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思想家・内田樹、精神科医・名越康文、そして作家・橋口いくよの三人による『ダ・ヴィンチ』連載の鼎談を書籍化した一冊。(内田センセイの「思想家」という肩書きは初めて見たが、大学教授を退官されたからなんだな。)様々な話題に切り込んで、普段思っていても言葉にできないようなことを巧みな表現で表してくれるのは、気持ちいい。
取り上げられているトピックであちこちに出てくるのは「上から目線」「揚げ足とり」が頻繁に起きるソーシャルメディア上での言葉の使い方。内田センセイをして「ネット上の言葉がもつ断定性・攻撃性をどう抑制するのか、という問いに適切な処方を見いだせない」と言わしめる状況に、鼎談のトーンも一段と上がる。言われるまで気づかなかったが、内田センセイはブログとツイッターでは、一人称や語尾を使い分けている。これは確かにひとつの有効な対処方法なのだが、三人の鼎談ではそれを大きく飛び越えた「ツイートは五・七・五で」という意見まで飛び出す。しかも、それは冗談どころか説得力十分とくる。
そんな達人たちが繰り出す金言は、留まるところを知らない。おそらく科学的な根拠などないのだろうが、「言葉を飲み下す」「知性は贅肉のようについてくる」「愛の反対語は敬意」などなど、読めばいちいち頷いてしまう。その中でも、ワタシにもっとも響いたのは「男は老いてガランドウになるといい風合いが出てくる」という言葉。これには大いに納得。(大ブーイングが起きるのを承知のうえで敢えて言うと)ワタシ自身、脂っぽさが抜けてきてラクになってきたのは、きっとこのガランドウ化が順調に進んできている証左なんだろう。