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スウェーデンの作家「ヨアキム・サンデル」のスパイ小説『スパイは泳ぎつづける(原題:Simmaren)』を読みました。
「ギャビン・ライアル」の『深夜プラス1』にハラハラドキドキできたので、引き続きスパイ小説です、、、
スパイ小説もミステリのサブジャンルのひとつだし、スウェーデンの作家の作品なので、広義では北欧ミステリ作品でもありますね。
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気をつけろ、おまえを見張ってる連中がいるからな―兵役についていた頃の旧友から届いた一通のメールが、一介の学生に過ぎない「ムーディ」を謎めいた事件に巻き込む。
目前で友人が射殺され、何者かに追われた彼は欧州議会で働く元恋人の「クララ」に助けを求めた。
ブリュッセルからパリ、そしてオランダから厳寒のスウェーデンへと続く必死の逃避行。
陰謀に巻き込まれた若き男女の運命は?
北欧から国際スパイ小説の新鋭登場。
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2013年(平成25年)に刊行された著者のデビュー作… 本作品は、主に以下の4人の視点から描かれています、、、
元軍人で空挺学校での厳しい訓練の後、アフガニスタン、イラクで従軍経験があり、現在はウプサラ大学博士課程の学生「マフムード・シャモシュ(ムーディ)」、
「ムーディ」の元恋人で欧州議会の議員秘書「クララ・ヴァルデーン」、
世界最大のPR会社マーチャント&テイラーに勤めるロビイスト「ジョージ・レーヴ」、
そして、「クララ」の父親でアメリカのスパイ(工作員)と思われる人物… こちらは中盤までは1980年(昭和55年)以降の回想が中心ですが、終盤は「クララ」や「ジョージ」と絡んでくる展開、
平和に暮らしていた一般の人々が、あることをきっかけに事件に巻き込まれて行き、謎の組織から命を狙われるが、なんとか対抗していくという典型的な巻き込まれ型のスリラー作品でしたね。
物語は1980年のダマスカスから始まります… ひとりのアメリカ人スパイが生まれたばかりの自分の子どもを置き去りにするが、自分でも許すことのできないこの罪を忘れようと、レバノンやアフガニスタン、イラク等危険な地域を渡り歩きます、、、
時は経ち2013年12月… イラクやアフガニスタンで活動する英米の戦争下請け企業について、スウェーデンのウプサラ大学で研究しているアラブ系スウェーデン人の「ムーディ」は、謎のメールを受け取って以来、だれかに尾行されていることに気付く。
仕事でブリュッセルに行く予定がある「ムーディ」は、かつての恋人でブリュッセルの欧州議会で働いている「クララ」に連絡を取る… 同じ頃、ブリュッセルのロビー会社で働くスウェーデン人の若手社員「ジョージ」は、新たに彼の顧客となった<デジタル・ソリューションズ>なるアメリカ企業とのミーティングに臨み、上司からこの顧客の言うことには何でも従うようにとの指示を受ける、、、
さらに「ジョージ」は、過去にインサイダー取引に関わり、会社法や企業の合併・買収を扱っていたゴットリーブ法律事務所を去ることになったことを<デジタル・ソリューシ���ンズ>に知られ、弱みを握られたことで彼等を裏切ることができなくなり、「クララ」のPCに仕掛けをする等、不本意ながら「ムーディ」と「クララ」を追い詰める作業に加担することになる… 「ムーディ」は、ブリュッセルでアフガニスタン紛争においてアメリカの戦争下請け企業との関わりを持ち、何らかの秘密をカブールから持ち出した、兵役時代の友人「リンドマン」に呼び出されるが、その場で友人は殺害され、その殺人容疑が向けられるだけでなく、何者かに命を狙われる羽目に陥る。
「ムーディ」、「クララ」、「ジョージ」の三人は思もよらぬ陰謀に巻き込まれ、ブリュッセルからパリへ、アムステルダムへ、嵐のスウェーデンの海へと逃避行を続けながら生き延びるために戦うことに、、、
「ムーディ」の辛い最期、「ジョージ」の意外な活躍、嵐の中のサンクト・アンナ諸島の離島での銃撃戦、極秘情報が格納されたPCのパスワードの解読方法やCIAとの丁々発止の交渉 等々… 集中力が途切れることのない怒涛の展開で、エンディングまで愉しめる展開でした。
結局、女性の方が強かったってことかな… でも、面白かったですね、、、
「ヨアキム・サンデル」は、本作品がデビュー作ですからね、次作以降も期待したいな。
以下、主な登場人物です。
「マフムード・シャモシュ(ムーディ))」
博士課程の学生
「リンドマン」
ムーディの元戦友
「クララ・ヴァルデーン」
ムーディの元恋人
「シリル・キュヴェイエ」
クララの恋人
「エーヴァ=カーリン・ボーマン」
クララの上司。欧州議会議員
「ボッセ・ベンクトソン」
クララの幼なじみ
「ガブリエラ・サイシェルマン」
クララの友人。弁護士
「ハンス・ヴィーマン」
ガブリエラの上司
「ジョージ・レーヴ」
ロビイスト
「リチャード・アップルビー」
ジョージの上司
「ライバー」
<デジタル・ソリューションズ>社員
「ジョシュ・ブラウン」
<デジタル・ソリューションズ>社員
「ブリッツィ」
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