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岡田斗司夫さんの本のなかでちらと話が出ていたので、興味を持って手に取ってみた。聞きしにまさるダイタンな回答。これは…タイトル詐欺です。
「人生の救い(なんてものはありません。来世に期待して、今はきっちり苦しんで生き抜いてください)」
とでも言うべきか。
どん底まで落ちて痛い目を見なければ、人間そうは変われないし、そこからが本当の人生ですよ、なんて、苦労人に言われたら「ははぁ~」と頷くしかない。
投稿者の人生相談の筈なのに、気づいたら車谷さんの人生の話になっているあたりがツッコみどころ。でも、面白い人だなと引き込まれる。
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そもそもにおいて仏教は生きている人間に優しくない。踊り唱えりゃ誰もが死後にゃ極楽浄土、極悪人も死ねば平等に仏様なのに対して現世はひたすら一切皆苦、そこには福祉やボランティアの思想は微塵も存在しない。だいたい人間の想像力ってのは人種・宗教を問わず天国より地獄に向いているんだよ。そんな人生ハードモードな視点からの悩み相談ぶった切りは当然の様に面白く、表紙を見返したら思わずタイトルが「人生の呪い」と見えてしまうほど。とはいえ十代からの質問には丁寧に返している辺りは情を感じて思わずほろろとしてしまう。ずるい。
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凡百の人生相談と違ってオモロいぞ。
問題の解決になってるかどうかはともかく、相談事に対する回答の基本パターンが「人生なんてしんどいもんで、エエことなんてそうあるもんじゃない。銭金欲望で幸せにあろうとしたら身を崩す。しんどい思いを楽しみなさい」だもんなぁ。
救いのない回答が救いになる。仏教の原点ここにあり!
極楽浄土に行くために、お布施払ったり、高い金払って戒名付けたり、そういうのは仏教の原点から外れてるってことだろうなぁ。
俺は、現世の楽しいことを楽しみたいと思いますけどね
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新聞に連載されていたらしい、人生相談の文庫化。
最近は新聞を取っていないので、そのようなコーナーがまだあることにまず驚く。
昔は興味深く読んだものだけど。
しかし、ふと思った…
本当に一般人の投稿なのか?
それにしては文体が統一されすぎている気がしないでもないが、本当だと信じるとして。
車谷氏は、それぞれのお悩みにつき、ある時は毒舌でもって切り捨て、ある時は真摯に相談に乗っているように見せかけながらも、韜晦しているのでは?と思わせる。
その回答は一見、「言ってること違うじゃない!」という感じなのだが、実は「言いたい事」は全部同じなのかもしれない。
「あなたより救われない人がいます」
「人間はいつか死にます」
「人は死ぬまで変わりません」
「悩みは解消されないので、他の事を考えましょう」
「新興宗教は金儲けでやってるんだけど、あなたがお金払っていい気持ちになれるなら、自己責任でどーぞ」
つまり、半眼でこう言っています。
『さだめじゃ』
後ろの方には、若い人からの相談が載っていて、さすがに人生経験の少ない彼らに対しては、良い大人として回答しているように思いました。
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新聞で連載されていたのをまとめたものですねぇ…自分は車谷さんのファンですのでまあ、楽しめましたかね…。基本的に絶望の中に居るというか、もう生きている、その状態が車谷さんにとっては苦痛なんだそうで、そうした視点から回答するものですから、相談者からしたらもう…絶望と言いますかね、突き放されたような感じを受けるんじゃないでしょうか? 社畜死ね!!
ヽ(・ω・)/ズコー
でもまあ、僕も個人的には車谷さん側の人間でしてアレですね、悩んでもしょうがないと言いますか…こういう、人生相談とか、他人に相談して答えをもらうっていう考え自体アレかと…まあ、他人に相談して少し気が楽になる、そういう意味合いであればいいのですけれども、本気のアドヴァイスをもらうというのはちょっと違う気がしますねぇ…さようなら。
ヽ(・ω・)/ズコー
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「いやあ、今日も車谷先生、豪快に殺したはるわ~」
万城目学による所感。先日、万城目の『ザ・万地固め』の中に本書の”解説”が丸々収録されていた。それを読んで、こりゃ面白そうと読んでみたもの。確かに、面白かった。
人生相談ものは、なんと言っても悩みそのものより回答者の人となりが出る回答っぷりが見もの(読みもの?!)。お題を与えられて答える、いわば大喜利のようなもんだ。
古くは中島らもの『明るい悩み相談室』にハマり、最近読んだものでは、伊集院静の『悩むが花』が痛快だった。楠木健による、いかにも胡散臭い回答だらけの『好きなようにしてください』も、ある意味、こうした人生悩み相談の本質がよく分かる。その楠木自身が引用しているように、「結局は「がんばろうぜ」になる相談(水野タケシ)」ということだ。
が、この車谷長吉は、ちょっと違う。かなり違う。万城目が言うように、ほとんど相談になってない。それどころか「がんばろうぜ」も言ってない。思いっきり相談者へのダメ出しオンパレードだ。 相談者に対して「あなたはxxxな人間だ」と言い切る。曰く、
「あなたはなまくらな人です。」
「あなたは小利口な人です。」
「あなたの夫は駄目な男です。」
「この人は一生救われないな」
万城目じゃなくても、
「いやあ、豪快に殺したはるわ~」
となるわな、こりゃ。
万城目の解説をさらに引用すると
「悩み事と言う精神の暗き淵から発せられた訴えに対し、さらなる奈落から回答する。まったく新しい悩み事相談のかたちを、車谷さんは作り出したのではなかろうか。」
これに尽きる。
が、己の艱難辛苦を舐めた人生の実体験、仏教徒としての、ほとんど悟りの境地から発せられる言葉の数々は、実に重いし、真実を突いているようで、相談者もぐうの音も出ない趣きがある。
とある悩みで、このままでは人生が破綻してしまうという相談には、
「世の多くの人は、自分の生はこの世に誕生した時に始まった、と考えていますが、実はそうではありません。生が破綻した時に、はじめて人生が始まるのです。」
とむしろ破局へ進めと言う。
行動を起こさず、何か良い対処方法を訪ねてくるような質問者には、行動を起こせと言い、
「その結果、重大なことが起きれば、その責任はあなたが取ればいいのです。いやなことに黙って耐えるよりは、ずっと気持ちが楽になるはずです。
人間世界には、楽な道はありません。」
と、喝破。
夫の浮気を相談してきた主婦が、世間に後ろ指をさされないよう上手くやめさせられないかと相談してきたら、世間体を気にする相談者をまず責める。
「だから、あなたの夫はそこにつけ込んで、浮気を繰り返してきたのです。責任の半分はあなたにあります。(中略)まず反省すべきはあなたです。」
すごい!すごいぞ、車谷先生!!!!
ある意味、ちゃんと回答してるとも言える。人生の救いを提示しているんじゃなかろうか。
言われた本人は、相談する前よりもいっそ落ち込みそうだけど(笑)
そんな車谷さんだけど、心を落ち着かせるため、精神の安定を得るために、奈良を訪ねるよう言ってくれるのは、いいね。
「私は仏教徒なので、奈良県の大和盆地のお寺を訪ね歩くのが好きです。(中略)一人で行けば、心静まる時間が得られます。あなたにもぜひお勧めいたします。」
著者の作品は過去1冊しか読んでいないが、人となりを分かった上で、改めて読んでみようと、少し、思った。
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2015年に69歳で逝去した車谷長吉が、朝日新聞で連載していた人生相談をまとめた一冊。
とはいうものの極めてアクの強い作風を持ち、「人生が破綻していく最中でも人間は甘美を感じることができる」という人生観を持つ著者のことであり、一般的な人生相談からはあまりにかけ離れている。
例えば夫の浮気を知りながら世間体を気にする余りに身動きが取れなくなっている女性に対する助言はこのように語られる。これが真理だとしても、なかなかここまでストレートにアドバイスをできる人間はこの世にはいないだろう。
「自分の世間体など捨ててしまえばよいのです。恥をかいて、醜態をさらせばいいのです。道の真ん中で、夫とその女に怒鳴り散らせばよいのです。泣きわめけばよいのです。そして近所の人たちに事実を知ってもらえばよいのです。その女の家へ怒鳴り込んでいき、女の夫にも知ってもらえばよいのです。そうすれば気が楽になりますよ」
(本書p98)
それでも、新聞という媒体のせいか、ときたま投稿される中学生・高校生からの悩みに対する助言は慈悲深く、この二面性にも彼の人間観が強く出ているように思う。
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「人としてこの世に生まれてきたことには、一切の救いはありません」
車谷さんが答える、新聞のお悩み相談をまとめたものですが、とても面白かったです。
悩みの相談に、更に深いところから答えるというような一冊でしたが、読んでいるうちに心が落ち着いてきました。
悩み相談の解決にはなってないよなぁ…と思いますが、仏教の教えもあり、穏やかな気持ちです。
生きていれば悩み苦しみは尽きないですが、人生そんなものだそう。生きます。
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車谷長吉さん・・・破天荒な半生と現在の静かな生活。それは理想形のひとつ。人生とは正解などないもの、そのときどきに応じて根拠めいたものを考えて行動はするけれど、結果はさまざま。そういう意味では、人生の無常感を感じさせてくれる小説群。そこから出てくる人生相談もまた、無常を知らずして生きることの虚しさを語る。
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植本一子さんの書籍に出てきたので気になって読み、ちょっと納得。
複数の回答で同じ話が出てくるのがミニマルなグルーヴを生んでいて、よい。
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むちゃくちゃな解答も多いけど、なるほどなと思うものも多い。
「私は障害者だから…」という部分がなんか気に食わないけど、でも実際はそうだなぁと思った。
世の中、綺麗ごとでは済まないんだと思う。
「人の幸福の第一は人から愛されること、第二は健康です。第三は必要最低限度のお金です。」
という所から、幸せって無くなってはじめて気づくものだから、肝に銘じておこうと思った。
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先天的な障害と貧乏と…色々薪炭を舐めて仏の道に明るい作者の前にあっては、どんな質問も薄っぺらで、どう一蹴されるのか心配になってしまう。それでいて爽快。
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大半を通勤バスの中で読んでいたので、
声を出して笑い出しそうなところを、
堪えるのが大変だった。
読みすすめるにつれて、
車谷長吉という魂から紡がれた言葉が、
いつだって柱となり、
普遍性を生み出していることに慄き、
心の底からため息が出た。
身も蓋もないような言葉の連なりなのだが、
それが一貫していると、
究極的な真理とおもいやりを体現するようだった。
特に10代、もしくは20代前半の相談者への、
優しさたるや。
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この本は結構前に読んで、読むのは辛かったんだけどこの本の言葉はずっと心に残っている。
人生には救いがないけど救われるものもあって欲しい。
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「豪快に殺している」という言葉の通り、全く相談に乗っていない新しい人生相談。解説が素晴らしい。
何を聞いても、普通に考えて私の人生のほうがもっと辛いよ?そもそも人生に救いなんて求めてるの?そんなのないのに?と作者に返される相談者。それだけならきっと途中で本を閉じますが、最後まで読んでしまうのは時折ハッとする言葉があるからだと思います。