紙の本
海賊小説のブックガイド
2005/10/31 18:24
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:tujigiri - この投稿者のレビュー一覧を見る
2004年に物故した本邦海洋冒険小説界の巨峰・白石一郎による、11編からなる歴史読本。
わが国の周辺海域で活躍した代表的な海の男たちを取り上げ、彼らの生きた時代背景や、果たした歴史的意義を説く。
謎に満ちた古代の海賊王・藤原純友から起草する第1章以降、瀬戸内に海の王国を現出した村上水軍、九州を根拠地として外海に躍動した松浦党などから中世海賊の生態を解き明かす第2、第3、第4章を経て、続く第5章からは織豊時代から江戸時代にかけて大海原に名を馳せた男たちを列挙する。
史上初の甲鉄船を作り上げて海賊の勢力図を塗り替えた九鬼嘉隆、豊臣秀吉の子飼いとして水運を一手に担った小西行長、日本漂着のはてに徳川家康に仕え、旗本にまで取り立てられた三浦按針ことウィリアム・アダムス、シャムに渡って立身出世を遂げ、ついに王族にまで列せられた山田長政、室町時代から絶えていた朱印船貿易の復活を受けて富を成し、異国の姫を連れ帰った貿易商・荒木宗太郎、日本人の母と福建省軍閥の頭目を父に持ち、「抗清復明」の旗印を掲げて亡国の復興に命を捧げた南海の荒鷲・鄭成功など、幅広い英傑たちを取り揃え、彼らの魅力を敷衍していく。
白石一郎は藤原純友と鄭成功をのぞくすべてを小説化しているため、本書は作者自らによるブックガイドとしても機能し、各小説のエッセンスを集めた入門編にもなっている。
また、作者がNHK人間講座を担当したおりに書き下ろしたテキストを下敷きとしているため、全般的に読みやすい内容となった。
最終章で徳川幕府の敷いた鎖国制度の功罪を短く論じて、稿は閉じられる。
近年、網野善彦の研究によって海の視点から考察する日本史学が確立されてきたが、本書は歴史小説のフィールドからそれを照射した白石一郎の、ある種の集大成的読物である。
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海と船が大好き・白石氏のオススメな男たちを一冊にまとめてあります。
小西以外にも、藤原純友・村上武吉・松浦家・九鬼嘉隆・三浦按針・山田長政・荒木宗太郎・鄭成功などがヒューチャリングされています。
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カヤック知り合いのBLOGで知った「白石一郎」の本を読んでみました。手始めに軽めのエッセイの1冊『海のサムライたち』を選びました。
私は「海賊」好き、帆船小説大好きなのですが、日本のお話というのは全くといってイイほど知らない。(もともと日本史は大の苦手)今回、この本を読んで、「村上水軍」とか名前を聞いたことはあるぐらいだったことなどが、おおよそ頭の中で理解できてきました。歴史上の海のサムライたちがどんな生き様をしてきたのか史実は多くを伝えてはいないようでするが、さすが第一人者の白石一郎です。史実を淡々と解説しながらも、海に向かうものとしての心意気のようなものを想像する愉しみを投げかけてくれています。
中でも織田水軍総大将「九鬼嘉隆」が6隻の鉄船を建造して毛利水軍を撃破した話は面白いと思いました。全長32mの世界で最初の装甲艦ですよ。スゴイ面白いものです。初めて水軍の組織作りをしたのもとても興味深い話です。
この本は有名どころの人物をいろいろ説明してある本で、初心者の私にもぴったりでした。白石一郎は、それぞれの人物を主人公にしたさまざまな小説を書いているので、次は気になる人物の物語を読んでみたくなりました。有名な「海狼伝」なんかも読んでみたいものです。
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海にゆかりのあった、
藤原純友、村上武吉、松浦党、九鬼嘉隆、小西行長、
三浦按針、山田長政、荒木宗太郎、鄭成功、徳川水軍
について書かれています。
私はほとんどがよく知らない人物でしたが、
読みやすく、とっかかりとしては丁度よいと感じました。
松浦党が気になりましたので、関係のある本を読んでみたいです。
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海に生きた人々の紹介兼白石さんの海洋時代小説履歴、みたいな本。各人物ほんのさわりだけ、または資料が残っておらず想像に頼る所も結構ありますが、大概陸地を基準に語られる歴史のなかで、海からという新しい視点を教えてもらいました。とても新鮮でした。
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四方を海に囲まれながら海に無関心の日本人。歴史も陸の視点から描かれる事が多い。しかし日本には海に生き、死んでいった誇るべき男たちがいた。古くは藤原純友から、日中混血児の鄭成功まで幅広く語る。最後は幕府の鎖国政策の悪しき影響について述べることで締めくくる。
歴史にとって最も大切なのは"if"について真剣に考える事。この本を読むと、「もし日本が鎖国をしていなければ」という事を考えざるをえない、家康という稀代の国際人が政治を司っていたころ、日本人はたくさん世界に飛び出していた。
江戸時代初期の進取の気質を持ったまま世界と交際してれば、不必要なまでの外国コンプレックスを持つこともなかったのではないかと思う。