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オリガの人生を主人公と一緒に謎解きしていくようで、最後まで息つくひまもなく読みました。オリガの人生に重くのしかかる当時の情勢もまた興味がわきます。
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一日で一気に読んでしまったほどの面白さ。
1960年、チェコのプラハ・ソビエト学校に通った弘世志摩は強烈な舞踊教師オリガ・モリゾウナに出会い、惹かれる。
後年、ダンサーになる夢を捨て、ロシア語の翻訳家になった志摩が、ソ連崩壊後ロシアを訪れ、謎の多かったオリガの人生の軌跡をたどろうとするのだが・・・
元・ロシア語同時通訳の米原万里さんが、自らの経験を生かして書いたこの小説。読むとはまること請け合いです!
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一級のロシア語通訳者として名を馳せた米原万里の長編小説。
荒削りだけど、骨太で、久々に手ごたえのある小説を読んだ気がする。
文庫になるのを待っていて良かった。
1960年代のチェコはプラハのソビエト学校から話は始まる。
両親の仕事の都合で、この学校に通っていた日本人の少女志摩は
個性的な老女の舞踊教師オリガ・モリゾウナと出会い、魅了される。
三十余年後、翻訳者となった志摩はモスクワに赴き、当時の友達と劇的な
再会を果たし、そして謎に満ちたオリガの半生を辿る。
プラハの春以前のチェコの学生の明るさや、オリガ・モリゾウナの劇的な生涯、
垣間見える当時の中欧世界にぐいぐいと引き込まれる。
気がつくと、ページをめくる手が止まらないのだ。
恐るべし。
フィクションであるが、膨大な資料と体験に基づく話なので、引き込む力が
違うのだ。
話も面白いが、巻末の参考文献が圧巻である。
史実をそのまま書くよりも、一見史実に見える嘘を書くほうが遥かに労力が
必要であると、かつて塩野七生が言ったようなことを言っているのも頷ける。
ロシアや中欧の情勢だけでなく、日本のバレエ事情に言及している辺りも
非常に興味深かった。
誰がどう考えても、某バレエリーナーだろうという名前が出てきていた。
その辛辣な筆がステキなのだ。
舞踊家の道を諦めた志摩の言い分が、極めて日本的であると思わせる辺りも鋭い。
知っているようで、ロシアのことも、中欧のこともあまりよく知らない自分に
愕然とした。
こりゃ、勉強が必要だわ。
勢いで『嘘つきアーニャの真っ赤な真実』(角川文庫)も再読した。
こちらは、チェコ時代の級友との思い出と、大人になってからの再会の様子を
書いたエッセイであるが、『オリガ・モリゾウナの反語法』を読んでから読むと、
より理解が深まる。
社会主義国って何だったのだろうかと、改めて考えさせられる1冊であった。
米原女史のご尊父が共産党員だったというのも、合点がいく。
日本人的悲観と批判を、こんな言葉では片付けられないと知りつつも、
潔く書いてくれた米原万里に改めて拍手を送りたい。
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米原万里さん、亡くなってしまいました。本を2冊しか読んだことがないのにすごく淋しいです。この本はなんて言うかな切ない。米原さんの勢いのある文章がいいんだけれど、ロシアの人々の名前がややこしくて少々混乱した。時代遅れの貴婦人のようなオリガ・モリソヴナは今にも本から飛び出して、私のことを褒めそやしそうな(つまりは貶しそうな)気がした。
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ロシア語同時通訳にして名エッセイスト米原万里の最初にして最後の長編小説。改めて作家の稀有な才能を惜しむ。米原さんにはもっともっと書いて欲しかった!
旧ソ連の苛烈な冬の時代をたくましく生きた人たちの知られざる物語。どん底のラーゲリ(収容所)での生活、女たちの寄り添い助け合う姿に救われる思い。毒とユーモアでシャレのめし、軽快なテンポで読者をひっぱる米原流は、タイトルロールのオリガの生き方と重なる。のらりくらりと安逸に過ごしているところへちゃんと生きろ!と喝を入れられた。
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必死で読み終えました。
この本を、途中で止めるなんてできないでしょう。
オリガの謎が解けるまでは。
でも、ハードな道のりだったわ。
なんせスターリンあたりのソ連史が深く関わっているので、史実だけでもしんどかった。
読後感は『夜と霧』に近いものがありました。
アウシュビッツは有名だけど、スターリンの粛清の想像を絶する凄まじさ。
『嘘つきアーニャ…』と対をなす小説ですが、世の中の不条理のなかで、生き延びた「オリガ」の人生に圧倒されます。
「昔は外国人と話すと殺された」
こんな時代もあったのです。
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興奮しながら一気に読んだ。ロシア語通訳者米原万里さんの小説処女作。ロシア語通訳者の志摩は少女時代をすごしたプラハを訪ねる。ソビエト学校の名物教師オリガ・モリソヴナの人生を追う中で次々と謎が解き明かされていく。ロシアという奇妙な国の鮮烈な近代史が見えてくる。にしてもロシア学校のアカデミックな教育内容はうらやましい。
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面白い。本当に面白いです。
複雑に絡み合った東欧近現代史が嫌いで、その部分をまじめに学ばなかった高校時代がものすごく悔やまれます。私がもっと東欧諸国の歴史的背景を深く知っていれば、この本は★5つになっていたはずです。
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<06/12/28読了>
◆読後呆然としてしまってしばらく身動き(みじろぎ)ができなくなりました。◆米原さんが少女時代を過ごしたチェコスロバキアへと過去探しの旅に出かけるお話です。その中で、過去のさまざまな謎、とりわけ学校御舞踏教師だったオリガ・モリソヴナにまつわる謎を明らかにしていきます。◆このオリガのキャラが強烈なキャラで、それがこの作品を活き活きとした魅力あるものにしています。年齢不詳の老女にして、踊りは天才的、よく見ると結構美女。気風のいい竹を割ったような性格で、しかし口も悪い。子どもに向かって、とても女性や子供には聞かせられない語を連ねた罵倒をしたりします。◆このオリガの謎をさまざまな伝手を使って明らかにしていくわけですが、その過程が上質のミステリを読んでいるようでとてもスリリング。そして、次第に明らかになるオリガの過去がすさまじい。ネタバレにならないよう、ヒントとしてオリガの過ごした過去はスターリンによる恐怖政治時代だったとだけ言っておきます。◆過去を探すお話って、もうそれだけでも面白いのに、その過去がこんなにすごい上に、それを明らかにしていく過程がスリリングなんですから、もう面白さ百倍です。じっちゃん、脱帽の一品でした。
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読み出したら止まらない、そんな小説。ミステリ以外のカテゴリに入れたが、オリガの過去の謎を追う物語なので、謎ときとしても楽しめる。3つの時代(スターリン時代のソ連、60年代のプラハ、ソ連崩壊後のモスクワ)が交互に描かれ、主人公志摩の目を通して、それぞれの時代を追体験する。不条理な粛清、強制収容所の話など、とても重い題材を扱っているにもかかわらず、すらすらと読める。登場人物のキャラクター設定が見事で、感情移入してしまっていたからだろう。オリガの凄まじいばかりの半生は、しばらく心から離れそうにない。2/24-25。
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マリがプラハのソビエト人学校に通っていたときのダンス教師、オリガ・モリソヴナ。彼女の人生をたどる旅は、ソ連という巨大な国の悲劇をたどる旅でもあった。悲惨すぎる出来事とマリの小学校時代のギャップがすばらしくて、それでも前向きに笑える一作。
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米原さんのエッセイだと思って手に取ったら、本格的なミステリー仕立ての小説でした。舞台は旧ソ連。でも、単なる謎解きの面白さだけではなく、登場する女性達の姿が生き生きと描かれていて、大いに読み応えがありました。タイトルに帰結していくラストはとても感動的。
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チェコにあるソビエト学校に入学した日本人の女性が、恩師の謎を解いていく話。
スターリン政権の頃のソ連国家が舞台だけど、暮らす人の目線で生き生きと描かれていて、読むのが辛くなる固さや重さはない。
主人公の女性たちが若々しいのと、謎解きを中心に進んでいく展開に引きこまれる。
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社会主義のいい面、悪い面、資本主義のいい面、悪い面、その中で生きる人間の弱さ、強さ、愚かさ、気高さが鮮明に浮かび上がる。愛と勇気が湧いてきた。
誰か映画にしてくれないかなぁ。活字だけにしとくのもったいない!。
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1960年代にプラハのソビエト学校に留学した主人公の志摩は、
出来の悪い生徒を「この神童が!」と反語法で叱り飛ばす豪快
なダンス教師オリガ・モリソヴナと出会う。
帰国後30年経った志摩が改めてオリガ・モリソヴナの足跡を辿
るべくロシアに渡ると、凄惨な歴史の爪痕に翻弄されたオリガ
・モリソヴナの過去が生々しく浮き彫りになるのだった……。
この本は、小説の体裁をとっていますが、著者の入念な文献調
査により限りなくノンフィクションに近い内容になっています。
温室のように安全な現代の日本の中流家庭に育った自分には、
こんな酷いことが本当にこの世に起こったのかということさえ
うまく想像がつきません。
安直で浅い感想ですが、人間って本当に強い生き物なんだなと
思わされます。
分厚い本ですがグイグイ引き込まれること請け合い。電車の中
でも臆面もなく泣きじゃくって読み終えました。オススメ。