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アメリカの作家「エラリー・クイーン」の長篇ミステリ作品『災厄の町〔新訳版〕(原題:Calamity Town)』を読みました。
「エラリー・クイーン」作品は、『オランダ靴の謎』以来なので、約3年振りですね。
-----story-------------
【巨匠の代表作を新訳で贈る】
結婚式直前に失踪した「ジム」が、突如としてライツヴィルの町に戻ってくる。
三年間じっと彼の帰りを待っていた婚約者の「ノーラ」と式を挙げ、幸福な日々が始まったかに見えた。
ところがある日、「ノーラ」は夫の持ち物から奇妙な手紙を見つけた。
そこには妻の死を知らせる文面が……旧家に起こった奇怪な毒殺事件の真相に、名探偵「エラリイ」が見出した苦い結末とは?
「クイーン」が新境地に挑んだ代表作を新訳で贈る!
解説/「飯城勇三」
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1942年(昭和17年)に刊行された「エラリー・クイーン」のミステリ長篇… 作者と同名の探偵「エラリー・クイーン(エラリイ・クイーン)」が登場する作品で、ニューヨークの北方(ニューヨークとモントリオールを結ぶ鉄道路線上)に位置しのマホガニー山地・ボールド・マウンテン山麓に位置する架空の町ライツヴィルを舞台にしたライツヴィルシリーズの最初の作品、、、
『東西ミステリーベスト100』では、海外篇の42位にランクインしている作品です。
■第一部
1 クイーン氏、アメリカを発見する
2 厄災の家
3 "有名作家、ライツヴァルに住む"
4 三姉妹
5 恋人の帰還
6 "ライト家とヘイト家、本日婚礼"
7 ハロウィン――仮面
8 ハロウィン――緋文字の手紙
■第二部
9 焼かれた贈り物
10 ジムと享楽
11 感謝祭――第一の警告
12 クリスマス――第二の警告
13 元日――最後の晩餐
■第三部
14 余波
15 ノーラは語る
16 アラム人
17 アメリカ、ライツヴァルを発見する
18 聖ヴァレンタインの日――愛は何にも勝たず
■第四部
19 ふたつの世界の戦争
20 プライドを捨てて
21 民衆の声
22 参謀会議
■第五部
23 ローラと小切手
24 エラリイ・スミス、証言台へ
25 パトリシア・ライト嬢の奇妙な要請
26 陪審員第七号
27 復活祭――ノーラの贈り物
■第六部
28 ツイン・ヒルの悲劇
29 エラリイ・クイーンの帰還
30 五月の第二日曜日
■訳者あとがき
■解説 クイーンの最高傑作 飯城勇三
結婚式の前日に姿を消して3年、「ジム・ヘイト」が突然、故郷ライツヴィルに戻ってきた… 彼は、その帰りを待ち、独身でいた許婚の「ノーラ」と結婚し、二人は夫婦となった、、、
そんなある日、「ノーラ」は夫の読みかけの本の間に、夫が書いたと思われる未投函の手紙を発見する… そこには妻の病状が悪化と、三通目には妻の死を知らせる文面が載っており、「ジム」の���書には砒素の項目に書き込みがあった。
これは予定された殺人計画なのか? 自分はこんなにも愛している夫に殺されるのだろうか! 新婚生活が始まるとまもなく、「ジム」の姉「ローズマリー」が居着きだし、しばらくすると周囲のものは彼女の下品な話と奔放な生活に悩まされるようになった、、、
そして、「ジム」はどういう訳か金に困り、荒れていた… 「ノーラ」は神経質になり二度も倒れ、二度目の時「ノーラ」の食べたものをチェックした「エラリー」は砒素が入っていると確信する。
あの手紙のように、誰かが「ノーラ」暗殺を狙っている! たまたまライツヴィルを訪れた「エラリー・クイーン」は、美しい三人姉妹のいる旧家「ライト家」に起きた毒殺事件を名探偵としての正体を隠し殺人を未然に防ごうとする。
しかし、新年のパーテイの夜、「ノーラ」が口を付けたカクテルを、「ローズマリー」が飲んだところ、砒素中毒で「ノーラ」が重態、「ローズマリー」が死んでしまい、「ジム」が僕が用意したと告白する、、、
「ジム」は逮捕され、有罪は確定と思われた… 何より、あの手紙の件がある! しかし「ノーラ」はあれは偽の手紙だ、「ジム」は私を愛していた、そんな事をする分けがない、と主張する。
新聞は破廉恥な犯罪と書き立て、世間は非難したが、女性新聞記者の「ロバータ・ロバーツ」だけが「ジム」支援の記事を書いた… 「ノーラ」の妹「パトリシア(パット)」と陪審員の一人の関係が暴露され、裁判は一時中断される、、、
カクテルに砒素を混ぜることができたのは「ジム」だけと思われた… 彼が「ノーラ」を殺そうとして、誤って姉の「ローズマリー」が死んでしまったのか!?
旧家「ライト家」に起きた奇怪な毒殺事件と、醜聞によって猜疑心に苛まれて行く田舎町の人間模様にもたらす波紋… 名探偵「エラリー」が見出した苦い結末とは?
うーん、なかなか哀しい結末でしたね… 「ジム」は「ノーラ」を守ろうとして、「ノーラ」は「ジム」を守ろうとしていたなんてね、、、
もっと早く真相に気付いていれば、二人の人生は変わっていたかもしれませんね… 本作は1979年(昭和54年)に監督「野村芳太郎」、脚本「新藤兼人」で、出演は「蟇目良」、「佐分利信」、「乙羽信子」、「松坂慶子」等で『配達されない三通の手紙』という題名で映画化されているようです。ちょっと気になりますね。
以下、主な登場人物です。
「ジョン・F・ライト」
ライツヴァル・ナショナル銀行頭取
「ハーマイオニー(ハーミー)」
ジョンの妻
「ローラ」
ジョンとハーミーの長女。駆け落ちして、夫に先立たれる。
ライト家に帰ることができず郊外に住み、飲んだくれている。
「ノーラ」
ジョンとハーミーの次女。結婚式前日失踪したジムを待っている
「パトリシア(パット)」
ジョンとハーミーの三女。活発な十代の娘
「ダビサ」
ジョンの妹
「ジム・ヘイト」
ノーラの夫。結婚式前日に失踪したが3年振りにライツヴァルに戻ってきた
「ローズマリー・ヘイト」
ジムの姉
「ヘンリー・クレイ・ジャクソン」
ライト家の執事
「ルディー」
ライト家の老女中
「エミリーン・デュプレ」
ライト家の隣人
「マイロ・ウィロビー」
医師
「フランク・ロイド」
《ライツヴァル・レコード》紙編集長
「ロバータ・ロバーツ」
新聞記者
「イーライ・マーティン」
判事
「クラリス」
イーライの妻
「カーター・ブラッドフォード」
ライト郡検事
「デイキン」
ライツヴィル警察署長
「ライサンダー・ニューボールド」
裁判長
「エラリー・クイーン(エラリイ・クイーン)」
推理作家の名探偵。
ライツヴィルの名家であるライト一家から部屋を借り、エラリイ・スミスと名乗って新作執筆に務める。
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国名シリーズとはまた違ったエラリイが見られた。人間模様がまじまじと描かれており、また結末もなんとも儚げなものであった。
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エラリー・クイーンの1942年発表の本、その新訳。
災厄の家、という話かと思ったら、災厄は町全体、その人々。
銀行家のライト氏の美しい3人の娘たちと、
偶然訪れた小説家、エラリー・クイーン(?都合良すぎ!)アメリカの田舎の富裕層の家庭が、推測ではあるけれど垣間見られて、長閑で平和だけれど悪意に満ちた物見高い庶民達の噂話が大きくこのストーリーを左右している。だけど、年代をみたら大戦前夜。
この町も国も、そして我が国もやがて時代の大きな波に飲み込まれてゆくんじゃないですか!
アメリカという大きな国のまた、その一部をみつけてしまった
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ロジカルな謎解きがしっかり背骨にありつつ、切ないドラマに打たれました。有栖川有栖さんは、お若い頃からこういう名作に親しまれ、江神二郎などの名探偵を産み出されたんですね…
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クリスティ読みすぎて先が読めてしまっていたのが残念だったものの、そうでなければもっと楽しめたであろうにな、と思うのであった。
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こ、これは面白い!
ライツヴィルという町を舞台にしたシリーズの第一作目。田舎の空気と、名家の人たちのあれやこれやから、事件が起こり、エラリィは隣人として関わっていきます。
お父さんがいないのが寂しい…ですが、エラリィの客観的立場の観察と、時々入れ込んでしまうところとか、絶妙な感じです。
真相もよく練られていて、唸ってしまいます。
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初めて読んだエラリイ・クイーンの小説。
前半では、田舎町の良い面も描かれるが、事件後は圧倒的に悪い面が多く描かれる。
登場人物たちの濃い人間関係によって拗れていく事件が、緻密な人間描写によって、なんの無理もなく展開されていく様子は、圧巻だった。
こうした、ドロドロとした関係のミステリ、そして、探偵が気付くのがあまりにも遅いミステリは、イライラして読むのが辛いこともあるのだが、今作は、エラリイの人柄もあって、スルスルと読めた。
真犯人が被害者となるはずだったノーラであることに関しては、状況的に考えて、わりとすぐわかるのだが、ジムの姉にまつわる謎解きは、最後までわからなかった。
何より、意外だったのは、ノーラが、夫を犯人に仕立て上げた事で、物語序盤から、魅力的なパットに感情移入させられてしまっていたので、読者もエラリイも、ノーラの狂気に気づくことができない、という仕掛けを、作者は作っていたのかなと思った。
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国名シリーズを読み終えてからの、災厄の町。
キレッキレのエラリーに馴染んでいたので、しがらみに埋もれてなかなか動けないエラリーが、風采が上がらないように見えて、もどかしい。。
ただ、背後に不穏な音楽がずっと流れているようでざわざわしながら、先へ先へとページを送りました。
排他的な集団の結束や、親しい間柄程話し合いができず問題を大きくしていくことの恐ろしさを感じました。
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ライツヴィルものの第1作。
謎解きももちろん素晴らしいのだけど、今回読んでみてそれ以上に感心したのが、ライツヴィルの街そのもの。
無責任で、人の不幸を待ち望み、煽るためなら嘘も厭わない街の人たち。これって現代と何らかわらない。ことにネットではなおさらで、人の本質ってものはこういうものかと納得してしまう。だからこそ理性的な振る舞いが求められるのでしょうね。
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エラリー・クイーンのライツヴィルシリーズ第一弾。新訳版で。国名シリーズを半分ほど、レーン四部作は読了済み。
正直、エラリー・クイーンはパズラーとしての側面が強く、登場人物もそこまで掘り下げないイメージだったが、今作はいい意味で裏切られた。
前半は殺害予告と殺人に至るまでの過程、中盤は白熱の裁判シーン、後半はある一つの事実でひっくり返る真相。そこに、クイーンらしからぬ人物描写が加わり、より魅力的な作品に仕上がっている。ライツヴィルという町の空気感も独特。
真相も凄い。
一つの事実が分かった途端、全ての見え方が変わる。クイーン作品では今までXの悲劇が一番面白いと思っていたが、今作はそれを上回る良さだった。ハヤカワミステリ文庫の新訳シリーズ、楽しみになってきた。
で、作中のクイーン氏、結構なキス魔でチャラいので、国名シリーズのクイーン氏が好きな人は注意笑
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「早川ミステリハンドブック」で新発見いっぱいのクラシックミステリであがっているので読んだ。クイーンは中学生の時にⅩとYを読んだきり。粛々と謎解きが進むといったような内容だったと思うが、それに比べこれはどうだ。シュールで騒々しく極彩色な面々と行動、それを覆う街。テリー・ギリアムの「ゼロの未来」の画面をなぜか思い浮かべてしまった。う~ん、名作だというがなじめなかったなあ。でも映画にしたらおもしろいかもと感じた。
ライツヴィルという小さな町を舞台にライト家の三姉妹がからむ。長女は離婚して町に戻ってきていて、二女ノーラは3年前の結婚式直前に新郎ジムが雲隠れ、裕福な親が用意した家は空き家になっていてそこに作家エラリー・クイーンが借家する、が突然ジムが帰ってきてめでたくノーラと結婚。クイーンは隣の母屋に間借りし直すが、ノーラは夫の蔵書の間から「妻を殺す・・」という3通の手紙をみつける。クイーンは三女パットとともに真相を追うが・・ そのうち夫ジムの姉だというローズマリーが新居にやってきて居座ってしまい・・ この姉、最初から姉じゃないだろうという気はするんだよなあ。
「災厄の街」CALAMITY TOWNという題名のように、街を襲ったライト家と街の人々の騒動。
1942発表
2014.12.15発行 2021.8.25第4刷 図書館
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96点:「ぼくならできました」
エラリイクイーンが単なる外部の観察者ではなく、事件の当事者として裁判で証言をする。名探偵というものと行動の不自然さ、一般常識とミステリロジックの衝突、世間からみた探偵のいかがわしさが裁判の中であきらかになり、ただそういったものをロジックで突破するところは大きな爽快感を感じる。
世界文学としてもミステリとしてもクイーンシリーズとしても圧倒的におもしろい‼️
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「中途の家」に続き、読了。その間の作品は読んだ事がないが、6年でここまで作風が変わるのか。
ライツヴィルものの第1作。国名シリーズとは比べ物にならないほど、人間を描いている。それまでの作品とは違う意味で傑作と言われるのも納得。
人物やドラマに重きを置いている為、なかなか事件は起きないが、登場人物の魅力が増し、長くは感じなかった。そして、ジムの裁判などはまるで映画を見ているかのごとく、映像が頭に浮かぶほどの盛り上がり。
それにしても、エラリーからエラリィと表記が変わっている彼だが、キャラクターもだいぶ変わったな。ヒロインにアタックし、偽名で濃厚な人間関係の中に身を隠し出過ぎた捜査もしない。
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さしたる印象がない。普通の小説的である。
しかし、20世紀初頭、殺人以外でも、病気でもなんでも、人は死ぬ。
架空の町、ライツヴィルをしばらく離れて、また、この町の駅に立つ、エラリークイーン。随分、前のことのように。
「おお、惨めな人生は流し! 幸福は短し!」
”苦悩する者は、物事を悪く考える。”
死んで償って、後でわかる。そんな、悠長なことしてていいのか、エラリークイーン。