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紙の本
20世紀日本を代表する鉄道技術者の生涯を緻密に描く
2000/07/09 07:31
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:松浦晋也 - この投稿者のレビュー一覧を見る
20世紀日本を代表する鉄道技術者、島秀雄の評伝。鉄道マニアはもちろんのこと、技術と社会と関わりについて興味のある方にお薦めだ。
蒸気機関車D51から新幹線、さらに晩年に関与した宇宙開発まで、島の人生の主題は、急速に進歩した科学技術を社会へどのように適用するかということの連続だった。特に新幹線建設で彼は、新技術をどのように実用的な輸送システムに組み上げるか、また、それをいかにして官僚や政治家の近視眼的な思惑振り切って実現するかという、2つの難関に対して見事な解答を提示したと言えるだろう。
本書は島の死後、遺族が公開した日記や写真などを駆使して、日本の鉄道技術の根幹に関わり続けた技術者の生涯を、緻密かつコンパクトにまとめている。大きめの文章下段の余白に写真と脚注を配置するレイアウトは、理解しやすく、また写真点数を増やすという意味でも効果的だ。
紙の本
2000/7/16朝刊
2000/10/21 00:16
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:日本経済新聞 - この投稿者のレビュー一覧を見る
東京—大阪を最短二時間半で結ぶ新幹線。国内航空路線が発達した今も、昭和生まれの“夢の超特急”は人々の圧倒的な支持を得ている。本書は新幹線の誕生に尽くした旧国鉄のエンジニア、島秀雄の生涯をたどるドキュメンタリー。政治面の最大の功労者だった、第四代国鉄総裁、十河信二の剛腕ぶりなど、わきを固める人びとの素顔も生き生きと描かれている。
新幹線誕生の歴史は、資金難や新幹線反対論との戦いの歴史でもあった。世界銀行からの融資を実現するため、説明資料として「貨物新幹線」の図面をでっちあげた話など、登場する逸話は“夢の超特急”計画がきれい事ばかりでは進まなかったことを教えてくれる。そのなかで、技術と安全性に絶対の自信を持ち、謙虚ながらも手堅い仕事で新幹線の必要性を訴えた島の人物像が、泥臭い物語に清涼感を与えている。
(C) 日本経済新聞社 1997-2000
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