まさにタイトルが「カフェと洋館アパートメントの銀色物語」とあるように、
ただカフェを紹介する本にとどまらず、一冊通した物語としても
読みごたえがあります。
久しぶりに、京都に出かける前に読めて良かったと、心から思います。
喫茶チロルにしようかな、それともチェカか、、と悩む時間もまた幸せです。
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カフェの紹介をしているのかなと思っていたら、主に
洋館アパートメントをめぐるエッセイだと読んでいくうちに
気づきました。
最後にカフェの詳細は記していますが、これはあくまでも
エッセイです。
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この手のカフェ本の中では異色といえるほど物語性のある本。文章の濃度、写真の量、紹介されているカフェの数とも商品としての本には適度な塩梅。
京都のカフェはいろいろ行っていたが、新しい店も多いせいか行ったことない・知らないところが大半だった。やはり京都のカフェレベルは高い。
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ちょっと心も身体もしんどい時に、気が向いて読んだ一冊です。京都や神戸などの古い洋館は、私にとって懐かしく、良いもの。
毎日曜日、朝のコーヒーを珈琲屋さんへ飲みに行っていた祖父の面影を追っているのでしょうか。
よくまとまった、女性が好きそうな文章で、ほっと息をつかせてくれるのがいいですね。読み始めはそんなに、出色の出来ではないと思って読んでいたのに。
続けてページを捲っていると、不思議。肩の力が抜けて、美味しいコーヒーが飲みたくなる。
一杯目はアイスで喉を潤して。
二杯目はホットで
お店ご自慢のカップを愛でながら。
そう思わせてくれる。
中でもわざわざ東京から訪れてみたいのは『喫茶ソワレ』。美しいゼリーポンチに一目惚れ。これにどんな珈琲を?
京都の店は敷居が高く、私が行ってもそんなに良い対応をしてもらえないかもなので、本の中の旅だけでも、十分満足。
そういう意味では、良い本で、悪い。
きゅんとなる、楽しい本でした。
アクセスの紹介は簡単に書かれていたので。詳細は是非別の本などでお店を調べて下さい。
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カフェというより喫茶店と呼ぶのがふさわしい趣きのある喫茶店と、京都のアパートをめぐる上質なエッセイ。著者が喫茶店をこよなく愛していることが端正な文章から伝わってくる。喫茶店に行き、コーヒーとフレンチトーストを食べたくなった。