紙の本
明治維新において日本の食文化に欧米文化が入ってきた過程をつぶさいに追っていきます!
2020/03/10 11:24
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、明治の時期、我が国が欧米の食文化を積極的に取り入れ、「洋食」というカテゴリーが成立するまでの歴史を克明に追った興味深い一冊です。明治維新は、これまで鎖国で閉じられていた欧米文化が一気に国内に流入し、様々なものが西洋化の特徴を取り入れ、変化していった時代でした。食文化もその例外ではなく、牛鍋、あんパン、ライスカレー、コロッケ、とんかつなどを次々に誕生させていきました。このように、日本の食文化は、一体どのように西洋食文化を受容して、伝統的な食文化と融合させていったのでしょうか。同書では、その点がよく分かるように丁寧に教示されています。
投稿元:
レビューを見る
明治以降、日本に入ってきた”西洋料理”がどのようにローカライズされて”洋食”として広く普及していったか、さまざまな資料を基に活写されていて、とても興味深い。
”牛鍋(すきやき)”にはじまり、”あんぱん”や”とんかつ”など、それぞれが一つのドラマであり、プロジェクトXでもある。”カレーライス”と”コロッケ”の分量が少ないのが残念だが、トリビアも豊富で、この本を元にしてどこかテレビでやってくれないかなぁ…。私がプロデューサーなら絶対企画書作っているぞ。
投稿元:
レビューを見る
「あんパン、ライスカレー、コロッケ、とんかつはどのようにして生まれたか」という副題にわくわくして、即購入。
めっちゃおもしろかった~!!
「これ読んでめっちゃ賢くなった」「すんごい知識増えた」という類の本ではないけど、これぞ読書の醍醐味。あまり知らなかった分野を知れた、それに伴って他分野を勉強してみたくなった・・・という好循環(^^)
明治天皇が肉食解禁してくれてよかった。
そしてとんかつが生まれてよかった。もちろんカレーもコロッケも。
あんパンの誕生秘話がいちばん興味そそられた。パンを作るということが、日本人にとっていかに大変だったかよくわかった。
日本人は、西洋文化・料理をうまく自分たちの文化に取り入れた。牛肉も、自分たちが食べやすいように煮込んで和風の味付けにしたことで、すき焼きが生まれた。
すばらしい!
あんパンが食べたい。とんかつ食べたい。昔の日本人に感謝したい。
歴史はおもしろいなーと初めて思えた本。
食べ物の歴史に照らし合わせると、苦手な歴史も楽しかった。
投稿元:
レビューを見る
西洋料理の材料や調理法を取り入れ、日本で独自の発展をとげた「洋食」の話。
中国朝鮮からくるアジア飯を基礎に、南蛮菓子をかじりつつも、基本的には自分のところだけで完結した食文化にひたっていた日本にも、開国と前後して西洋の文化が流れ込む。
まったく違う食文化と悪戦苦闘して、日本人の口に合う西洋風の料理が形成されていく過程を描く。
牛肉、肉食、あんパン、とんかつと軸をつくって説明していって、読み終えてみれば順に時代を追った全体像が見えてくる。
読みやすい構成で面白い。
ついでに参考文献も時代別に掲載されていて読みやすい。
ただ、教えてくれる知識が面白いだけに、考察が安易なのが残念。
エピローグに"若い世代を中心に、食のファッション化としてエスニック料理のブームがおこっているなど、さまざまな問題が提起されている。"(p243)とあって、えええええええってなった。
本文であれだけ変化を受け入れてきた日本の食文化を讃えておいてそのまとめ?
やたらと「類を見ない」という表現がでてくるのもマイナス。
これは私にとって「偏見はないけど」に次ぐくらいの警戒ワード。
「偏見はないけど」の後に来るのはまず確実に偏見まみれの言葉だし、「類を見ない」を使う人は類を知らない(調べていない)だけなのがほとんどだ。
世界中の似たようなものを全部調べてからじゃなきゃそんなセリフを使うべきじゃない。
関連
「千年、働いてきました」http://booklog.jp/users/melancholidea/archives/1/4047100765あんパンをつくる木村屋の執念はこの職人魂に似ている。
投稿元:
レビューを見る
明治期に流入した西洋料理がいかにして日本社会に取り入れられ、今日の洋食が生まれるに至ったかを書いた本。
洋食発生過程の人々の思惑・反応や、様々な紆余曲折・試行錯誤が詳しく書かれ非常に興味深い内容だった。とんかつやあんパンが登場するまでの数十年が実に濃密に感じられる。
投稿元:
レビューを見る
とにかく、『とんかつ』
『とんかつ』
『とんかつ』
大事なことなので何度でも言います(笑)・・・な感じ。
しかし、西洋から上陸した「西洋料理」が、米食に合う「洋食」という形で取り込まれ、庶民に広まるまでの過程がよくわかる。
エピローグは簡潔で良い。
そこに書かれていた、コムギ粉料理の歴史の方が自分的には興味深かったりして。
私を含める日本人が、なぜこんなに料理本が好きなのか、料理ブログが好きなのか、料理が出てくる小説が好きなのか・・・その理由は依然としてわからないけれど、明治維新までは獣の肉は穢れている、と食べられていなかったのに、たった100年そこらで劇的な食生活の変化を遂げたのは、やはり、並々ならぬ食に対する興味があったのだろう。
(日本人は)雑食性であり、食に対する主体性がない、とも書かれている。
投稿元:
レビューを見る
それじゃあお姉さん、洋食のはじめてを見に行こうか! 「クルクルバビンチョパペッピポヒヤヒヤドキッチョの、モーグタン♪」テ~レ~レ~レ~レ~...と、そんな声が(このネタが分かる方はきっと私と同年代でしょう)聞こえてきそうな「洋食はじめて物語」といった内容で、とんかつとあんぱんという2大発明を軸にして、日本の肉食と洋食誕生の歴史を紐解いていきます。楽しんで、また時には食欲を刺激され、おなかを鳴らして読みました。なじみの薄い「西洋料理」を「洋食」へと変えてしまった日本人の適応力とアレンジ力の高さには驚きです。
投稿元:
レビューを見る
文明開化における食の西洋化に焦点を当て、とんかつの完成迄を追ったもの。学術文庫らしく、多くの資料から学問的根拠をもとに構成しているので、内容も信頼できる。この手の本は店の親父さんや、ライターの推論で勝手に決めつけて書かれている書物が多いが、この書物は良書である。
投稿元:
レビューを見る
明治維新は 食べ物維新。肉脂を忌避して米に固執する日本人がいかに西洋料理を受容したか。まず、西洋に対抗するには身体が小さい日本人に肉食を広める為、明治政府は天皇が肉食してみせ、鹿鳴館でパーティを連夜開き啓蒙。知識人や上流階級に広まる。庶民は江戸後期から広まっていた薬食いの料理方法で牛肉を醤油や味噌で煮た牛鍋やすき焼きにして食べた。さらにパンは主食にはなれず、あんパンなど菓子パンとして広まる。やがて本格的に西洋料理を学んだ人々が一般向けの店を開くが、マナーが難しく馴染みない味のフランス料理を代表とする西洋料理はあまり広まらなかった。その中で日本人合うように工夫された洋食が生まれる。大正時代になるまでに三大洋食コロッケ、カツレツ、カレーライスが生み出される。コロッケなどは油を大量に使うので家で作るのを主婦が嫌がり、肉屋の店頭販売を買うのが一般的だった。さらにカツレツから発展し、てんぷらの料理方法で柔らかく厚く安い豚ヒレ肉を使ったとんかつが生まれる。付け合わせはキャベツの千切り、箸で食べられるように予めカットされ、ご飯とみそ汁に合う、究極の洋食は大ヒットする。そば屋などは押され次々に潰れる。関東大震災の後、復興するなかでそば屋は洋食も出すようになり、現在のカツ丼などを提供するそば屋が生まれる。中華は戦後、大陸からの引き上げによるラーメン、餃子の普及を待たねばならない。
投稿元:
レビューを見る
◇目次
○第1章:明治五年正月、明治天皇獣肉を食す
○第2章:牛肉を食わぬ奴は文明人ではない
○第3章:珍妙な食べ物、奇妙なマナー
○第4章:あんパンが生まれた日
○第5章:洋食の王者、とんかつ
○第6章:洋食と日本人
本書は明治時代に本格的に入ってきた西洋料理が日本国内で受容・吸収されていき、日本ライズされた「洋食」の誕生まで辿る。
著者日く、受容・吸収の過程を三段階に分け、①西洋料理の崇拝期である明治初期、②西洋料理の吸収・同化期である明治中期、③和洋折衷料理「洋食」の台頭期である明治後期とした。「あんぱん」もこの①の段階で誕生し、普及した。
また、③の時期に出てきた「洋食」が大正期~昭和初期にかけて洗練され、庶民の家庭料理として普及していった。この段階で、現在の我々に馴染みのある「とんかつ」登場するとされる。
全体の明治「洋食」の歴史の流れは分かりやすいが、著者の具体的な事例が時系列通りでなく、行ったり来たりしたり、説明もちょくちょく重複があり、若干のくどさを感じてしまった。
そういう感想もあり、内容はさることながらやや低めの評価にしてしまった。
投稿元:
レビューを見る
文明開化のシンボルとして、明治天皇が進んで肉食を始めたという事実から話は始まる。西洋料理をそのまま導入する努力をしつつも、そこは日本人。コメを主食とするということを大前提に少しずつ工夫をこらす。おやつというアングルからあんパンを生み出し、コメに合う西洋料理としてとんかつという「洋食」を生みだした。
その背景にあるのは、今も昔も変わらない食に対する高い関心だ。肉食の導入こそお上からの思し召しだったのかもしれないが、それを自らの食の中に取り入れ、アレンジしたのは他でもない一般の庶民。こういう成り立ちを持つ文化の足腰は強い。四年前から料理教室に通い始めたワタシも「庶民の総力によって料理を作りつづける、世界でもまれな日本の食の文化」の一端の一端の欠片くらいを担わせていただこうかと、おこがましくも思っている。
明日の夕食は洋食にしよう。
投稿元:
レビューを見る
パン食や肉食が明治時代に受容され、普及していく過程が、様々な資料を元に綿密に書かれていて、読み応えがありました。神戸ビーフは明治時代から有名だったとか、あんぱんの起源とか薀蓄も盛り沢山です。この本は文化史的な観点から書かれていますが、経済的側面についてもっと知りたくなりました。牛肉の普及には時間がかかったとありましたが、意識の面だけではなく、牛肉生産は非常にコストがかかるので、所得の向上と余剰労働力の発生が必要不可欠だったのではと思います。次は、明治維新と経済をテーマにした本かな。
投稿元:
レビューを見る
NDC383
明治維新は「食べ物革命」だった。庶民の舌が生んだ牛鍋・あんパン・カレーから「洋食の王者」の誕生まで、食卓近代60年の疾風怒濤明治維新は「料理維新」だった!
あんパン、ライスカレー、コロッケ――そして「洋食の王者」とんかつはいかにして生まれたのか
明治維新は一二〇〇年におよぶ禁を破る「料理維新」でもあった。近代化の旗のもと推進される西洋料理奨励キャンペーン、一方で庶民は牛鍋・あんパン・ライスカレー・コロッケなどを生み出し、ついに「洋食の王者」とんかつが誕生する。日本が欧米の食文化を受容し、「洋食」が成立するまでの近代食卓六〇年の疾風怒濤を、豊富な資料をもとに活写する。
西洋食の多くは、幕末から明治期にかけて導入された。そのわずか百数十年後の今日、私たちは、世界の国々のなかでも、最も多様化された食べ物を享受している。(中略)そこでは、現代日本の多種多彩な食の文化を理解する上で、もっとも興味深い時代が開幕していたのだ。近代化へ脱皮していく明治維新は、「料理維新」と称するのにふさわしい時代でもあった。――<本書「プロローグ」より>
※本書の原本は、2000年3月、小社より講談社選書メチエ『とんかつの誕生――明治洋食事始め』として刊行されました。
第一章 明治五年正月、明治天皇獣肉を食す
第二章 牛肉を食わぬ奴は文明人ではない
第三章 珍妙な食べ物、奇妙なマナー
第四章 あんパンが生まれた日
第五章 洋食の王者、とんかつ
第六章 洋食と日本人
岡田哲[オカダテツ]
1931年生まれ。東京大学農学部農芸化学科卒業。日清製粉株式会社勤務ののち、NHK放送大学で食文化史講座を担当する(