紙の本
社会事情を色濃く反映した、社会派作品
2002/04/20 15:37
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:佐々木葵 - この投稿者のレビュー一覧を見る
タイトルからすると、新しい世界をつくる機械、新しい世の中を作る機械、という感じがするので機械が主人公なのかと思った。
ところがそうではなく、未来の地球での科学者のお話である。
K理論という、わたしには理解もつかない難しい理論をうちたてた科学者と、それを実現化する装置を完成させた科学者は、その当時の社会情勢が交戦モードになっていることに違和感を覚え、軍部に利用されるのを拒み、政府機関での研究をやめさせられてしまう。
その後ある自由機関で彼らの研究を行っていくが、政府が彼らに圧力をかけ始め、結局は政府からお金を引き出させて研究を続けることになる。
最終的に主人公のクリフォード博士が作り上げた装置は、衛星からピンポイントで爆撃できるもののK理論版。それがなぜ「創世記機械」なのか。タイトルの付け方がなかなかうまいなあと感じました。
この作品は1981年に日本で発売されているので、作者が執筆していたのは1970年代であろうと想像されます。つまり、1970年代の世界情勢を色濃く反映されているものになっています。
そう考えて読むと、当時のアメリカ人は「自由主義陣営」対「共産主義陣営」というまさしく「冷戦」が将来はもっと激化して、陣営ごとで戦争が起こると予想していたようです。
中国はインドへ侵攻するし、ソビエトは西と東で分裂して戦っているし、なかなか「未来予想図」として面白いものになっているので、そういう方面として読んでみても面白いですよ。
相変わらず日本はいまいち君として描かれているのが悲しいですが。
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堅苦しい題名ですが中身はちょと現実味があってイイ感じです。
いつか世界もこうなればイイなぁと思いました。一気に読めますよ。
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その昔初めて読んだハードSFがこれ。
途中の物理運動の解釈が難解で、何度も読み返した記憶がある。
でも、それがあの結末に繋がるのにぶったまげた。
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多少極端だしSFっていうよりなんか科学者を主人公にしたドラマっぽいのだけれど、
かっちりした感じが『星を継ぐ者』的で良いです。
最近読んだホーガン二作がどうも、だったので期待しなかったんだけど
面白かった。
「創世記機会」という名称はどうかと思わなくもないけれど。
主人公が気が狂って終わるなんて平和理想主義のホーガンぽくないな、
と思ったらやっぱり最後は平和でした。
平和でもちゃんと展開があるクライマックスなのでぬるくないです。
★4と悩むところだけれど、
『星を継ぐ者』が4だからなあ。
3は若干厳しい気もするけれど。
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さすがホーガン
先にホーガンの没落を嘆いたが、今回は面目躍如。
話の筋には大きく影響しない部分だろうが、仮説となる統一場理論の記述が最高にいい。
科学者が政治家に利用されているふりをしながら戦争の終結策を自身が開発した科学機械で実行するという筋そのものよりもこっちが感動もの。
主人公たる科学者は統一場理論を基にして新しい理論を展開する。要約すると、人工
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優秀な科学者が統一理論+を考案しましたよ。応用もいろいろ効きますよ。でもでも、冷戦下では政治と軍事的な問題で、うまくいかなさそうなので、一軍事施設を飛び出して、財団でやりますよ。最終的に、統一理論を応用して最強兵器を開発し、既存の兵器を敵味方とも粉砕、世界は平和になりましたという話。
見所は統一理論、応用例の描写かなぁ。
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タイトルからすると、新しい世界をつくる機械、新しい世の中を作る機械、という感じがするので機械が主人公なのかと思った。
ところがそうではなく、未来の地球での科学者のお話である。
K理論という、わたしには理解もつかない難しい理論をうちたてた科学者と、それを実現化する装置を完成させた科学者は、その当時の社会情勢が交戦モードになっていることに違和感を覚え、政府機関での研究をやめてしまう。
ある自由機関で彼らの研究を行っていくが、政府が彼らに圧力をかけ始め、結局は政府からお金を引き出させて研究を続けることになる。
最終的に主人公のクリフォード博士が作り上げた装置は、衛星からピンポイントで爆撃できるもののK理論版。それがなぜ「創世記機械」なのか。わたしにはうまく説明できないので(^^;、興味のある方はぜひ読んでみてください。
この作品は1981年に日本で発売されているので、作者が執筆していたのは1970年代であろうと想像されます。つまり、1970年代の世界情勢を色濃く反映されているものになっています。
そう考えて読むと、当時のアメリカ人は「自由主義陣営」対「共産主義陣営」というまさしく「冷戦」が将来はもっと激化して、陣営ごとで戦争が起こると予想していたようです。
中国はインドへ侵攻するし、ソビエトは西と東で分裂して戦っているし、なかなか「未来予想図」として面白いものになっているので、そういう方面として読んでみても面白いですよ。
相変わらず日本はいまいち君として描かれているのが悲しいですが。
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ホーガンが謎理論書いてるときってすごく楽しそうで筆が乗ってる感じがするし、あのギッシリ感がとても好き。
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良いですね。これぞハードSF。
発表されたのが1978年。舞台は近未来の2005年と言う設定です。
現実の2005年は、作品に描かれているような、東西対立が激化し世界大戦前夜という状態では無いけれど、また科学技術の進化も随分と違うけれど、それはそれで良いんです。預言書ではないのですから。
何と言ってもこの作品の魅力は「科学の発展はきっと人類を幸せに変える」という古き善きSFの徹底したオプティミズムの精神で描かれていることです。アシモフ、ハインライン、クラークの世界です。
そのため「未来はきっと良くなる」そういったポジティブな気持ちになれる、何とも爽やかな読後感です。
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量子物理学ではないK物理という概念のもと、粒子のスピンが止まると、物質は見えなくなり消滅し、また動き始めると見えるようになる。有から無が生じ、逆に無から有が生じるという理論を作り上げたクリフォード。しかしACREという、国の軍事に関わる研究機関であったため、理論/基礎研究の意味合いが理解されず、実用性がないと一蹴される。しかし、その理論が正しいことが解ってき始めると、政府の役人はコロッと態度を改めるが、クリフォードは不満しか無く、ACREを辞職してしまう。時を同じくして、応用物理分野のオーブと合流し…。
最初の数十ページかは、「ハードな物理学は苦手だわ…」と思ってしまうのだが、訳もいい加減というか、書かれているとおりに単語を訳しているだけということに気づくと、さほど重要でないということがわかり安心する。
そこからは、ブラッド(クリフォード)、オーブとの交互の快進撃が始まるし、始まってしまえば物理学は他所に置かれてしまうので、かなりわかりやすい作品ということになろう。
ラストの盛り上がり部分は、あれだけ盛り上げておいた物理学は影も形もなくなり、見事にエンターテインメント作品として昇華されている。まあでも、この作品の一番成功しているところは、K理論という仮想の物理学をぶちあげ、それをあたかも見たかのように書き上げているところにあり、こういうスタイル(仮想理論系?)というのを見たのが新鮮であった。
奇しくも「ドリーム(Hidden Figures)」の映画を見たところで、能力の有るものが、政府の建前なり州法の建前の元で全く活かされず、影に生きるところからの快進撃、という見方ができたので、非常に面白かった。
こちとら科学者の端くれなもんで、「科学というのは、建築物と違う。立てた計画通りに結果が出るわけではない」みたいな話の部分は身にしみる。
オチは小松左京の「明日泥棒」を思い出したんで、読んでない方はそちらもどうぞ。
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相変わらず科学と科学者が好きなんだなあという平和な一冊。タイトル回収もなかなかのもの。しかし作中が2005年とか2007年であることに気づいたときは面白かった。作中の人物がテレビ電話の前にいることを約束させられたり高官が手書きでメモを取ったりしているのも、書かれた時代を感じさせる。
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若き天才科学者が発見する究極の理論。『星を継ぐもの』のホーガンによる、科学者の夢を描いたハードSF。
「科学の力って すげー!」
某ゲームに毎回登場するというセリフを、架空の理論によって巧みに実感させるホーガンの面目躍如たる一作。
組織での軋轢のなかで苦闘する前半から、世界の政治情勢を一変させるという大きな話に広がっていく後半まで、一貫して描かれるのはホーガン流の創作理論と科学者としての矜持を持つキャラクターの魅力。そして「こうきたか……!」と唸らせるセンス・オブ・ワンダーなラスト。創世記ってそういうことか!やっぱホーガンってすげぇな、とハードSFの面白さを再認識。K理論の内容についてのわかるようなわからないような説明も雰囲気で楽しめた。