紙の本
自分の弱さを認められるヒーロー
2001/11/10 19:31
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投稿者:APRICOT - この投稿者のレビュー一覧を見る
競馬シリーズの1968年の第7作。
主人公ジェイムズ・タイローン(タイ)は、大衆向け競馬新聞(日本で言えばスポーツ新聞?)の記者。妻は重度の小児麻痺で、体を全く動かせない。タイは妻を愛し、かいがいしく面倒を見ているが、肉体の欲求はどうにもならず、ひそかに別の女性と交渉を持っている。
そして、この浮気を敵にかぎつけられて脅迫されるが…これに対するタイの行動にはものすごく驚いた。浮気に限らず弱味を握られて脅された場合、これが最も簡単で最良の対処方法だと、頭ではわかっている。だが、わかっていても、なかなかできるものではない。私もできる自信はない。たいていの人間がこれができないからこそ、さまざまな悲喜劇が生まれ、ドラマになっていると言っても過言ではない。
フランシスの他の主人公、特に「大穴」や「利腕」のシッド・ハレーには、タイのような対処の仕方は絶対にできないだろう(ハレーが浮気をするかは別問題だが)。そして私は、自分の弱さをさらけ出すくらいなら死んだ方がましだというハレーよりも、自分の弱さをサラリと認められるタイの方が好きなのだと思う。
なお、競馬シリーズのタイトルには、内容を的確に表わしていないものが多いが、「罰金」は誤訳だと思う。原題は “Forfeit”だが、“没収”とした方が適当だろう。馬が出走を取り消したため、賭け金を“没収”されるという意味である。
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7−8
今いち…
競馬記者ジェイムズの妻は体の90%が動かせない難病にかかっている。
彼はその妻を標的に、ある記事を阻止されようとする。
ほろ苦い話です。
迷いの見られる話です。
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あらすじ:「絶対に自分の魂は売るな、、、自分の記事を金にするな、、、」そういい残してベテラン記者バートは7階のオフィスから転落した。ジェイムズは彼の言葉の真意を掴めずにいたが、バートが大々的に買いを勧めていた馬がレース直前に出走を取りやめていたことを知る、、、。
たぶん、女性には受けが悪いのでは、、、。だが、ウイスキーを無理やり飲まされてからの理由が分かってからの展開はもう面白いに尽きる♪ 一気にラストスパートだ!
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名作揃いのフランシス作品の中で、ベストとは思わないけれどもかなり気に入っている作品であった。今回本当に久しぶりに読み直してみて、頭の中にあったイメージよりもずっとずっと「異色作」であったことに驚いた。
事件としては、そう珍しいものではない。主人公は清廉潔白とは言い難い新聞記者である。彼の友人が自殺し、その背景を主人公が探るうち深入りしてしまい、敵の執拗な攻撃に遭う、というプロットは、フランシスの場合むしろよくある話だ。敵の脅迫に屈しない主人公の闘志も、いかにもフランシスらしい。
例外的なことのひとつは、主人公の「家庭環境」である。前シリーズの中でももっとも印象的と言っていい。そして、そのことが主人公の心理に与える大きな影響は、読んでいてハラハラしてくるほどだ。一人称の物語の場合、どうしても主人公の視点で物語を見ていくのだけど、それを少し批判的に読んでいくと、ますます苦みが感じられる。
そういうことを背景にした、主人公の振る舞い(ネタバレにならずに書くのはきわめて難しい)は、まさにシリーズ中では異色中の異色で、全作品を読んだ後で改めて読み直すと、本当にびっくりする。それが心理的な意味でも彼を追い詰めるわけであるし、彼が戦う相手が自分自身であるという点で、中期の作品の(毛色の変わった)先駆けなのかもしれない。
ただし、最後の数行はいただけない結末で(すごくわかるけど)、一年後くらいにやってくる次の悲劇をどうしても想像してしまう。男って、悲しいね。
どうも読み直してみると思うのだけど、僕にとってこの作品が魅力的だったのは、強い男のどうしようもない弱さのため、そしてラストに近いところにあるゲイルという女性の言葉のためだろう。全体としてはそれほどの傑作ではないかもしれないが、僕にとっては妙に気になる作品である。
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岡嶋二人を読んだので、返す刀でディック・フランシスも読んでみようと、中古本屋の棚にあった中から1冊買ってきた。
出来が良いのか悪いのか、次からはおススメをちゃんと調べて取り寄せしよう。
本書は1968年に出たシリーズ7冊目ということで、主人公はシッド・ハレーではなく、競馬記者のジェイムズ・タイローン。
冒頭から泥酔した記者の転落死、馬主の娘との情事、全身麻痺の妻との生活という描写が続き、時代柄なのか、ミステリーの割には結構まったりとした通俗小説の味わい。
冒頭の転落死から、記事で煽って前売り馬券を買わせてはレース前に出走を取り消して賭け金は返さずという詐欺疑惑に気づき、紙面にしたタイだったが、取材の合間にも情事は続き、こんなことしていて自分や奥さんには危険が迫らないとでも思っているのかと心配になるが、案の定。
ただ、この主人公、肋骨を折られても、情事を暴かれそうになっても、棍棒で殴られても、急性アル中にされても、怯むことはなく、内面とは異なりなかなかにハードボイルド。
詐欺のターゲットになっている馬を隠したり、病気の妻を逃がしたり、前半のまったり感とは違った後半の急展開はなかなかにサスペンスフル。
悪役の潰れ方には少々残念なところはあったが、これまでの登場人物が勢揃いする障害レースと競馬場の描写は大団円を思わせて良い雰囲気。
一度は心離れた情事の相手の言葉もなかなか泣かすし、それを踏まえた妻とタイの心模様も物語の最後を飾るに相応しく。
最後の2行がなかったら、とても良い気持ちで本を閉じられたと思うが、なんであんな終わり方にしたかなぁ…。
久し振りに洋物のミステリーを読んで、人の名前を覚えられないわ、そこに馬の名前も加わるわで、いささか往生した…。
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ディック・フランシスの競馬シリーズの最大の魅力は競馬関連の漢字二文字の邦題にある(おい!)
『重賞』や『大穴』のように直接的な競馬用語のときもあれば『興奮』や本作『罰金』のような競馬を連想させるようなものもありと様々だ
もうこんなことされたら全作集めたくなるよね!
もちろん原題が漢字二文字のはずがないので(おそらくイギリスには漢字文化はないと思われる)これはもう早川書房の商売がうまいということだ!馬だけに
『罰金』取られてもおかしないオチ
そして本作も『罰金』とられてもおかしくない結末でした
もう大昔の男尊女卑の考え方がどスレートに出てる男にとってだけのハッピーエンド
昔はそれを表現しちゃうことが当たり前でむしろ称賛されてたと思うと悪寒が凄いんだけど
その当たり前を知るということはそれはそれで意味があるのかなと思ったりもしました
あ、でもディック・フランシスは不朽の傑作のほうが圧倒的に多いのでやっぱりたくさんの人に読んでほしいなぁ