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ハリウッド版ゴジラ映画最新作『GODZILLA ゴジラ』のノベライゼーション。ストーリーの全容が明らかになってしまうので日本での劇場公開日である2014年7月25日に解禁となり書店に並ぶ「リアルタイム発売」がなされた。
ストーリー進行は映画に準じており、映像では描ききれなかった設定や心理描写がされており、映画のサイドリーダー(副読本)としての要素も豊富に含まれている。
日本の架空の都市「雀路羅(じゃんじら)」市の原子力発電所が謎の怪獣によって破壊された翌日、その地域は日本本土であるにもかかわらず突然アメリカ軍による管理下に置かれたり、怪獣の米本土上陸を阻止する為に核兵器の使用を芹沢博士(平和憲法での日本のメタファー)が広島の惨劇を例えて中止を進言するも、アメリカ軍はそれを全く聞き入れずに強行する様は現代のアメリカの世界政治に対する強引な姿そのままであり、怪獣よりもタチが悪く恐ろしい。
ストーリーの設定においては、アメリカが1946年から1958年まで23回にわたって行ったビキニ環礁での核実験は、ゴジラの存在を知ったアメリカ政府と軍がゴジラ抹殺の為に行ったという部分は、日米戦争において「戦争の早期終結(平和)のために、広島と長崎に原子爆弾を投下したのだ」というアメリカの主張と合致する。
また、日本が生んだキャラクターのゴジラと敵新怪獣が最初に会戦する場がハワイ島であるくだりは、旧日本軍がハワイの真珠湾を攻撃して始まった大東亜戦争(⇔太平洋戦争)での「リメンバー・パール・ハーバー:真珠湾を忘れるな!」であり、怪獣たちがアメリカ本土に上陸し、戦場と化すサンフランシスコは日米開戦初期にまことしやかに語られた「ハワイに次いで日本軍はサンフランシスコに攻めてくる」という恐怖と、ハワイでアメリカの国土が初めて攻撃されたというトラウマをゴジラを用いたメタファーを映像化したようにも見える。
日本が広島、長崎の惨劇を語り継ぐように、アメリカもまた「真珠湾の悲劇と屈辱」を忘れていないのだ。
アメリカが原爆を使用してまで息の根を止めようとした『ゴジラ』、ハワイやサンフランシスコに上陸して暴れまわった『ゴジラ』。それはアメリカ人の深層心理にある『裏の日本の姿』そのものではなかったか。しかし、この物語ではアメリカは『ゴジラ』を≪利用する≫ことで災厄から逃れる。まるで「日本は我々のモノ」と宣言したような印象だ。
「集団的自衛権」は日本が正面切ってアメリカという国に対して外交的に「NO!」がちゃんと言えるようになってからでないと危ない。 っと強く感じた怪獣映画。