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「劇画」の創案者が、手塚治虫の信奉者だったとは
劇画というのは、手塚治虫的なマンガ表現に反旗をひるがえす者たちが名乗りをあげたものだと思っていた。
本書の冒頭で、その思い込みがあっさりくつがえされる。
第1章のタイトルが「手塚治虫に会った」であり、まだ中学生の辰巳ヨシヒロが毎日新聞社に投稿したマンガの縁で憧れの手塚治虫に会えた感激が、みずみずしく描かれている。
これは、藤子不二雄「まんが道」などで、高校生になった二人(藤本弘・安孫子素雄)が手塚治虫に会った時の感激が描かれているのとまったく同じ。
つまり、トキワ荘グループも、劇画工房集団も、同じ手塚治虫というルーツから生み出されたというわけだ。
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デフォルメやユーモアなんかくそ食らえ
手塚治を尊敬しながらも手塚の子にならず
「劇画」を命名し劇画一筋に生きた辰巳ヨシロウ
戦後まんがのときわ荘ではない漫画史
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辰巳ヨシヒロの自伝。
私にとって、辰巳ヨシヒロは、漫画の歴史、劇画の歴史 上の偉大な人物。
辰巳ヨシヒロのマンガを読んだことがないから、あくまで、劇画を代表する漫画家という印象しかなかった。(ある意味過去の人という印象だった。)
この本を読んで、俄然、辰巳ヨシヒロの人間性に感動し、そのフレッシュな感覚にも圧倒され、漫画にも興味がでてきた。
とても70代が書いたと思えない、若々しい文章。
劇画の世界に飛び込んだ10代後半から20代のころに書いた文章なのではと思えるような。
いつまでも漫画に、劇画に熱中する純粋な少年性がこのような表現を可能にするのだろう。
辰巳ヨシヒロの人間性(素直さ、オープンさ)が良くでていて、読んでいるこちらは、主人公の辰巳に同化して、不安定で、何でもありな、劇画の世界を疑似体験し、ハラハラしながら一気に読んでしまう。
得意げに偉ぶるのでもなく、一般の人として率直に描写してくれているのが良い。
大阪人としてのアイデンティティなのだろうか。
人間味が溢れて、人の弱いところとかずるがしこいところ、強いところ、様々な面を含めて人間すべてが面白い。というような感覚、人間に対する肯定感に溢れている。
また物語としては、劇画、漫画の成長期のめまぐるしい変化も興味がわくところだが、登場する人物が魅力的。
貸本時代の日の丸文庫の山田社長、山田専務達のずるがしこそうでいて憎めない、大阪人のバイタリティー。
実兄で一緒に劇画を立ち上げた桜井昌一。兄弟であり、ライバルであり、一番の理解者であり批評家であった。この兄弟関係は、なんて素敵なんだろう。
劇画を立ち上げたときのメンバーであり、言わずと知れた大御所、さいとう・たかを。鼻っ柱が強く、マイペースで、調子がよさそう。いいキャラなんだな。やはりこれくらい自分が確立されていると、大物になれるんでしょうね。
また、手塚治虫がよく登場する。ここまで辰巳ヨシヒロに影響を与えていたというのは意外だった。
巻末の解説に大塚英志が記載しているように、劇画の人たちは大阪出身で、大阪にいた手塚治虫の嫡子であり、手塚が大阪から東京に行くことで、東京にとられてしまい、孤児となる。
『「劇画」の人々の自伝は、どこかまるで彼らの方が捨て子や嫡外子であるかのような屈託や悲しみが奥底にある。そこが彼らの自伝を文学に近づけてさえいると思う時がある。』
という記述があり。
さすがの切り口。鋭い観察眼だなと唸ってしまった。
海外でも評価の高い辰巳。
シンガポールのエリック・クー監督が製作した「TATSUMI」をぜひ見てみたい。