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社会的には栄華の絶頂を上る光源氏。しかし、源氏周辺の女性関係は悩みが深く、紫の上に何度となくする苦しい言い訳。
源氏物語の作者は、政治性は帯びないことをスタンスとしてるが、藤原氏の政治の行い方を皮肉ってるように見える。
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政治的には窮地から一転返り咲いて栄華を極める直前くらいまでのドラマチックな展開。また、藤壺、紫の上、末摘花、明石の君とその家族、花散里、六条御息所と斎宮、朱雀院、東宮、権中納言(元頭中将)…と多くの人物たちの物語も描かれておりまさに群像劇。
漫画『あさきゆめみし』でも印象的だった二条の東の院が完成する。この巻では花散里、末摘花が入る。漫画でのほわんとした雰囲気(美人には描かれていない)がいいなと花散里が好きだったけど、まだいまいちこの人が源氏にこれだけ良く遇される理由がよくわからない。この作品では、恋する思いが強いほど悩みも多くなる、と男も女も繰り返し嘆いているので、なんかほどほどな感じが良いのだろうか。今後に期待。
反対に、末摘花はビジュアルの強烈さしか覚えていなくて二巻の「末摘花」でもさんざんな描かれようだったけれど、三巻の「蓬生」は、これは推せると思わせるエピソードだった。
以下は自分用備忘メモ。
■須磨
・流罪にされるのも恥だから自分から須磨行きを決める(そうすることで東宮を守ることにもなるようだ)。紫の上は連れて行かない、かえって辛い思いをさせるから(謹慎の身で奥さん連れていくとますます何を言われるかわからないし…と)。行く前に左大臣の家へ挨拶に行き、馴染みの女房と過ごす。あ、息子(葵の上が産んだ夕霧くん)にももちろん会う。
・紫の上のいる二条の邸は、かつてはたくさん集まっていた人々も寄り付かなくなり寂しい限り。紫の上の父親や継母も、娘への愛情薄く、世間の風当たりのほうが気になるのでつれない。こんなことなら父にここにいると知れない方が良かった、母に手紙を出すのもやめよう、とまで思う紫の上がかわいそう。
・花散里に会いに行く。漫画を読んだ中では花散里が一番好きだったので注目しているが特にまだ見せ場はない。須磨へ去ってからは姉妹で手紙をくれる。窮状を訴えると源氏が手配してお世話してくれる。
・都を去る上での身辺整理。事務処理などぬかりなく。仕事しているシーンってあまり描かれないからわからないけど、こういうのできる人なのかな。
・朧月夜にもちゃんとお手紙を出す。会うのはやめとく。妥当なところか。須磨へ去ってから朧月夜は許されて再び参内できるようになり相変わらず帝からの御寵愛は篤い。まだ源氏を恋しく思っている朧月夜を認めつつ慕いつつの優しい帝。すごいな。朧月夜に子どもができないので、故院遺言通り東宮を猶子にするつもりである。
・桐壺院の御陵へ行く前に藤壺の尼宮に挨拶。出家によりプラトニックが保証されて、源氏も失脚でしょぼくれてるし、須磨へ去ってからの源氏への手紙もちょっと優しくなる。
・昔、藤壺と源氏との間をお仲立ちした王命婦が、二人や東宮の今のご様子を見て「私の浅はかなお仲立ちのせい」と思っている。いやいや、そんなこともし源氏が言おうものなら私がぶっ飛ばしてやるよ…。
・伊勢の斎宮へもお手紙を(娘の方?!)送ったら六条御息所からお返事。どなたよりも優れており、いつかまた会いたいねなどと返事。別れたけれど良い関係?
・源氏は幼い頃から帝の寵愛がこの上なかっ��ので、源氏が奏上して叶わないことはなかった。そういうわけで位階のことなどで源氏に恩がある人はたくさんいた、という記述(それなのに、外聞を恐れてみんな寄りつかないという文脈)。自分自身が恵まれているだけでなくちゃんと周りにも実利を与えていたから、みんなに愛されていたんだなと妙に納得。
・明石の君。お父さんがなかなか面白そうな人だ。頑固者とのことだが、世間の目も構わず、自分の親戚である素晴らしい桐壺の更衣の子なんだし源氏の君は素晴らしい!という信念のもと、自分の娘の婿にしたいと思っている。
・最後なんか龍王出てきたぞ!
■明石
・明石パパの猛プッシュ(とパパ自身の魅力も手伝って)の結果、明石の君とついに結ばれ、子どももできる。はじめからわかっていたけど却ってつらい明石一家。明石は琴の名手。
・紫の上には手紙で「浮気しちゃった、正直に言ったから許して」。大胆な人だ。チクリと嫌味を言いつつも鷹揚?な和歌でお返事をよこした紫の上をまた愛しく思う源氏。いい気なものです。
・源氏を追いやった帝もその母も物の怪に悩まされ病気がちに。帝はついに源氏を元に戻すことを決めた。帰還。
・紫の上に明石の君のことも隠さず話す。ずるいんだからもう。
・五節の君(誰だっけ…)や花散里へは手紙をやるが会いには行かない。
■澪標
・朧月夜、帝の愛の深さを思い知る。
・弘徽殿の女御の子だった帝が譲位して朱雀院になり、源氏と藤壺の子である東宮が、帝になる。
・明石の姫君に女の子生まれる。乳母を派遣。花散里にも会い、五節の君(誰だっけ…)のことも想う。明石に上京を進めるが明石ためらう。パパ入道も「こんなことなら昔の方が心配ごとが少なかった」って、おいおい。とはいえまあ、そういうことはありますよね。
・二条の東の院の改築を始める。
・「そういえば」と斎宮&六条御息所の話に。伊勢から戻ってきている。六条御息所は病で弱っていることもあり、昔のこともあり、もう源氏になびくことはななく源氏も強くは出ない。斎宮(娘さん)のことは面倒見るから、という源氏に対し、「手出すなよ」と釘を刺すママ六条ナイス。ちょっと不機嫌になる源氏、かわいい、とは思えない、そこは恥じ入ってほしい。六条御息所、みまかる。
・斎宮の世話をする源氏。なんとか踏みとどまっている。斎宮のことを朱雀院が所望しているが、帝に入内させたくて、藤壺に相談し、そうする。
■蓬生
・末摘花再登場。「大空のおびただしい星影を盥の僅かな水に映して我が物にしたような、身に余る思い」で源氏によるお世話をありがたく思っていたが、須磨へも行った源氏はすっかり彼女のことは忘れてしまって、召し使いたちにも見捨てられるし親戚も意地悪だしで邸は荒れ放題。それでも一途に頑固に暮らしぶりを変えない。そこへ源氏登場。花散里のところに行く途中でたまたま思い出しただけなのだが、「あなたが便りもくれないから意地を張っていたけれどついに来てしまった、私の心は変わらない」などとしゃあしゃあというが、地の文も「それほど深くも思っていらっしゃらないことでもさも情愛がこもったようにお上手にあれこれとお話しになられた」と手厳しいのが面白い。その後は源氏も元のように細やかにお世話してくださる。そうなると戻ってくるような現金な女房たちもいたりするわけで、末摘花の変わらなさという美徳が一層感じられる。最終的には二条の院の隣の邸に住まわせる。
■関屋
・空蝉の話。小君だった右衛門の佐は、源氏の須磨行きのとき時勢におもねって源氏から離れてしまったので気まずいが、源氏は変わらず接してくれる(内心不愉快だが)。空蝉への手紙を託され歌のやり取りなど。空蝉は源氏を迎えることは決してない、それは変わらないのだが、実はけっこう恋しがっている?空蝉の夫が亡くなると、義理の息子に言い寄られて出家する。
■絵合
・前斎宮の入内。帝は十三歳で斎宮は二十二歳。朱雀院から斎宮への贈り物に、その思いの深さを知り、ちょっと悪かったなと後悔する源氏。「澪標」で斎宮の入内を決めたいきさつは、要は源氏が、お似合いの朱雀院に渡してしまうのが惜しくて年少の帝(しかも息子)の方がまだいいかなとか思ったのだったかな。
・という疑問を抱いたが巻末「源氏のしおり」では、斎宮を自分の娘分として入内させて外戚として権威を振るおうという野心のためとあった。また、朱雀院への恨みもあったかもしれない、と。さらに、斎宮だって朱雀院のことを覚えていて慕っているだろうし帝との年齢差のことも気にならないわけはなかろうと、作中では黙殺されている斎宮の気持ちが想像されていた。
・頭中将が今は権中納言。その娘が今は「弘徽殿の女御」で、こちらも入内しており帝とは年も近く仲良し。源氏と権中納言はこんなところでもまたもやライバル関係になるわけか。そして絵合。なんやかんや芸術論があったが最後は源氏の描いた須磨の絵で梅壺(前斎宮)側の勝利。
・この世の栄華を極めつつあると自分でも思っている源氏。帝が成人したら出家して、もう高位は要らないから長生きしたい、など。
■松風
・この頃源氏三十一歳。二条の東の院完成、花散里そこに入る。
・明石の君、嵯峨の大堰の邸についにやってくる。母の父の昔の邸らしい。入道だけを明石に残し、母と娘と共に。明石一家の悲喜交交。源氏、会いに行く。
・紫の上は、明石の君のことではずっと機嫌が悪い。機嫌を取ろうとする源氏。隠れて手紙を書いて送り、受け取った返事もまずは一人で読んで内容チェックしてからわざとその辺にうっちゃって、「こんな手紙にわずらわされる年でもない、あなたが捨てておいてください」だとか、いろんなポーズを使い分ける。
・明石の君との間に生まれた姫君は三歳。二条の邸で引き取って紫の上に育てさせたいなというアイディアを紫の上に漏らす。紫の上は、「あなた(源氏)に対しては色々と思うところもあって素直になりたくないが、子どもには気に入られると思う」とちょっと乗り気。紫の上の気持ちは、今後もっと語られるのだろうか。
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須磨・明石・澪標・蓬生・関屋・絵合・松風までの7帖が収録.危機回避のため自ら須磨に落ちるが,結局行動理念は不変で,この点が全く理解できないし,周囲の源氏への対応姿勢も理解の範囲外.常に最上敬語である二重敬語で各行動が表現されるので,皇族(神)という立ち位置である行動理念に理解など求めてはいけないのかも知れない.そもそも須磨から松風まで一気に物語が流れていくので,読んでいて素っ気なさがつきまとう.その間にあった各人の心の機微が物語られるとまた異なるのかも知れない.