紙の本
比喩はイマイチだが、内容は優れもの
2007/09/14 14:36
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:FAT - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書の各章で出てくる脳の領域「野」を、企業経営における各担当分野をもつ役員に例えるというのは、ご愛敬。
しかし、本書の開陳する脳の機能、働き方についての仮説は、非常に分かりやすく説明されているのです。
また、検証すべき命題として、どこまで発展させられるかどうかは判断が難しいが、次のような本書の説明には、強いイメージ喚起力があり、何か分かった気にさせてくれるのです。
「脳の意思決定は、脳の広範囲の領域で起こっている減少です。どこかひとつの領域が意思を決定しているわけではなく、複数の領域、そして当然のことながら多数の神経細胞が協調した結果として、脳の意思が生まれてくるのです。」
「ある瞬間にパッと指令を出すことで意思が決定されるわkではありません。前頭前野とその他すべての脳領域との間の緊密な連携の下、同時進行的に情報処理されているその動的な過程すべてが、意思決定のプロセスなのです。」
これらの記述は、これだけを取り出して評価すると、当然と思われるかもしれないが、この記述を支える、脳機能障害の症例や神経細胞のつながりの具体的な研究成果の後であると、大きくうなずけるのです。
そして、評者が本書の記述の中で最も関心したのは、次の記述です。
「そして『意思』とは、複数の情報入力にもとづいて脳が生み出す『ただひとつの解』であるといけます。そして、この『解』は、その瞬間における『解』であって、時々刻々と変化しうるものです。」
うまく表現できないのだが、神経細胞ネットワークの電気的・科学的状態の変化が、意識の実態であり、その変化の中の一定のものが「意思決定」と認識される状態変化を作り出すのだということなんだと思うのだが、この発想には、何か蒙を啓かれたという気がします。
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新書の形態とは思えない内容。
しっかりとした「脳」に対する内容で、知見を増やすことができる本。
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前頭前野のはたらき、そして、ダメになると、どんなところに支障をきたすのか、意思を決定する部位はどこか?などがわかる。以前、よく、脳に関する本は読んでいて、前頭前野について漠然とはわかっていたので、正直なとこ、もう少し掘り下げた情報が欲しかった。入門書にはよいとは思う。
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[ 内容 ]
知性を司り、人を人たらしめているといわれる前頭葉は本当に脳の中でいちばん大事な領域なのか。
脳の中に住んでいて意思決定を行うと考えられている小人=ホムンクルスの正体は前頭葉なのか?
最新の研究成果から前頭葉神話を検証し、私たちの「意思」の脳内メカニズムに迫る。
[ 目次 ]
第1章 前頭葉は脳の最高経営責任者
第2章 前頭葉損傷による症状
第3章 前頭前野は脳の重役室
第4章 企画担当重役-クールな外側前頭前野
第5章 営業担当重役-儲かって何ぼの底部前頭前野
第6章 総務担当重役ー調整役の内側前頭前野
第7章 特別仕様の前頭前野
第8章 前頭葉から意思は生まれるのか
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[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
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DLPFCは遅延課題やpopulation coding の場として、orbitofrontal は報酬系として、cingulate はTOM、conflict の処理に、という局所論の立場がまず述べられる。眼を引くのは線維連絡による分類で、感覚入力が多く、運動出力が少ない部位(cingulate などインテグレーター)と逆に入力が少なく出力が多い部位(DLPFCなどブロードキャスター)という分類をロルフ・ケッターという人が提唱しているらしい。脳のネットワークはクラスター構造をショートカットで結んだ構造になっている。
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前頭葉の機能の中で、意思決定の話がでてくる。意思を持つ前に脳ですでに反応しているという現実、人はその反応を感じ、意識し、後付で意思を感じているに過ぎない、という説には共感できる。意思決定の機能は前頭葉で、様々な脳の場所から情報が入ってくるが、もし二者択一の選択があった場合、その情報刺激の中で強いものに決まってゆくというもの。例えば、食べたいという感情と太ってしまうから我慢するという理性のせめぎあいの時、もし痩せることへの動機が強ければ我慢できるが、あまり目標がなければついつい食欲に負けてしまう事を考えると、納得がいく。そして、今までこれは意思が強いとか弱いとか言われているが、正確には、理性が強いか弱いか、と訂正しなければならない。一言でいえば、精神一到何事か為らざらん、という事か。
前頭葉はうつ病にもつながることを考えると、どのようにして鍛えるか、という話を多く含めた話を聞きたかった。残念。
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脳のことをわかりやすく例えて書こうとしあった。脳は結局わからないことが多い。わかることは脳はとてつもない力があり、うまく使わなければならない。直感の話など自分が考えてることが載っているところもあった。
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https://elib.maruzen.co.jp/elib/html/BookDetail/Id/3000057281