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さすがの上橋菜穂子クオリティではあるものの、、
著者の書きたいことや思いを詰め込みすぎて、登場人物たちに無理やり語らせている印象を受けた。
守り人や獣の奏者は、キャラクターたちがもっと生き生きと勝手に動いてたのに。
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「王様のブランチ」でも取り上げられていた話題作。けれど超分厚いルックス。それも上下巻なので尻込みしつつも、同作者の「精霊の守り人」シリーズにドハマりした経験を信じて着手。
舞台は異世界。致死率の高い病「黒狼熱」から生き残った戦士ヴァン。病と向かい合い、黒狼熱に抵抗しうる薬の製造を目指す医師ホッサル。
彼ら二人の主人公を描きつつ、医療や宗教、民族間の対立など、現世と変わらぬ課題・問題をはらんだ世界が湛然に描かれていきます。
全く新しく対面する世界だったので、戸惑いを覚えることも多々。他民族が暮らす世界で、民族ごとに文化・風習が異なるのですが、それを理解できるまでにやや時間が… また、ファンタジー小説によく見られる世界地図もないので、作中の文章から地理を想像するしか無いなど、作中世界を頭の中で構築するのに結構必死でした。
中盤まではそのような理由もあってなかなか入り込めませんでしたが、イメージがある程度築き上げられて行くと、そこからはのめり込むのは早かったように思います。
上巻では結局相見えることなかったヴァンとホッサルが、下巻でどのような形で邂逅するのか。一件平和に見えても、ふとした弾みで民族間の争いが激化する可能性のあるこの国の行方は?黒狼熱の治療法を確立できるのか?そして、黒狼熱は誰かが意図的に発生させているのか?
まだ前半とはいえ、いろんな問題が解決されていなくて、それらが気になって気になってショーがない。
となるのを予想してたので、持ち運ぶのが大変でしたが常に上下巻セットで持ち歩き、本巻読了後すぐに下巻に着手しましたよ。そうしたくなるくらい惹き込まる作品です。
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「おれは長年、病んだ人を診てきたんだがよ、だんだん、人の身体ってのは森みたいなもんだと思うようになった」
上巻で最も印象に残ったのは、この一言。
この前後に語られる言葉が一番腑に落ちたように思う。
この物語の世界には全く異なる考えを基礎とする二種の医術が存在する。
それはその医術が生まれた国の宗教や文化をも反映していて、どちらの考えが正しいなんてことを語るのはとても難しい。
清心教医術の教えで救われる心もきっとあると思う。
でも医術として(人の病を治癒する術として)優れているのは、(宗教による)禁忌を犯すことを恐れずに命の秘密に迫っていくオタワル医術なのだろうと思う。
人間は命を脅かす病を克服するために治療法や薬を開発していくけれど、世界には次から次へと新たな病が誕生していく。
既知の病だって発病するリスクを下げるよう心がけることしか出来なかったりする。
確実な回避策はない。
ひどく恐ろしいことだ。
薬を飲むことによる副作用や、手術による身体への負荷のことを思うと、自然に治る症状でも薬を処方するような医療への疑問を感じることもある。
医師の診断も100%信頼することが出来るかと言えばそれは難しい。
もし重病になったらどうする?
そんな不安を抱えながらも、そんなことは起こり得ないという顔をして日々を過ごしている。
けれど、それは起こり得るのだ。実際に。
この物語を読んでいて考えさせられるのは、発病した時の対処法ではなく、医療というものへの接し方だ。
恐ろしい病が登場するのだけど、その病の治療法が見つかればめでたしめでたしになるような話ではないと感じる。
病に対してどう向き合うか。
命についてどう考えていくか。
寿命をどうとらえるか。
適切な言葉が見つからないけれど、そういうもっと根源的なことを問いかけられているように思う。
そしてそこに正解はないのかもしれないと思う。
「ふだんは見るこたぁできねぇが、おれたちの中には無数の小さな命が暮らしてるんだ」
「でもよ、後から入って来るやつらもいて、そいつらが、木を食う虫みてぇに身体の内側で悪さをすると、人は病むんじゃねぇかと思ってるんだ」
私の身体は一つの命ではないという考え方にすんなり納得出来る。
身体と心は別物という言葉にも納得出来る。
この世界の人を脅かす病の物語が下巻でどんな結末をむかえるのかまだ分からないけど、命についての真実に誘ってくれるんじゃないかと期待してしまう。
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土地をつくり、国をつくり、民をつくり、
歴史や因果を織り上げて
物語を展開していく著者の力量を感じました。
登場人物が多く、舞台が広く、歴史は深く、
想像力が追いつかないところもあり…
上巻のラストで舞台は整った、
これからどうなるか、楽しみです。
タイトルの『鹿の王』とはなんなのだろう。
文章的にちょっと引っかかるところがあったり、
読みにくさを感じるところもあったので
星3つ。
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分かりやすくするための見取り図は自分で作りましたよ!~アカファ王国が東乎瑠(ツオル)帝国との交渉を有利に進めるために西の山岳地帯の抵抗勢力として残した独角の長・ヴァンは戦いに敗れ,奴隷に落とされ岩塩鉱の人夫として働かされているが,ある晩,黒い獣に襲われ,7日後には彼と幼い少女を残して全員死亡し,逃亡奴隷となった。北のオキ地方から来た入植者とオキ種族の若い男を救って,減税を期待して飛鹿飼育に手を出して手を焼いている一家を助けることになり,北にやってきた。アカファ王国の中枢にあったオタワル貴種の天才医術士ホッサルは岩塩鉱の遺体を見て,かつて棄都することになった黒狼病だと見抜いたが,生き延びて逃亡した奴隷から治療薬が作れるとモルファ族のサエに追わせるが,雪の積もった崖道で獣に襲われ,サエを失い断念した。カザンの王幡候の御前鷹狩りで黒い生き物に襲われ,大きな被害が出たが,その被害者の多くは帝国からの移住者だった。ヴァンとユナが暮らす北の地にも黒い生き物が襲来した。我を忘れて獣を打ち払うヴァンは奇妙な感覚に包まれる。それはユナも同様で,谺主に呼ばれて洞窟に至ると,そこも半仔に襲われ,ユナが連れ去られる。ホッサルはユカタ平原の地を失った火馬の民・キンマの犬使いが絡んでいると睨み,従者マコウカンの生地へ至る~背景を語ったり,聞き慣れない獣が出てきたり,知っている生き物が登場したり,変な漢字の読み方をさせたり,何時とも何処とも知れない舞台を彼女は描いてきたけど,理解しづらいよなぁ。この話には狼と犬の合いの子(これって差別語?)が出てくるけど,そういえば別の本で読んで,猪と豚が同じ生物種であるのと同じように,狼と犬って同じ生物種なんだよね。交雑がダメって話みたいなんだけど…そういう意図ではないですよねぇ
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本屋で見た瞬間にタイトルと表紙を見て一目惚れした作品。架空の世界を舞台に謎の病気が蔓延し治療に奔走するホッサルと強大な帝国との絶望的な戦いを繰り広げた元戦士団の頭で奴隷にされたヴァンの章が交互にくる作品。壮大な世界観の中を冒険がありつつ医療と社会のしくみについて関わってくる。設定を把握するのが大変。でもそれがまとまっておりしっかりと読み進められるのがいい。上巻最後で舞台は整ったようなので下巻を早く読みたいです
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久方ぶりの上橋作品。
ど真ん中ストレートな上橋作品。
流行り病、異民族、医学、宗教、様々なキーワードが複雑に絡み合って、一つの大河を形成している様。
下巻が楽しみで仕方ない。
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二人の人物の話が繋がりそうで繋がらないもやもやとワクワク感が終始感じられた。病のなぞもまだ明らかになってないし、二人が危機に陥ったところで終わったので早く続きが読みたくて仕方ない。ヴァンもホッサルもそれぞれかっこいいけれど、ホッサルは近くにいたら疲れそうだなと感じた。
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さすが安定の面白さ。上橋さんのファンタジーは間違いないから安心して読める。今回は大人が主人公なので、大人向けのファンタジーって感じで割と読み応えもあり。下巻も楽しみ!
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帝国から故郷を守るため、絶望的な戦いを繰り広げた戦士団の頭ヴァンは岩塩鉱に囚われていた。ある夜、不思議な犬たちが岩塩鉱を襲い、謎の病が発生する。その隙に逃げ出したヴァンは幼子を拾い、ユナと名付け、育てるが…。
主人公2人の話が交互に語られる。一方は今後に期待を抱かせるが、もう一方は魅力に乏しいというのが私の感想。上巻を読む限り「獣の奏者」や「守り人シリーズ」のようにワクワクするような展開はなかった。
(C)
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上橋菜穂子さん「鹿の王」上巻、読了。故郷を守るため戦いを繰り広げていた戦士団「独角」。その頭のヴァンは奴隷となり岩塩鉱に囚われていた。ある夜、一群れの不思議な犬が岩塩鉱を襲い謎の病が発生する。その隙に逃げ出したヴァンは、幼子と供に岩塩鉱を抜け出すのだが。。本作も期待を裏切らない上橋さんの魅力が詰まった作品になっています。飛鹿を育て戦ったヴァン、多様な民族と後追い者、医術の天才と謎の病など、これまでの「守り人シリーズ」「獣の奏者」で登場した要素が散りばめられているように感じます。上巻で登場する謎の病の恐ろしさ、その原因の発端が見え始めたところで下巻へ突入。父と子の今後の行方が気になります。
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東乎瑠帝国の支配民ばかりが、疫病「黒狼熱」に苦しめられている。いつしか帝国に併合された王国・アカファの呪いだと囁かれるように。調査するうちに、帝国に恨みを持つ少数民族の姿が明らかとなり、、、。
疫病に挑むのは若き天才医術師ホッサルだ。彼の先祖は、かつて同じ病(と思われる)で祖国を棄てた過去をもつ。彼らはそれ以来国を持たず、文民として支配民に仕えている。
本作を読みながら、私は民族と個人のあり方を考えさせられました。風習や伝承といった智慧が作中でも重要となるように、民族は多くのことを記憶しております。しかし民族は一枚岩ではありません。無闇なレッテル貼りで、虐げられたり、傷ついたりしてしまう個人もいます。どうなることやら、後半も期待です。
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期待通りの、壮大なファンタジー!…の皮をかぶった、ゴリゴリの医療サスペンスでした。華竜の宮思い出した。しかもクライマックスはバイオテロだよ…。だから上橋菜穂子は面白いんだよねー。って、個人的にニヤニヤしてるだけで、物語のテーマはそこじゃないんだけど。
生き延びた者ヴァンと、医療者ホッサルの眼を通して、国と民の在り方、自然と人と病との共生を描いた物語。免疫学を国の有り様に例えたり、医療と称した宗教に物申したり。病の発生は生態系の変化が原因だし、なかなか含蓄が深くて、これやっぱり児童文学じゃないよね。
人はなぜ病み、なぜ、病んでも治る者と治らぬ者がいるのか、ご存知であるのなら、教えていただきたい。そう問うヴァンの虚無に、ホッサルは解答を返せたのか。
たしかに、病は神に似た顔をしている。いつ罹るのかも、なぜ罹るのかもわからず、助からぬ者と助かる者の境目も定かではない。己の手を遠く離れたなにかー神々の掌に描かれた運命のように見える。だか、だからといって、あきらめ、悄然と受け入れてよいものではなかろう。なぜなら、その中で、もがくことこそが、多分、生きる、ということだからだ。
「おまえたちにしてやれなかったことを、縁もゆかりもない人々に、してやってもいいか」おまえたちがうなずいてくれたなら、未練も迷いも消えるだろうに。…死者は答えぬ。答えはいつも、我が身の内にある。
未練を捨て病を連れ、原生林の奥へ消えたヴァン。でも、間違いなく、彼は虚無と添い遂げることはできないだろう。なぜなら、彼は身内を持ってしまったから。迷わずに彼を追う、若者や女たち。縁もゆかりも、もうここにあるのだ。
分厚いのに2夜で一気読み。本屋大賞ノミネートだそうで、みんな読むといいよ!精霊シリーズも読んでみようかなあ。
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故郷を守るために死を覚悟で戦地に赴く「独角」を率いたヴァンは捕えられて奴隷の身に落とされた。そうして働かされている岩塩鉱である日謎の獣の襲来に遭い、人が続々と病に倒れ死んでゆく。その中命からがら逃げだしたヴァンは、ともに生き残った幼女と同行することになる…
という導入部から始まる物語は、いつものように勢いよく走り出し、その先が気になってたまらないという疾走感に満ちています。
今回はけれどアクションシーンよりも「死」「病」という根源的な人間の在り方そのものにスポットをあて、「静」の場面にも重きをおかれています。そのためか、登場人物たちのやり取り、会話がひとつひとつ大切な積み重ねのように感じられました。
ほのぼのした場面にほっこりしつついったいこれからどんな試練が待ち受けているのかとハラハラもしつつ…
どう展開していくのか手に汗握る(手垢のついた表現ですが)上巻でした!
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初めは難しくて、なかなか物語の世界に入り込めなかった。医療として成り立つには、長年の地道な研究にあるということ、また異族間の相反する感情や文化のしがらみが、進退をも決める。恐ろしい病原菌との闘いがどうなるのか、下巻も楽しみ。