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3.11。
私は千葉の海浜幕張にいた。
幕張テクノガーデンは高層ビルがいくつか連なっているビル。
頑丈そうで、何かが起こるとは想像もできない場所だった。
でもあの日は揺れた。
避難して外に出て、さらにその揺れを現実として見た。ビルが、ビル同士がぶつかるんじゃないかというくらい揺れていた。
揺れが落ち着いて、自宅に帰れる人は帰ろうってことになったけど、電車バスはすべてストップして、完全の陸の孤島。
地面は、埋め立てのせいか液状化と歪みでひどいことになっていた。
どうすることもできなくて、オフィスに戻り、インターネットでテレビを見た。
映し出されるのは宮城岩手福島の状況ばかり。おもちゃのように家が流され、感情がおかしくなり笑い出しそうになった、必死に感情を制御しなければと苦しんだ記憶が昨日のように蘇る。
そんな、私にとってはテレビの中の世界。
それも現実に起こったこと。
津波に奪われた命は2万を超えるという。
その苦しみは、体験した人や家族しか分からない。
悼み、苦しみ、嘆くとも、
体験した人や家族と私はちがう。
石巻で働くことになってもこの感情とはうまく付き合えなくて、苦しくて、たまらなかった。
弱かった。
今なら分かる。
死を悼むことは大切。
でもその家族が嫌という程魂を鎮めるために祈っていて、私は部外者であるということ。
今なら分かる。
自分にやるべきことは、生き残った人たちの支援だということ。
生き残った人にはこれから先の人生がある。
死にそうなくらい辛くても、生かされた命。
その命とどう向き合って、どんな人生を作っていくか。
その助けになることなら、きっとできることはあると思う。
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読みはじめて、なかなか話の全体像が見えてこなかった。ほとんど文章が会話で書かれていたからだ。どいやら東日本大震災でなくなっていく主人公が同じく立場の人たちとのテレパシー的な会話だった。家族を思いやる気持ちと現世から巣立つ心苦しさに心打たれた。
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2050323
東日本大震災をテーマにした話題作だったので、単行本の時から気になっていた。
文庫本化されたので読んでみたが、最初から??の連続で、登場人物や情景などの設定か理解できない。
それでも全く感情移入できないまま1章を読んでみたが、やはり理解出来ず。
評価の高い作品なので自分の読解力や想像力が乏しいのかと、なんだか辛くなってきたのでこれ以上読み進めるのは無理と思い読了とする。
高評価のレビューは皆さんの本心なのだろうかと疑心暗鬼にさえなってしまった。残念。
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東日本大震災で亡くなった方が、大切な人を探す気持ちがもとで始まるラジオ番組の話。
未曽有の事態で突然亡くなり、亡くなったことをうっすら理解しながら、自分と家族、当時一緒にいた誰かの安否を気遣う様子が、柔らかく描かれている。肉体的な苦しさもあるけれどい今までの何でもない日常や大切な誰か、そしてその誰かとの思い出や生活が亡くなっていく無念さを受け入れなければならないのが、切ない。それでもDJが妻と子と話ができてよかったと心底ほっとした。
こうして生きていた人々の息吹をなくしてしまった震災を風化させてはならないと改めて思った。
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深夜の2時46分に想像の中にだけ届くラジオ。
DJのアークとリスナーの不思議な関係。
東日本大震災の様に震災や事故はいきなりやって来る。いつもの日常が非日常に変わる。亡くなったひとと生き残ったひとを分けるものは何か。亡くなったひとにも言い分も、不満もあったと思う。
切ない話だけど、通読後、彼らも大切なひとのことを考えているのではと思えることで、どこか救われたい自分もいる。
「生者と死者は持ちつ持たれつなんだよ。ふたつでひとつなんだ」ひとは、点として存在するのでなく直線として存在すると思わずにはいられない言葉。
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あまり好きじゃなかった。
私に想像力が足りないから?
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深夜二時四十六分。海沿いの小さな町を見下ろす杉の木のてっぺんから、「想像」という電波を使って「あなたの想像力の中」だけで聴こえるという、ラジオ番組のオンエアを始めたDJアーク。その理由は--東日本大震災を背景に、生者と死者の新たな関係を描き出しベストセラーとなった著者代表作。
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死とか生とか、それだけが問題なんじゃなくて
想像して形にして想像して掬い上げられて
そうやって世界がリンクしていくんだなって。
でもやっぱりそれがまず生きてることなんだなって思った。
死者も想像する、てのは生きてる側の思い込みかもしれないけど
でも生者にとっても多分死者にとっても想像することって救いでもあるんだろうなー。
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第四章は人がたくさんいるところで読んでいた。だけど涙を堪えきれなくなって思わず店を出た。車の中で一人で涙を拭いながら読んだ。
昨年の秋に、東北にボランティアとして行った経験がなければ、これほど「想像」できなかったと思う。直接被災していない人間が何かを語るということに賛否両論ある。でも、直接被害を受けていない人間が、被害を受けた人達の状況や気持ちを想像することは悪いことではないとこの本は伝えてくれている。
「僕の言っている死者の世界は逆だ。そこは生者がいなければ成立しない。」
「生き残った人の思い出もまた、死者がいなければ成立しない。だって誰も亡くなっていなければ、あの人が今生きていればなあなんて思わないわけで。つまり生者と死者は持ちつ持たれつなんだよ。決して一方的な関係じゃない。どちらかだけがあるんじゃなくて、ふたつでひとつなんだ」
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ダリの絵のようなシュールレアリズムに満ちた、でも確かな震災のレクイエム。ラジオから流れてくるバックグラウンドミュージックは東京スカパラオーケストラの楽しく騒々しい音楽が想起される。中有(あの世とこの世の中間)に留まる魂のこの世への未練が「から元気」の中、哀しく描かれる。
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いとうせいこうさんと、ラジオを取り入れている所に惹かれて購入。
東日本大震災を背景に、生者と死者の関係のあり方を書き記した書籍。私は当時、千葉県柏市におり、震度はあったが大きな被害を受ける事はなく、友人の母親の車に乗り、深夜友人宅に到着し、その夜は友人宅で震災の映像をずっとながめながら、一夜を過ごした事を覚えている。恥ずかしながら、自分事のように思う事ができていなかったと感じる。感受性が低かったと思う。被害を受けていない者が落ち込んでどうするのだ、と。しかし今となっては、何の考えもなしに前向きになるのは違うな、と思う。
「私は関係ない」「知らないから想うことも、語る資格もない」と思うことはない。被災者の事を想って、想像して、痛んで、記憶しても良い、忘れて前向きになることだけが、いい事ではないのだと、あとがきも含め、感じることが出来た。
楽観的で、単細胞な人間であるため、もっと感情豊かな人間になりたいとこの書籍を読んで感じた。
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芥川賞の候補作になったり、おそらくそれ以前から話題だった小説。
何が題材なのか知っていただけに読むことに少しためらいはあったけれど、紀伊國屋で超プッシュしてたからつられて買ってしまった。
「深夜2時46分、そのラジオは聴こえてくる」
この物語は“杉の木”というのがひとつのキーワードなのだけど、巻末の解説によると、樹木というのは死んでいる組織と生きている組織があって、生体と死体が切り分けられない形でひとつの個体が成り立っている、とのこと。
それはこの世界も同じで、生きている人間は死んだ人への思いを完全に断ち切ることはできないし、死んだ人間もまた、生きている人の記憶によって成り立っている。生と死が渾然一体となってこの世界はできている。
死んだ人の声が聴こえる、という人も世の中にはいる。
私は聴こえないからそれが嘘なのか本当なのかはわからないけれど、死んでしまった誰かがもしかしたらこんなことを思っていたのではないか、と想像することはある。
それは実際のことではなくただの想像に過ぎないけれど、それを思うことで気持ちに整理がついたり、前に進む力になったりする。
一歩間違うと悲しみの中にうずくまる原因にもなりかねないけれど、そういうことも含めて、その人ために必要なことなのだと思う。
物語の中でも賛否両論だから、きっと実際の世界でも賛否両論だと思う。
私自身は、好きか嫌いかで判断することを少しためらう小説だった。
もう少し時間を置いて再び読んでみたときに答えが出るのかもしれない。
でもこの題材に正面きってぶつかるってすごいことだと思う。批判があることも最初から予想できたはずだから。
予想できただけに雰囲気がライトになってしまった部分もあるのかもしれない、と想像した。
いちばん答えを知ってるのは、あの“2時46分”を絶対に忘れられない人たちなのかもしれない。
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私の身近な人がいつか亡くなって、悲しみに暮れて立ち直れないような時に、もう一度読み返したくなる本でした。
いつまでも死者を思っていてもいいんだ、一刻も早く忘れて立ち直らなくちゃ、なんてことはないんだよ、と背中に手をあててもらったような感じ。
何ヶ所か、何度も読みたい文章があって、ページの端を折りました。
私は二度流産しており、その子たちは旦那の実家が持っているお墓に眠っています。
最初の子を納骨した時、そこのお坊さんが私に「早く忘れてしまいなさい」的なことを言いました。
その時の私の心情は、「なに言ってんだこのクソ坊主」でした。
忘れろったってそうそう簡単に忘れられるもんじゃない、坊主のくせにそんなこともわからないのか、と。
まあ、励ましてくれていたのだと、今では思いますが。
第三章の、DJアークが神様の仕業だとしても、俺は神様をこうしてやる、という長い文章。
やり切れなさがいっぱい詰まっていて、胸が苦しくなりました。
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この本にはずっと存在していてほしい。
私の人生の中で今のところ、大切な人との別れというものがないけれど、考えただけでも辛くなるそれだけど、想像の力があれば、大切な人を心の中においたまま優しい気持ちで生きていくことができるのかもしれないなと思いました。
これも想像でしかないけれど。
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期待しすぎたせいか、読むのに苦労した。初めて読む作家さんなだけに残念。
「おもかげ復元師」の前に読んでたら、また違った感想だったのかもしれない。
H27.4.25~5.15読了。
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東日本大震災を背景として、生者と死者の関係性、実体験していない悲劇を人は語り得るのかなどの問題を扱った作品。
特に第2章では、その悲劇を実体験していない人間が悲劇を語ることの倫理的な問題が登場人物の対話を通じて炙り出される。あることを語る際に、確かに実体験をしているということは重要な要素であるのは間違いがない。一方で、その点だけを重視し、実体験していない人が「語り得ぬものについて沈黙しなければならない」のかと言えばそれもまた違うのだと思う。実体験した人の固有性を重視しつつも、実体験していない人も含めて語る自由を担保し、その関係性をうまく取り持つこと、そんな広範な問題を扱った作者の勇気に感嘆した。
物語としてもリーダビリティが高く優れた出来。