紙の本
位相は新月に至り
2005/08/12 09:58
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Laylah - この投稿者のレビュー一覧を見る
歴史上の政敵にして物語上の「結論」である、道満との対決に向かうクライマックス。読んでいると残りページの少なさにはらはらさせられますが、大丈夫、あと1巻出るそうです。
巻数を重ねるごとに難解さを増していた感がありましたが、この巻ではさすがに終盤だからか、晴明が心地良く語る薀蓄の内容は始原的なものに立ち戻り、ちょっとだけわかりやすくなっているのがありがたい(笑)
唐突にエジプトやギリシアのエピソードが入ってくるので最初はぎょっとしますが、読んでみると、それは晴明の置かれた状況を別の語り口で描いたものとなっており、安心して「ああ、こういうことだったのか」と頷くことができます。そのあたりも前の数巻に比べて格段に親切設計。
同時に、その二国での登場人物が辿った運命は、今後の展開への悲劇的な予言となっており、これまた読者ははらはらさせられます。
何せ、史実でも物語上の理屈でも晴明生還は確実とは言え、道満があんなことになっちゃってる以上、作者がどこまでこの物語をかっとばす気なのか想像がつかない。
終局に向かってダイナミックさを増す展開の中、この巻単独での見どころは数え上げると尽きませんが、やはり道満登場のシーンは出色かと。そして、こちらの心臓まで射抜かれそうな、月の船到来の知らせのシーン。ここでは詳しくは語れませんが、漫画という媒体はここまで出来てしまうのかと、鳥肌が立つほどです。
源高明と藤原兼家の対立を通して、政局というもう一つの視点から語られるストーリーラインも物語を奥深くしています(作中では、占も術も政に含まれるのですが)。
小難しいことをこまごまと並べましたが、要は、どのキャラクターも非常に魅力的です。各々の思惑の絡み合いが、次巻でもう見られなくなってしまうのが惜しいくらい。
秋に出るという最終巻が待ち遠しいような、勿体無いような。
それまでの間、既刊を読み返してみるのもお勧めです。思わぬエピソードが実は伏線となっていたりして、新たな発見に驚きました。
この書評の筆者は、残念ながら幾何学にも陰陽道にも明るくはありません。ですので、この漫画の面白さのうち、まだまだ多くの部分を取りこぼしていると思われます。
それでも、タロット(特にI「魔術師」のカード)や月の位相についてのちょっとした予備知識のおかげで、より細かい部分も楽しめたような気がしますので、入門っぽいおすすめ本をご紹介しておきます。
「月からのシグナル」根本順吉、ちくまプリマーブックス
「黒魔術の手帖」澁澤龍彦、河出文庫
「神道用語の基礎知識」鎌田東二、角川選書
電子書籍
クライマックスへ
2020/12/15 20:19
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ao - この投稿者のレビュー一覧を見る
常に掴み所のなかった晴明でしたが、未来への焦燥感に苛まれながらも、妻子への晴明なりの想いが見えた巻でした。晴明の親バカな寝物語と博雅のおとぼけ発言には久々にクスッとしましたが、シリアス路線は変わらず、随所で不穏な空気を感じます。また、他国の話の描写が今まで以上に多く入るので、以前から横文字が多々使われているのにも違和感を感じていたのですが、ガッツリとした描写に???となりました。原作の小説は未読なので、忠実に描かれているのかオリジナルなのかはわかりませんが、個人的には内容がリンクしているにしても違和感の方が大きかったです。ただ、陰陽師の漫画である事を切り離して考えると、その描写自体は美しかったと思います。
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初期の「消え去りしもの」に描かれた形而上の世界観を感じる。多分その世界の形にグノーシス的な思想や象徴物を書き込むことによって、絢爛とした精神世界というか、目に見える世界の裏側というか、見事に描き出されていると思う。
でも、そのへんの知識のストックがないと読みこなすのはたいへんだ。碁盤と星宿に関してのあたりまではついていけるけどね。
それで、八百比丘尼が芦屋道満だったという事ですね。最終巻が楽しみ。
平安セブンとか、赤子の仕草とか、程良い笑いもGOOD。
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陰陽師、安倍晴明を素敵に可笑しく?描く作品。
晴明の不思議な世界を美しく描く。
(原作:夢枕獏)
もうじき13巻が出るらしい。楽しみ♪
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有名な夢枕獏さんの小説を下にこれまた有名な岡野玲子さんが絵を描いている漫画史実を元に書いてるところはいいのですが、史実から離れると、陰陽道を理解していないと読み辛いですね。それまでは安倍清明の逸話みたいな感じで読んでいく事が出来てわかり易く、楽しいです。
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清明に子どもが出来、人間臭いストーリー展開になっている。
それはそれで、おとぼけ感があり楽しいが、意外な展開だ。
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「原作を越えた」と原作者の夢枕獏に言わしめた作品。絵の美しさと大胆な展開が他の追随を許しません。漫画の域を超えています。特に後半の、原作からどんどん飛躍していく物語に関して、僕はおそらくその10%くらいしか理解できていなく、正直なところ「玄象と巻き物かわいいな」、くらいの勢いの駄目読者なのですが、その世界観には大いに感銘を受けました。
10巻以降、辞書みたいな厚さで、腕が疲れます…。
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原作ファンが高じてコミックも追いかけてます。
がんばって古本屋でばかりゲットして、12巻までキタ!
原作よりSF的だし、む、難しい……と思う( ・ノェ・)コッソリ
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図書館の本
清明と真葛の子がうまれ、英才教育開始!なのね。それにしても「名」を与えない?教えない?のは清明らしいなぁ。
なぜエジプトとギリシャと重ねるんだろう?
ま、真理は1つでどちらかからアプローチがあったって同じ深遠に行き着くものね。
あたらしく京を作っていく過程、かけている場所が見えてきて恐ろしい。
比丘尼。。。。
なんでいまさら。。。。
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晴明親バカの図。
兼家誘拐。
道満法師登場、なんとあの人。
道満とあてもの比べをすることになった晴明は危機一髪。
(2006年10月10日読了)
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今まで、岡野玲子の「陰陽師」のレビューって、書いたことなかったんですねぇ。
なんか、意外だ。
でも、いろんな解釈があるから、下手なことを書くと、バカにされそうだという緊張感がただよいますねぇ(笑)
まあ、わたしは、いつも、「自分勝手解釈読み」ですから……。
えーと、昔、まだ実家にすんでいた頃、夜中にマンガを読んでいて、隣の部屋にいる妹にまでクスクス笑いが聞こえたそうな。
「何読んでたの?」
と聞かれて、その時読んでたのが、岡野「陰陽師」と「ガラスの仮面」だったという。
「ガラスの仮面」は、単純に、月影先生が笑うと、自然にわたしも笑いたくなってくるという……。みなさんは、そんなことないですか?
岡野「陰陽師」は、多分、1巻、2巻あたりを読んでたんです。あれって、クスッで笑うところありますよねぇ?
妹は、
「ない!」
とキッパリと申しておりましたが……。
で、そんな笑いを誘う岡野「陰陽師」だったのですが、それが、8巻の水場を踏んでいく話あたりから、メチャクチャ張りつめたものになっていたんです。
ストーリー自体も、内裏炎上とか、けっこうきつい話が続きましたし。
晴明自身がやっていることも、どんどん、博雅にも力を貸してもらえないような、タイトロープをわたるような話ばかりでした。
でも、12巻になって、ちょっと笑いが戻ってきたのかなと思います。それがまあ、けっこう私的には、うれしかったりします。
まあ、張りつめたものは、残っているんですけどね。
でも、10巻、11巻みたいに、どんどん真綿で首を絞められるような感じはなくなりました。
確か、13巻で完結。完結に向けて、確かにお話が動いているなぁと感じます。
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晴明さんが何をしたいのか、何に基づいて進んでいるのか完全に説明不足で作者の自己満足っぽいお話になっちゃった。
古代エジプトのしかもツタンカーメンはいらないでしょ?
奥さんの真葛ちゃんの行動も意味深だけど、古事記から来てるのか日本書紀から来てるのかわかんないし…。
この展開は小説ファンとしてショックだなぁ…。
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12巻まで読了。
ワガママ小悪魔だった真葛ちゃんもついに母親に。キリッとした女性に育ってきました。
陰陽師は昔の言葉も多いし、正直話しの流れを全部理解することは出来なくて、絵を見て雰囲気で捉えることが多いのだけれど、ここ数巻の安倍晴明がジワジワと追い詰められていく様は読んでいてしんどい…。
ハッピーエンドに向かっている気がしないんだよなぁ。。
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読めば読むほど分からなくて、とにかく読むのに手こずる。でも知識がインターナショナルなもので、時代を超えて有機的に結びついていく考えと、作者が自分の描きたい世界を躊躇なく表現していく姿勢はすごく好き。
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2016.2.13市立図書館(長女)
天空の巻
・安倍晴明 天の珠を得ること
・帝 新造内裏へ遷御す
・藤原兼家 新嘗祭に於て 自ら神饌をつとむ
・安倍晴明 火珠と方諸を手に入れること
・三國相傳陰陽管轄 簠簋内傳金烏玉兎緑玉碑文
晴明と眞葛のもとにいつくしむべき小さいひと誕生の一方でボッティチェリの描くヴィーナスの誕生のごとく道満/白比丘尼再生。源高明と藤原兼家の主導権争い、道満と晴明の射覆(せきふ)対決。追い込まれていく晴明、案じる博雅。えっ、ここで以下次号とは。