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面白かった、けど、分厚い。異文化。
・ワイヤップに「そんなの氏族に数えさせれば一発でわかるんじゃないの?」と言った(遊牧民族で有権者数が分からない)。末端の氏族から上の報告すれば合計はあっという間に出るだろうと思ったわけだ。すると、ワイヤップは一笑に付した。
「不可能だよ。どの氏族も自分たちの人数を水増しして報告するに決まってるんだから」
…氏族の掟「ヘール」は契約だから、氏族と構成員とかA氏族とB氏族といった相対的な問題は解決できるが、絶対的な数字や状況は全くわからないわけである。
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高野さんご自身が渾身の作と言っているノンフィクション。
高野さんはよその国の複雑な事情を分かりやすく書くのが本当に上手い。普通の作家の本だと内容が頭に入らなくてつい流してしまうような複雑な事情や関係性がすんなり頭に入ってくる。
今回のソマリランドおよび旧ソマリア一体についてもそうだ。想像以上に平和なソマリランド、あちこちにある謎の独立国家、それらを根底から支える氏族制…。今まで全く知らなかった「海賊の国」が生き生きと、身近な存在として頭に入ってくる。
大変な力作だと思うが、私が★4つにしてしまった原因の一つとして、「高野さんの冒険譚が読みたかった」と言うのがある。もちろん危険なモガディショやプントランド訪問など、今回も高野さんは果敢に攻めている。ただ、危険すぎて自由度がなく、「アヘン王国」や「西南シルクロード」のようなワクワク感があまりなかった。「冒険している」とうよりは「連れて行かれる」という感じがあって、「これからどうなるんだろう?何が起こるんだろう?」というような先が気になる感覚、1つの冒険が始まり、クライマックスを迎え、大団円を迎えると言うような盛り上がりに欠けた。
もちろんソマリアの研究書としては本当に一級品だと思うし、高野さんの攻めの姿勢は★5つに値すると思う。
また本編の内容と直接関係があるわけではないが、高野さんの本1冊につき、印税が60万位というのが衝撃的だった。こんなに取材して、素晴らしい本を書くのに60万程度とは…。もっと評価されても良いと思う。是非高野さんのためにも本書をお買い上げ頂きたい。
最後にちらりと書かれていたラクダキャラバンの旅が楽しみだ。
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法律や貨幣があり、それが機能して色々な仕組みや役割が当然のように存在している世界で生きていると、国家や法律、貨幣というものが何故必要なのか、最低限どういうことが必要なのか、ないとどうなるのか、ということを知る機会は見事にありません。
統一国家が崩壊し、他国の介入もままならない状態のソマリア。その中で、民主主義の平和な国と、海賊マネーで潤う国と、戦争状態の国があります。その差は何なのか。
"氏族"の統治の功罪から、世界的には「最貧国」と言われる地域でのリアルな生活の実情を、護衛もつけずに現地の人やジャーナリストから情報を得ながら、空調もリクライニングもきかない飛行機で移動する、等身大の著者の書きっぷりから、そのリアルな実情を知ることができ、大変興味深い一冊です。
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ソマリア国内の自称独立国家、ソマリランドを中心にソマリアを取材した本です!
ものすごく面白かったです!
読みやすい感じの体験記っぽい雰囲気で書かれているんですが、作者の方がかなり物知りで、政治や歴史、文化についてもかなり深く取材していてとても読みごたえがあります。
作者の高野さんは他にもブータンやミャンマーも取材しているのでそっちのほうも読んでみたいと思います。
おもしろかった!
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ソマリアといえば内戦で大変な国。でもソマリランドって?聞いたことない!というのが本書を知っての最初の感想。だから「謎の」なのかしらん、と訝りつつ、かなり分厚いのでビビりつつ読み始めたのだが。
ここに出てくるソマリランドは、あの世界最悪の内戦の国と言われたソマリアから独立した国なのだという。しかも、無政府状態でありながら複数政党制による民主化に成功し、治安もよく平和な状態を長年にわたって保ち続けているのだが、国際社会では国家として認められていない、というおよそ信じられないような話。ならば、自分の目で確かめてこよう、と思い立って本当に行ってきた、それをまとめたのが本書である。
著者が、びっくりするような行動力とびっくりするような何とかなるさ精神で、実際にこの謎の国へ行き、あれやこれやで苦心惨憺、いいようにカネを払わされ、ぞっとする目にも合い、でもいつしか現地の人々の魅力に取りつかれていく様は、単に紀行文として読んでも面白いが、この謎の国の類まれなる研究の成果とも読める。参考文献も極端に少ないというこのソマリランドについて、いったいいつのまにどのようにして、情報を集め事態を整理し理解したのかと、不思議なほど詳しい。
おそらく、著者がソマリランド学(そんなのあるか?)の日本の第一人者であることは間違いないだろう。
そして当のソマリランドと言えば、列挙したい特徴的なこともいろいろあるが、何よりその国家としての成り立ちが恐ろしくリベラル。ある意味究極的な民主主義。
著者も言っているが、現代社会の中で、最も先進的な民主主義かもしれない。恐るべし、ソマリランド。
と、本書の素晴らしさを挙げてみたが、爆笑の記述もごまんとある。
海賊を雇って他国の船を襲わせる金儲けの算段とか…ええっ、それこそ海賊行為では??そりゃマズかろう…。
国連は会員制高級クラブのようなもん、とか。妙に納得~、説得力ある。
あまた登場するソマリ人を、日本の戦国武将やら貴族やらになぞらえて名づけ、日本史に疎い私にはあまり効果なしかと思いきや、意外にカタカナに漢字が付属してくるだけで頭に入りやすかったりして、びっくりの効果。
分厚さに戦いたのもなんのその、すいすい楽しく爆笑しつつ読了できました。
著者言うところの、ソマリランドに似ているという、ブータン。
『未来国家ブータン』も読まねば。
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分厚い本だけれども、すごくおもしろくかつ読みやすくて一気に読みました。
異国の旅の語りのおもしろさと、未知だった歴史・社会・文化を知る楽しさの両方を堪能できます。
すごいところだ、ソマリランド!
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事前に予約してサイン本をGET。いやこれは本当にすごい一冊でした。高野さん久々にホームラン。というか、世界的に評価されていいルポルタージュだと思います。
戦闘状態が続くソマリアの中で、独自に武装解除して平和に暮らしている、どこからも認められていない国「ソマリランド」。なぜそんなことができているのかを、現地の人になじむことで、(彼ら自身が報道しないことを聞いて)あぶりだしていきます。そこには日本の崩壊しかかっている民主主義なんかはるかに超えた仕組みがある。その仕組みや彼らが持つ“氏族”について、日本の戦国武将の名前を(仮に)つけたりしながら、読者がすんなりと読めるようにしているという工夫はさすが。読み応えもあるし、面白いし、海賊国家プントランドや、内戦が続く南部ソマリアにも実際に足を運んで、なぜ海賊を国が取り締まれないのか、なぜソマリランドが内戦をやめられたのに、南部ソマリアはやめられないのかなど、その歴史や氏族のことでしっかり解説する。高野さん自身が納得するまで調べて、話を聞いているし、何より彼らが腹をわって話をする「カート宴会」に一緒になって参加しているからこそ聞き出せたことなんだと思います。
確かにエンタメノンフではあるし、面白く書いてあるのだけれど、ルポルタージュとして本当に価値ある一冊になっています。
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海賊が頻出するプントランド、度重なる内戦などで世界の最も危険な地域の一つ・南部ソマリアに近い地域でありながら民主主義で平和を維持した独立国家・ソマリランド。読み進める程絶妙な均衡をもって平和が保たれる理由が紐とかれていくのだが驚きの連続。特に国家財政のからくりや覚醒植物カートが大事な会談で重用される事実には笑った。“氏族”のシステムが複雑すぎてちょっと判りにくかった。死を覚悟しないと行けない程の南部ソマリアに乗りこんだ高野さんのバイタリティにはつくづく恐れ入る!興味深かったけど500Pは長かった・・・
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派閥や登場人物が多すぎて、敵になったり仲間になったり複雑で頭の中が大混乱。
途中からメモに図を描きながら、間違えて解釈しないよう一生懸命読んだ。
先進国が常識としていることが、この国では常識とは限らない。ここまでの取材力にただひたすら驚き。
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内戦状態にあったアフリカ・ソマリアの中に、内戦 を自力で終結させ、独立を宣言した平和な「共和国」 がある、という。
しかも、情報はわずかでこの分野の専門家もいない。実際に行ってみると、この「国」はやはり謎だらけだった。公称人口は約350万人で、独自の通貨「ソマリランド・シリング」が流通。
覚醒効果のある木の葉「カート」を食べながら人々との交流を深めていく中で、様々な氏族に分かれ掟で合理的に解決を図るソマリ人社会を理解していく。
さらには海賊国家プントランド、戦国南部ソマリアを自らの目で見て描かれている。高野秀行の新たな代表作ともいえる。
カートを咬みながら、自分が海賊を雇って船を襲った場合の見積を作成してしまうあたりが高野秀行らしい。(襲うのは日本の船)
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痛快!爽快!
西欧民主主義敗れたり!の宣伝文句に釣られるのかとの疑心暗鬼も杞憂の面白さ。
こんな新しくユニークな国家が国際社会に受け入れられるように理解し調和を図ることこそ、先進諸国の本当の課題。
負けるな、ソマリランド!笑
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今日本語で読める一番詳しい、ソマリ(ア)近現代史、内戦とその後を書いた本ではないかと思う。そして、ソマリ社会のすべてとも言え、内戦や海賊を理解するのに欠かせない氏族システムやソマリ人の考え方、文化が非常におもしろい。
首都モガディショで内戦が始まった91年、独立を宣言した北部のソマリランドは、その後二度の地域内の氏族どうしの内戦を自分たちで和平交渉を行い「清算」し、96年にソマリランド憲法を制定、氏族の人口に比例した議会で政党政治を続けているらしい。武装解除もしているし治安もいい。選挙の後に暴動も起きず、政権交代も受け入れている。
民族と国家の関係や、憲法とは何か?民主主義とは何か?平和を維持するとはどういうことか?について、欧米や国連を気にするがゆえに超越していて、日本の改憲護憲論争が間抜けに見えるくらいのインパクト。ソマリランドの政治家や政府官僚のほうが、日本の政治家より立憲主義、民主主義を勉強していて、かつ実践しているんじゃないか?
政治的な偏りも偉そうな先進国目線もアフリカへのヘンな肩入れもなく、対等な存在として受け入れられ内側をつぶさに見てきた著者に敬意を表します。(アニメに例えるのはちょっとくどかったですが)
個人的には、アル・シャバーブとソマリ社会の関係、イスラム過激派とイスラム国家の矛盾をようやく理解できてよかった。
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ソマリランドが地上のラピュタとか、ソマリアは北斗の拳の世界だとか、氏族を源氏や平家、藤原氏などに置き換えたり。
彼らしい工夫で決して笑い事ではすまない事実を読みやすくすすめてくれる。
本の太さにうんざりしない内容の素晴らしさは圧巻。
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当地に興味あったのだが、出だしからラピュタがどうとか意味不明で、絶望的に文章が下手くそだったので、読むのを断念
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作品全体に、高野秀行氏の原点であり核であるようなエッセンスが貫かれた、いわば"高野ワールド"の王道に位置する一作ではないだろうか。
一歩間違えれば、というかそこそこの確率でひょっとしたら命を落としていたんじゃないか、と思われるようなシチュエーションを含めた、ほぼすべての日本人が経験をしない状況にあえて身を置くことで生まれる、まさにタカノイズムの粋を集めた作品だろう。
生得的とも偶然とも言える天性の才で、そんな危険な場面も結局のところ切り抜けているのも高野氏らしい。
どんな新聞記事や解説書を読むよりも「ミャンマーの柳生一族」を読めばここ数十年のミャンマー情勢が理解できるのと同じく、この本を読めばソマリア(およびソマリランド)の国内事情がストンと腑に落ちる。
海外メディアはもちろん、ソマリ人たち自身による報道機関ですらほとんど触れないという、"氏族制度"をここまで詳細に綴っているのは、大袈裟じゃなく学術的にも小さくない功績なのではないだろうか?
日本を始め諸外国のものとはまた形態が異なる、この氏族というソマリユニークな身分制度の存在を前提にして考えると、なるほど海賊が蔓延る理由も内戦が起こる背景も流れとしてとてもよく分かる。
といっても、戦国武将の氏になぞらえるという著者の苦心の策を以てしても、ちゃんと理解できるように読み込んでいくのはなかなか骨が折れる所業だが…。
高野氏自身も危惧しているように、ここがこの本を読む上での最大の難所だろう。
旅を終え、まとめにかかる終盤のくだりにおいても、これまたタカノイズムが全面に溢れている。
西欧民主主義こそが世界のスタンダードだ、というプロパガンダに飽き飽きしている私たちは著者の考察に共感し、また古くからの愛読者は、ソマリに残る謎の解明を果たすべく、次なる探検に野心を燃やす高野氏に期待をしてしまわざるを得ないだろう。
あと高野さん、決して「スタジオでは使えないと判断され、レポーターとして地方に送られてしまう始末」なんて事実はありませんでしたよ!