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ルーズ・ベネディクトの「菊と刀」にでてくる「恥の文化」をさらに展開させていることは評価できると思います。
クセがなく非常に読みやすくて、論理の展開も丁寧だと思います。
西洋の「近代的自我」の思想にふれていらい、我が国では「世間の目」を故意に拒否しようとする風潮が、徐々にあらわれてきたように思われる。そのさい「強い自我(エゴイズムのことではないここではしなやかな自律性みたいな意味か)」が育たないままに「世間」の人たちの「まなざし」のみを拒否しようとするならば、人びとの前には、大きな陥穽がまっていることだろう。他者に見られない限り、なにをやってもよい自由という陥穽が、である。(p.238)
「世間体」を重んじるということは、ほんらい、見られることによる不自由を甘受して、生きた人間と生きた人間関係をむすぶことではなかったか。それにたいして、見られないということは、だれからもみられないというかぎりでは自由なのだが、自分が無意味だと確実に知らされることである。唯一絶対神(超越者)をもたない人の立場からいえば、現代は、私達が「不自由」と「無意味」のどちらかをとるか、そんな選択をせまられている時代であるといえるもしれない。(p.244)
1977年に刊行されている本著ですが、上記の問いは2024年の現在にも強烈に我々に問われている問題のようです。