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“わたしは歪みに足をひっかけないよう注意しながら、ゆっくり奥へと進んだ。
二、三メートル進んだところで、壁に絵がかかっていることに気がついた。表面に盛り上がりがあるため、油絵だということはわかったが、まるで水墨画のようにモノトーンの濃淡だけで表現されている。現代美術の一種なのだろうか?題材はおそらくムンクの「叫び」のパロディーだ。苦痛に苛まれている男が描かれている。全体に流れるように歪んだ構図もムンクそのままだ。ただ、変形の度合いはムンクよりも激しい。右目の位置は額の真ん中近くなのに対し、左目は頬の辺りまで下がっている。左耳はなんとか判別がつくが、右目の下にあるのは鼻なのか右耳なのかもわからない。ほとんど縦になった唇から覗く歯は全部尖っており、明らかに本数が多すぎた。それどころか、顔のあちこちから、歯が無造作に生えている。指の数は右手に三本、左手に二本だが、それぞれ肘や二の腕にも何本か指がある。服は着ていない。背骨は筆記体のWのような形に折れ曲がっている。生殖器と脚の区別はうまくつかない。全身のあちらこちらに瘤があるが、顔のようにも見えるので、人面疽のつもりかもしれない。「叫び」の場合、人物の背景は橋のようなものと流れる空もしくは川だったが、この絵の背景は何が何だかよくわからない。顔を近づけ、じっと見て初めて、男の身体の各部分が何重にも重ね描きされ、流れるような高価を生み出していることがわかる。”[P.13_肉食屋敷]
「肉食屋敷」
「ジャンク」
「妻への三通の告白」
「獣の記憶」
ぐちょねちょ。
怖いのに面白いから止まらない。
乾ききった地面の上に放置されたまだピンクのみえる肉の固まりから得体の知れない液体がじわじわと染入る感じ。
“さて、私が、小林泰三がすごいと思うのは、彼が「二足の草鞋」の人だからである。会社員と作家の、という意味ではない。ハードSFとホラーの、である。
彼はSF専門誌(といっても一誌しかないが)には、一般人が逆立ちしてもわからないような難解な、最先端の科学知識をもとにした、マニアックなSFを書く。また、SF作家の集まりでも、「シュレディンガーの猫」がどうしたとか「ラグランジュ点」がどうしたとか「何とかの何とか軌道が何とか」とか、同業者である私すら理解できないような科学の話を滔々と語ってやまない。つまり、かなりハードコアのSF者なのである。ところが、一般文芸誌やアンソロジーなどに書くとき、彼の作風は一変する。日常の些細なできごとからはじまり、それが変容し、ついには自分自身の存在が信じられなくなり、現実と虚構の別がなくなっていく……というような、誰もが共感でき、恐怖と戦慄を覚える物語を書くのである。そこには、彼が日頃好んで口にする先端科学はまるで登場しないか、もしくは形を変えてどこかに忍び込ませてある。要するに彼は新のエンターティナーであり、小林泰三がカルトな作家ではなく、広く一般の支持を受けている理由はそこにあると思う。そのことは、私はくどくど言わなくても、この短編集に収録されている各編を読めば明らかである。”[P.214_解説 小林泰三は、ぐふふふ……と笑う 田中啓文]
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「ジャンク」人体をロボット的な扱いで書くとこういう事になるんだろうか.たぶんロボットが「ロボットのパーツを単なる部品として扱う物語」見るとこういう気持ち悪さを感じるに違いない「妻への三通の告白」"ぼくはじんせいにかった"でゾッとした
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小林泰三五冊目。
コレは久々の大ヒット!
短編、4編収録で、その4編ほぼ全てのオチが大好物という極々マレな一冊。
収録順に感想を……。
「肉食屋敷」SFホラーかつ、特撮怪獣モノ的な1編。コレ、ドコかで読んだ記憶があるんだけど、何で?何時?等々は一切覚えていない。オチまでは確信持てずにいたが、大好物のオチなので、思い出した感じ。ソレ位好きなラスト。
「ジャンク」コレは北斗の拳とかマッドマックスⅡ、Ⅲ(実際はソレより進んだ)未来ウェスタン的世界観。短編の中に伏線が張り巡らしてあるので、クライマックス~ラストは爽快さすら感じる。
「妻への三通の告白」速攻、二度読みしてしまった。死期をむかえた老人のモノから、時系列を遡るように並んだ三通(章)の書簡体。オチ自体はこの4編の中では、オーソドックスな部類だが、ラスト二段落はゾクりときた。
「獣の記憶」コレはミステリーとして面白い。二重人格モノと思いきや、実は……、でも……(あまりネタバレ的にしたくないので伏せ字にしときます)。謎解きとしては、途中で匂わすトコは気付いてたので、やはりって感じ。それでも、伏線の張り方は絶妙。そしてラスト、ハッとさせられる。
ホラーの括りではあるが、細かいジャンルも、設定も異なる短編集で、実に素晴らしい。なので、★は4.5って感じの★★★★☆。
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タイトルのインパクトで購入。
肉食屋敷はほんのりクトゥルー物で嬉しい。
ジャンクは異形コレクションで既読ながら何度読んでも世界観が好み。
他2編はミステリー仕立てでこれまた楽しい。
ホラー、アクション、ミステリー思う存分楽しめた1冊。
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肉食屋敷とジャンクはよかった!
後の二編はう〜ん、でしたね。
この人の小説、あんまり読んどことないけど、オチのあたりを書きながらとんでもないドヤ顔してんちゃうかな〜って思ってまう。狙いすぎ感が強くて。
この人は設定だけ出して、恒川光太郎さんに書いて欲しいな。
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ムードは全部解説「小林泰三は、ぐふふふ……と笑う」 by田中啓文に”台無し”にしちゃった(誤…………
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肉食屋敷は恐竜を復活させるつもりがクトゥルフっぽい宇宙人を復活させてしまった話。うわあ・・・と思ってしまうようなところで終わり。
ジャンクは予感通りの展開。人間の脳をCPUやメモリ、人間の目をカメラと言った感じで改造するというのは気持ち悪い。人造馬には乗りたくないなw
妻への三通の告白は2通目のマネキンでピンと来てしまったけど、一通り読んだ後に一通目から読み返して楽しめた。本人が幸せなら…まあいいのかな。
野原と磯野って言うと2つの国民的アニメが頭をよぎるw
獣の記憶は最後まで読めない展開で面白かった。
そっちが多重人格者ですか…!
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久しぶりにホラー文庫の小説を読んでみた。
表題作『肉食屋敷』。
ジュラシック・パークに刺激されて、古代生物の復活を研究している研究者が、今までとは異なる方法でDNAの抽出に成功したのだ、と。
しかし、その研究の結果、復活させることが出来たのは……
最後の一文を読むと、あ、このオチか!って思うんだけど、最後までそれに気付かないかも。
で、途中まで戻って読み返すと、あぁ、ここ!! ってなる伏線にぶち当たる。
さすが。
『ジャンク』
おもしろい内容ではある。西部劇の世界を描いているのだけど、近未来的な部分もあり。
で、やっぱり最後を見て、
あ、こうくるか、って。
『妻への三通の告白』
これは、そうくるよね、っていうオチなんだけど
読ませるよな。
すごいわ。ずるずるずるってさいごまでいっちゃいました。
『獣の記憶』
多重人格と思わせておいて、実は。
って言う話。
そっちか! ってやつです。
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えー、実は今年最後の読了になったのはこちらでした。ちょっと古いけど、なんともホラーな装丁とタイトルで趣味嗜好が反映された様子。
肉食の屋敷ですって。屋敷が肉を食べるとは?まぁ読めば分かるんだけど小林泰三さんらしいSFチックなお話。ジュラシックパークもびっくり。
その他「ジャンク」と言う西部劇タッチのゾンビもの。人面瘡にびっくり。
「妻への三通の告白」では一途に思い込んだ者勝ちの狂気。マネキンもびっくり。
最後は「獣の記憶」。自分の中にあるもう一つの人格と闘う男の様が異様。敵対者もびっくり。
小林泰三さん初期の恐怖短編集。捻じれた世界、歪んだ世界が面白い!
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私好みの内容
小林氏のオリジナルが輝本ですねぇ~
特に「ジャック」がお気に入り
自分を愛した女が殺されかけた挙句自分の体の一部へ移植
移植したと思ったが実際には女が操釣り人形にされた男の姿だったとは・・・
人を殺め町で売りさばく・・・リアル・・・。
二番目は「妻への三通の告白」
自分が愛した妻はマネキン?親友の妻は一体誰?
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